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6月8日 世界海洋デー 【SS】 人魚の世界

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-世界海洋デー

2008年(平成20年)12月の国連総会で制定。翌2009年(平成21年)から実施。国際デーの一つ。英語表記は「World Oceans Day」。

1992年(平成4年)6月8日にブラジル・リオデジャネイロで開かれた「地球サミット」においてカナダ代表が提案し、以来「世界海洋デー」として非公式に実施されてきた。その後、2009年から国連の記念日となった。


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【SS】 人魚の世界

 美しい海は世界中の海と繋がっている。時には荒れ狂うが、穏やかなときは優しく美しい景色になる。海は、まるで母親のようだ。

 そんな世界中の海を気持ちよさそうに泳ぎながら移動する集団がいる。そう、人魚たちだ。もちろん人間に見つかると面倒なので船には近づかないし陸には上がらない。万が一見つかった時のために、いつもマナティと一緒に行動しているのも知られてはいない。人魚とマナティは一緒に海の中を楽しみながら移動するのだ。寒くなったら南の海へ、暑くなったら北の海へと自在に移動しているのだ。

 人魚たちの仲間にはなぜか「男性」がいない。人魚は全員女性。人魚が恋をする相手は人間の男性だ。しかし、普段は船や陸に近寄ることはないので知り合う機会はほとんどない。人魚たちの世界では恋をする年齢になった時、ヒレが二本の足に変化する。その時、人魚たちは素敵な男性を求めて陸に上がり、恋をすることになる。ただし、その期間は三ヶ月のみ。三ヶ月経ってしまうと足は元のヒレに戻るとともに地上での生活はできない体になってしまう。三ヶ月間の間に素敵な男性と巡り合い、身籠らなければならない。そうやって彼女たちは種を繋いできたのだった。そして不思議なことに身籠って生まれる子供は、全て女の子だけ、決して男の子は生まれないように人魚の体はできている。

 ある時群れからちょっと離れて楽しんでいる人魚のマリンとマナティのナッティがいた。マリンは群れているのがあまり好きではない。いつも仲間と距離をとりながら移動する習慣がついていた。そのことを理解しているナッティはマリンにくっついていつも一緒に泳いでいた。

「ねぇ、ナッティ。私も恋する年齢になったら二本の足ができるのかなぁ」

「きっとできると思うわ。私からすれば羨ましいわ。人間と恋ができるなんて。でもね、年齢が来なくても運命の人間と出会ったときは、二本の足に変わるらしいわよ。おばあちゃんが言ってたわ」

「へぇ、そうなんだ。でも、そんな運命なんてほとんど遭遇しないわよね」

「まぁ、そうよね。だって、人間を避けて泳いでいるんですもの」

 そんなおしゃべりをしていた時、遠くの船からものが投げ込まれる様な音が聞こえて来た。最近、海に要らなくなったものを捨ててしまう悪い人間がいるといううわさが人魚たちの間で囁かれている。マリンは海中深く潜り、近づいて確認してみることにした。そういえば、いつの間にか陸地が見えるところまで泳いできてしまった様だった。マリンとナッティは船の方に近づいて行った。

「ねぇ、ナッティ。なんだかやけに四角い船ね。あんまり見たことがないわ」

「多分、ゴミを回収するための船じゃないかしら」

「でも、逆ね。ゴミを捨てているわよ。なんだか白くて四角いものをたくさん海の中に捨ててるわよ。ちょっと離れましょう、危なそうだから」

「これは、冷蔵庫とか洗濯機というものみたいだわ。人間たちが楽をするために作り出したものよ。あっ、冷蔵庫の扉が開いたわ」

「えっ、もしかしたら人間が閉じ込められているんじゃない。助けなくちゃ」

「マリン、だめよ、助けては。人魚だってバレるわ」

「ナッティ、何を言ってるの。 命の重さは、人間も人魚も同じでしょ。あの白い四角い箱を押して向こう岸に持っていきましょう」

 マリンとナッティは冷蔵庫が沈んでしまう前に急いで岸の方に向かって押した。そして岸に近づいた時に、冷蔵庫の中にいた男性を引き摺り出し海上に持ち上げ砂浜の方に連れて行った。ナッティはそれ以上浅瀬には行くことができないので、マリンと人間の男が砂浜の方に行くのを沖から見守っていた。砂浜に着き、すでに息をしていない様に感じたマリンは思い切り息を吸って男性の口から息を吹き込んでみた。男性は咳をしながら飲み込んだ海水を吐き出し、大きく呼吸をした。息を吹き返したのだ。すると、不思議なことにマリンのヒレは見る見るうちに二本の足に変わっていった。そして、男性はゆっくりと目を覚ました。目の前にずぶ濡れになっている裸の女性が見えていた。

「あ、あなたは。もしかして私を助けてくれたのですか」

「ええ、ここまで連れてくるのは大変だったわ。冷蔵庫の中に閉じ込められて海に捨てられたのよ、あなた」

「ああ、そうだった。あっとその前に、これを掛けて。僕は警官でスティーブといいます。本当にありがとうございました」

「私はマリン、よかったわ、助かって」

 男性は自分のジャケットを脱いで裸のマリンにかけてあげた。マリンは途端に「恥ずかしい」という気持ちが芽生え、顔を赤くしていた。遠くから様子を見ていたナッテイは「恋のタイマーが回り始めてしまったようだわ」と独り言の様に呟いて、他のみんなに知らせるために沖へと戻って行った。男性は急に我に返ったかの様にポケットからスマホを取り出し、水上警察に連絡をした。

「もしもし、ステーブだ。〇〇港から出航したゴミ回収船は違法にゴミを投棄している連中の船だった。僕は正体がバレて冷蔵庫に閉じ込められ海中に捨てられてしまったんだよ。ただ、幸運なことに飛び込んで助けてくれた女性がいて、今近くの浜辺にいる。迎えにきてくれ。同時にゴミ回収船も拿捕してくれ。あと、迎えにくる時に女性用の服を下着を含めて持って来て欲しい。僕を助ける時に裸で海に飛び込んでくれた様だから」

 こうして、マリンの恋のタイマー三ヶ月は周り始めたのだった。マリンも二本の足ができたことでそれを悟っていた。自分の心が子供から大人に変化しているのも感じ始めていた。


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