9月13日 世界法の日 【SS】宇宙の秩序
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 世界法の日
1965年(昭和40年)の9月13日から20日までアメリカ・ワシントンで開催された「法による世界平和第2回世界会議」で、9月13日を「世界法の日」とすることが宣言された。
1961年(昭和36年)、東京で開催された「法による世界平和に関するアジア会議」で「世界法の日」の制定が提唱され、2年後の1963年(昭和38年)にギリシャ・アテネで開かれた「法による世界平和第1回世界会議」で可決され、第2回世界会議で宣言されたものである。国際間に法の支配を徹底させることで、世界平和を確立しようというものである。
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【SS】宇宙の秩序
地球上の各国に法はあるものの、全てが別々の法律として定められている。考えてみれば当たり前の事であるのだが、「国」という概念が「統一」するというプロセスを阻害していた。全ての国は、自分の国を中心として都合のいい「法」を制定し、運用をしている。その内容を他の国の法律を考慮して合わせていくなどという考えを各国の首脳陣の中で検討する人物はいるはずもなかった。世界的に秩序を保つために法を遵守するということは綺麗事でしかなく、各国は自国の利益をどうやって増やすかということを懸命に考えていたのである。
もちろん、国が違えば、歴史は違うし文化も違う。身に纏っている着物もそれぞれに異なっている。そんな国ばかりであるうちは、世界中の国が一つの法の下に集うということは考えられなかった。それでも各国は努力した。基本的に人間としての生き方を否定するような行為を禁止したのだ。武力を行使して他国を侵略してはならないとか、個人の財産を略奪してはならないといったことを合意した。
しかし、合意はしたものの、忠実に遵守する国はなかった。どうしても自国の利益を優先するために戦争を起こしてしまう国が勃発していたのだ。戦争にまで至らないまでも日本も例外ではなかった。世界は各国の法の下で色々な行動を抑制し、かろうじて最低限の秩序を守っている。だがその綻びが見えそうになる事件が勃発した。
「首相、大変です。どうやら地球外生物のようです。突然、連絡が入りました。しかも流暢に日本語で話しかけて来ています。会話されますか」
「何、エイリアンか。本物ならすぐに繋げ。もし、なりすましなら厳罰を与えてやる」
いつの日か地球外生物からの連絡があった場合のことを考慮して、すぐに首相に連絡がつけられるように首相官邸には秘密の専用回線が敷かれている。そのことを知るものは側近のみという徹底ぶりで情報統制がなされていた。しかし、誰しもその回線が利用される日がくるとは思ってもいなかった。少なくとも自分たちの就任期間の間に発生するとは、誰も想像してはいなかった。首相は、地球外生命体との交信用装置が設置されている隠し部屋の扉を開け、一人で入って行った。生体認証で入っていく部屋で、防音装置、盗聴防止装置、電波遮断壁で完全に密室となる部屋だ。首相以外に入ることはできない。
「日本国首相の大風呂敷です。どこの星の方ですか」
「私たちは、銀河系の外の絶対星雲の中にある絶対星というところから使者としてやって来ました。まだ、地球のテクノロジーでは航行することが不可能な距離です。私は絶対星を代表してやって来た使者のオーラといいます」
「ものすごく日本語がお上手ですね。まさか、地球の中に潜伏されているわけではないですよね」
「私たちの情報網はあなた方が想像しても想像できない規模です。わかりやすく言えば、地球上で行われている人々の会話は全て傍受できるほどです。大学の授業や幼稚園の園児の声に至るまでです。なので、言語を学ぶことくらいは容易なことなのです。あなた方の文明もあと三千年ほどすれば、今の私たちの文明に追いつけるかもしれません」
「それで、今回この通信回線を使って連絡してこられた用件はなんでしょうか」
「そうですね。本題に入りましょう。私たちは日本という国の態度に憤りを感じているのです。地球上に存在する多くの国々の手本となるべき国なのに、全くそのそぶりを感じません。地球の平和に向けてイニシアティブを取らなければならない立場なのに、大陸の国々の顔色ばかりを伺っていませんか。それでは時間ばかり過ぎてしまい、事をなすことはできません。このまま悠長に時間を浪費するのであれば、私たちは絶対星の艦隊を送り込み、強制的に統制をすることも考えています。ただ、武力による統制は私たちの期待する方法ではありません。あくまでも、敵を撃退するためだけに使いたいのです。しかし、地球の中心から発せられている電波の状態を観測している限り、地球の寿命がどんどん短くなっていることが分かりました。我々は広大な宇宙の中で文明を持っている星である地球がなくなってほしくはないのです。早急に世界に向けて日本国がリーダーシップを発揮し、戦争を終結させ、世界中の子供達が安心して暮らせる法を整備してください。時間的猶予は十年です。それを超えた時、我々は地球に向かいます」
「えっ、そんな大きな仕事をわずか十年だなんて、無茶な要求ですよ」
「いいえ、それくらい地球は疲弊しているのです。そしてこれは要求でありません。指示です」
「うっ」
「首相であるあなたの行動は逐一監視させていただきます。その内容次第では、十年を待たずして艦隊を送り込むこともあり得ます。ただ、私たちが、あなたに期待をしていることだけは確かです。死ぬ気になって地球を平和な星にしてください。それでは通信を終わります。どうせ録音されているのでしょうから、この後、リーダー間で内容を共有してください」
「ツーツーツー」
ここで通信は切断された。首相は密室で呆然とした。わずか十年間で地球から戦争をなくすなどということは夢物語としか思えなかったのだ。しかし、首相は前向きになろうと決断し、部屋を出た。そして、大国のリーダーたちと内容を共有した。もちろん、社会主義国家のリーダーたちともだ。世界は動き出した。どうやら各国とも、いつの日にかこんな日が来るのではないかと予想していたようだ。
首相がいない会議室で、首相から情報連携を受け、通信内容も聞かされた側近たちが密談をしていた。
「うまくいきましたね。これで、我々の首相も精力的に動いてくれるでしょう」
「しかし、我々が仕組んだことだと気づかれないだろうか」
「おそらく大丈夫でしょう。スマホすら使えない首相なんですから」
「これから忙しくなるな。世界中の子供達のために我々も献身的に活動をしましょう」
了
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