11月27日 更生保護記念日 【SS】守り抜いたもの
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 更生保護記念日
1952年(昭和27年)のこの日に東京・日比谷で更生保護大会が開かれたことを記念し、「司法保護記念日」(9月13日)と「少年保護記念日」(4月17日)を統合して制定。
刑務所から出所してきた人たちに更正の道を開くことを目的とし、様々な催し物が行われる。7月1日は「犯罪者予防更生法」が施行されたことに由来して、法務省が「更生保護の日」に制定している。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】守り抜いたもの
毎日、何らかの犯罪が起きている。この狭い日本という国だけでも相当数起きているのが現実だ。治安がいいと言われている日本でさえも毎日起きている。世界中だとものすごい数の犯罪が起きているのだろう。最も、戦争犯罪は別格だとは思うが。
犯罪を犯した者は遅かれ早かれ捕まってしまう。三億円事件のように逃げ切った犯罪もあるが、それは非常に稀なケースだろう。最近ではお金に困って闇バイトに手を出した強盗がニュース番組を賑わせていたが、それらの事件も順番に逮捕されているのが現実だ。それでも、同様の犯罪は減少してはいない。
人が他人のことに対して無関心になればなるほど犯罪というものは増加するのかもしれない。人口の数ということもあるかもしれないが、犯罪は圧倒的に都市部に集中している。日々、多くの犯罪者が逮捕され続けているのだ。大半の人はニュースで犯罪を知るのだが、そこで報道されているのは犯罪の一面に過ぎないのかもしれない。もし、逮捕された人が冤罪だったらということを考慮した報道はなされないし、ニュースでの間違いの修正に関しては、特番が組まれるわけでもなく、割とサラッと流されてしまうものなのだろう。だが、そのことは当事者にとっては耐え難い苦痛を与えているのかもしれない。今日も一人、少年院という塀の中から一人、出てきた男性がいた。それは、まだ二十歳にもなっていない少年だった。
「大山昇太くんだね。初めまして、私は、君の保護観察官として指名を受けた前田達之助です。これからいろんなことに直面するかもしれないけど、一緒に乗り越えていこう」
「えっ、あっ、はい。でも、もう一人で生きていけますから」
「ああ、そうだな。その気持ちはとっても大切だけど、相談相手はいたほうがいいだろう。そんな時は遠慮せずに僕を頼ってくれ。早速だが、君が働けるような場所も見つけておいたんだ。明日にでも行ってみるかい。一応面談をしてもらわないといけないし。それから今日から君が生活するアパートも確保しておいたから、一緒に行こう」
「そんなことまでしてくれたんですか。ありがとうございます。本当はどうしようかと思ってました」
こうして、昇太と達之助は歩き出した。歩きながら他愛もない話をすることで、昇太の心もだいぶ開いてきたように達之助は感じていた。保護観察官としては、犯した罪のことを詮索することはない。記録に書いてあることだけを読むだけだ。しかし、今回の昇太はどうしてもそんな犯罪を犯すような子には感じられず、人に言えない事情を抱えているのではないかと達之助は感じていた。
昇太は両親を亡くしたあと、唯一の親戚である叔母に預けられて育った。叔母は結婚をすることもなく昇太と二人暮らしをしていたが、昇太には辛く当たっていたようだった。ある日の夜、言い争いになった叔母と十三歳になった昇太はエスカレートしてしまい、昇太が叔母を刺してしまい叔母は敢えなく息を引き取ってしまった。昇太は自ら警察に電話をかけてやってきた警官に現行犯逮捕されたのだった。なぜ言い争いになったのかは最後まで話すことなく、刑が確定した。七年間の少年院生活を言い渡された。少年院に入った昇太は素行も真面目で模範的な生活を過ごしたため、刑期は短縮され五年で少年院を出ることができたのだった。
長間守という三十歳になる男性がいた。五年前に昇太の叔母から借金をして、返済を少し待ってくれるようにお願いをしていた。守は昇太の良き相談相手だった。ある時、守が土下座までして返済を一ヶ月だけ待ってくれと昇太の叔母にお願いしているところを昇太はたまたま見てしまった。守は宅配の請負の仕事を立ち上げたばかりで運転資金がたりなくなっていたのだ。そんな時、守は銀行でも融資をしてくれないとわかっていたため、昇太の叔母が金を貸してくれるということを聞きつけて借金したようだ。かなりの高利でもあり、無許可の金貸をしていたようだった。そして取り立ても厳しかったようだ。昇太は守が返済延長をお願いして帰った後、叔母と言い争いをしたのだった。
「おばさん、守さんはとてもいい人だよ。今、独立して仕事を始めたばかりだから、助けてやればいいじゃないか。どうせ高い利息取ってるんだろ。一ヶ月くらい待ってやれよ」
「ふん。何を中学生が生意気なことを言ってんだい。あんたを拾ってやったのはこの私だよ。私に意見するなんて百年早いよ。あの守って男の商売がうまくいくかどうかなんて関係ないんだよ。取り立てられるうちに金をむしりとるだけさ」
この言葉がきっかけとなり、昇太は叔母を刺してしまったのだ。しかし、このことは裁判でも一切口にしなかった。そのことが刑期を長くした要因の一つでもあったのだ。
達之助が連れてきたアパートは、こじんまりとしたアパートだが、まだ新しそうな建物で、部屋は二階の端っこだった。部屋に入る時、ちょうど隣の人が作業着で出てきて挨拶をしてくれた。綺麗に掃除された部屋の中に入ると達之助が言った。
「このアパートは、ぜひ君に使って欲しいと言ってくれた人がいたんだよ。良かったな」
「えっ、そんな親切な人が。でも僕には心当たりがありません」
翌日、達之助が昇太を迎えにきた。二人一緒に、これから働くことになる会社に向かい、不安そうな昇太に達之助は話しかけた。
「君は、本当は正直で優しい人だと思うよ。これから行く会社でもきっと快く受け入れてくれると僕は思うなぁ」
「でも、結局僕は犯罪者だから、きっと変な目で見られるんでしょうね。それが僕の犯した罪の重さだとは思っていますけど」
「それは、君の考え方次第だと思うよ。さあ、着いたよ。昇太くん。ここがこれから君がお世話になる会社だ。親切運送という会社だ」
「はい」
「おお、昇太。やっと来たな。待っていたよ。昇太のおかげで挫けることなく、会社も少しだけど大きくすることができたんだ。今日からお前もこの会社の社員だ。頑張ってくれよ」
「えっ、あ、守さん、ですか。もしかしてアパートを準備してくれたのも」
こうして、昇太が守ってあげたいと思って罪を犯すことになってしまった当時の良き相談相手だった兄のような存在の守と再開したのだった。これからは、立派な社会人となって、世の中の役に立つ生き方をしていくことになるのだろう。
了
🙇🏻♂️お知らせ
中編以上の小説執筆に注力するため、コメントへのリプライや皆様のnoteへの訪問活動を抑制しています。また、ショートショート以外の投稿も当面の間は抑制しています。申し訳ありません。
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SSマガジン
↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓
一日前の記念日SS
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #ショートストーリー #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説 #毎日ショートショート
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。