【SS】 埋蔵されている砂糖 #シロクマ文芸部
海砂糖の存在が報告された。海水からは塩を作ることができるのは昔から知られている。しかし、海に砂糖があるなどとは誰も思ってもいなかった。ところが近年、海藻が生い茂っている場所の土の中には、砂糖が大量に含まれていることが発見されたのだ。上手く利用すれば、人間が生きていく上で必要な塩と砂糖を海という広大な場所から得られることになる。この海砂糖を効率よく取得するための研究プロジェクトが国主導で始まったのである。
気をつけなければならないのが、海藻の下の土壌を掘り起こしてしまうと、海藻自体を死滅させていく可能性が高くなり、結果として二酸化炭素を放出してしまうことにつながってしまうことだ。海藻を育てながらその下の土壌から海砂糖を少しだけ分けてもらう共存の仕組みを確立することが急務だった。
このことをある経営が傾むきかけた化学薬薬品工場の経営者が知った。幸いなことに工場は海辺に建てられており、磯が近い。当然、海藻は生い茂るように水中で揺れている。この海藻の下の土を上手く取り出して、交換することで畑のようにいつまでも海砂糖が取れる環境を維持できるのではないかと考えた。最初に取り出した土から海砂糖を抽出したあと、残土を元に戻すことを繰り返せば半永久的に砂糖を取り出すことができるのではないかと考えたのだ。
化学工場の経営者は、数人の信頼できる社員に海砂糖抽出の作業を依頼した。そして、半年が経過し、見事にプロセスを確立させることができたのだ。考えたことは正しかった。しかし、その時には、国の研究機関もプロセスに目処をつけており、法整備に向けて動き始めていた。
「塩と砂糖は国としても大切なものである。今回海から砂糖を抽出することに目処がついた。しかし、これを民間に委ねてしまうと海藻が滅亡してしまうリスクがある。よって、海砂糖の抽出は当面の間、国管轄の生産物として進めていきたい。ついては国に許可なく海砂糖の精製を実施したものに対する罰則を作りたい」
国の動きを化学工場の経営者が知る由もない。経営が厳しい中、追加投資を実施し、海砂糖の製造ラインを作ってしまっていた。いよいよ大量生産に入ろうとした時、国からのメッセージが伝えられた。
「我々の住む日本を囲む海から、塩だけでなく砂糖も作り出せることが判明しました。しかし、海中の海藻との共存を実施しないことには海藻がなくなり、地球としては二酸化炭素の量を増加させてしまうことになります。したがって、国の管理下において砂糖を作るプロセスを確立し国民の皆様に提供していこうと考えています。そのため、許可なく海砂糖を作り販売する個人、および団体に対しては厳しい処罰を適用しますのでご注意ください」
化学工場の経営者はこの発表を聞いて焦った。すでに経営は厳しくなっているにも関わらず、追加投資を実施して海砂糖を製造できるように準備したのだ。この後に及んで手を引くことはできない。経営者は考えた。考えに考えた。そして、同じことを池や湖の藻の下の土壌からも抽出できるはずだと思いついた。海からではなく池、川、湖から原料を調達することを決定した。そして製品も「淡水砂糖」と命名して大々的に安価で売り出すことに成功した。
その後、国の管理下で精製された海砂糖も市場に出回って来た。しかし、その価格は淡水砂糖の倍以上の価格での販売で、国民からは見向きもされなくなり、事業そのものを民間に譲渡することが決まった。当然ながら、淡水砂糖を製造している化学工場の経営者も名乗りを上げ、その技術の信頼性を評価され、めでたく海砂糖の精製権と販売権を取得したのだった。
了
※ 今回は、硬い内容でまとめてみました。海の海藻の下には砂糖が埋蔵されているという記事を見て思いついたフィクションです。
下記企画への応募作品です。
🌿【照葉の小説】ショートショート集 ← SSマガジンへのリンク
🔶 🔶 🔶
いつも読んでいただきありがとうございます。
軽いコメント、お待ちしています。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。