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6月5日 ろうごの日 【SS】高齢化する犯罪

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-ろうごの日

兵庫県神戸市中央区に事務局を置き、高齢者福祉の質の向上と事業の健全な発展を図るため活動を展開する一般社団法人・神戸市老人福祉施設連盟が2008年(平成20年)に制定。

日付は「ろう(6)ご(5)」(老後)と読む語呂合わせから。超高齢社会の中で高齢者も若者も何を考え、何をなすべきなのかについてみんなで考え、共に支え、社会を発展させるための行動を起こす日。キャッチコピーは「高齢者の元気は、若者の元気、社会の元気」である。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】高齢化する犯罪

 西暦2050年、六十五歳以上の老人の人口は全体の半数を超えるまでになった。年金原資の不足を年金支給額の減額と消費税の増税により保ってきたが、いよいよ限界に達しつつある。そんな背景を受け、企業も疲弊し高齢者の雇用は継続するが賃金を新卒の初任給以下に抑え始めた。厚生年金の会社負担分が厳しくなっているのだ。

 そして世の中では厚生年金に加入していない人たちの年金生活は成り立つはずもなく、生活保護の申請が相次いで実施され、行政書士は代行申請業務で利益を上げているという歪んだ現実が訪れている。また、老人ホームは年金のみで入居できると謳いほぼ年金を搾取してしまうビジネスも横行し始めている。過去にも存在した犯罪だが巧妙な手口となって再燃しているのだ。

 人口に占める割合が増加するということは、犯罪もその年齢層で増加するということを表している。老人が老人を騙してなんとか生き残ろうとしている時代に入ってしまった。当然、毅然として生きている老人も大勢いるのだが、母集団が多くなると自ずとそうでない人の数も増加してしまう。

 水面下では老人による犯罪組織ができていた。老人たちの連絡手段はファックスである。今時ファックスを利用する人はほとんどいない。しかし、老人たちにとっては大きな字をマジックで書いて伝達できる実に便利な連絡手段なのだ。しかも読んでしまった後は、燃やしてしまうことで証拠は残らない。この昭和的な連絡手段が実に有効に機能しているのだ。

 『本日は〇〇三丁目と××五丁目の担当の出番です。仕事が終わったら公民館で会いましょう』

 これが仕事の指示だった。この組織のメンバーは十名。決して無理はしないし、夜に仕事をすることはない。この組織は年金で不足している生活費を稼ぐために必要最低限の仕事をしていた。体が自由に動かなくなっても見捨てることはなく団結心が強かった。お互いに助け合うことでなんとか生き抜いているのだった。早速当日の仕事の担当者は後ろに荷物を置けるようになっている三輪の自転車に乗って二人一組になって出掛けて行った。

 この日の仕事担当である、正直まさなおじいさんと時夫ときおじいさんの二人が、到着したのは建売の一軒家が立ち並ぶ住宅地だ。通りを歩く人影はほとんどない。子供は学校に行って、両親は共働きが多いからだ。ここで、二人は宅配便の配達を待っていた。宅配便の担当者が荷物を持ってピンポンしようとするところで声をかける。

「ご苦労様、うちに荷物かのう。だったら、この三輪車の後ろのカゴに入れておいてくれればいいよ。わしは田舎から遊びに来ているここの家のものじゃ。毎日大変じゃのう、配達も」

「あ、そうですか。わかりました。ではここに置かさせていただきますのでよろしくお願いします」

「はいはい、ご苦労様」

 そう、この二人の仕事というのは、宅配便を横取りすることだったのだ。三輪車二台で仕事場所に向かい、荷台に乗せられる分だけ積んで帰っていく。宅配便の担当者に怪しまれないように接触する時は常に三輪車の荷台を空にすることは忘れない。そう、一台の三輪車を見えないところに止めておいて、そこに荷物を持っていくのだ。そして荷台を空にしてまた仕事に戻るということを繰り返す。しかし、それ程積めるわけではないので四つか五つの品物を頂いたら帰っていくことになる。一度訪れた場所には三ヶ月以上経過しないと仕事には行かないのがルールだ。

 仕事を終えた二人はそのまま三輪車を漕いで自宅そばの公民館に行った。そこで、集まっているメンバーとともに荷物を開けて段ボールを処分し、中身を確認して分配する。電化製品などの場合は違う街のリサイクルショップに別の担当者が持ち込んで現金化するということを繰り返していた。まったくスマホやパソコンを利用しないアナログのみ利用する犯罪組織だった。

 この犯罪グループの周到なところは、定期的にメンバー同士で住む場所を交代したり、仕事に出かける時にはウィッグを被ったり髭をつけたりして防犯カメラ対策も実施しているというところだった。

 被害にあった家では結構盗難に気づかない家もあり、発覚するまでの時間がかなりかかることが多かった。それに一軒当たりの被害額は数千円程度なので、面倒で警察に届けない家庭もあった。このことが犯罪の発覚を遅らせることとなり、犯罪グループも摘発を免れ続けていたのだ。そして、こんな犯罪グループは全国的に広がっていき、宅配便の横取りに加え、町内会費の横取りやクリーニングの横取りなど実施する仕事の種類も増加していった。犯罪グループも生きていくために必死に考え仕事を続けている。

 だんだんと炙り出され始めた高齢者の犯罪に対処するため、国会でも議論がなされるようになってきた。そもそも最低の生活が維持できない制度になってしまっていることが問題であるという認識が、やっと国会でも議論され始めるようになったのである。高齢者住宅設備の新設や軽作業の斡旋、年金額の見直しなどがやっと議論され始めたようである。

 だが、国会での結論が出て実行までには時間がかかる。そこで街の自治会などは自衛手段を検討し始めた。その結果、老人による自警団が結成され毎日の散歩代わりの町内見回りが実施されるようになっていった。行政は自警団のメンバーに対して補助金を出し始め、老人による自警団は次第に大きくなっていき、老人による犯罪は次第に減少していった。犯罪グループに入っていた老人が今では補助金目当てで自警団に入っているとの噂も流れている。


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