雨の窓辺と、17年11ヶ月の贈りもの
先週、愛犬が遠くへ旅立ちました。 今やっと、少しだけ心に余白ができたので、ここに書き留めておこうと思います。
愛犬との暮らしは、17年11ヶ月でした。 以前飼っていた母犬は2019年に旅立ちましたが、今回旅に出た愛犬は、わが家で生まれた子です。そのため、生まれてから最期を迎えるまで、私たちは一度も離れたことがありませんでした。
四匹兄弟の3番目に生まれ、顔だけが茶色かったその子は、熊の「グリズリー」に似ていることから「グリ」と名付けました。 兄弟の中で一番体が大きいのに、一番の怖がり。他の三匹は知り合いの元へと巣立ち、グリだけがわが家に残りました。 それからというもの、一緒に飛行機に乗ってお引っ越しをし、結婚をし、私の人生のどんな時もすぐそばにいてくれました。
母犬よりも健康体で、若い頃は体調を心配することもほとんどなく、すくすくと育ってくれました。14歳を過ぎてからは手術や脳梗塞も経験しましたが、そのたびに奇跡的な回復を見せ、17歳になるまで長生きしてくれた強い子です。
怖がりゆえの、忘れられない思い出もあります。 チャイムが鳴り、私がインターフォン越しに業者さんとやりとりをしていると、「不審な人を家に入れるな!」とでも思ったのでしょう、私の太ももを思いっきり噛んできて悶絶したこともありました。エアコンの掃除業者が来たときには、別の部屋に移動させても、声が掠れるまで吠え続けてしまうほど。 やんちゃに走り回る一面もありましたが、基本はお散歩が嫌いで、内弁慶。普段はとてもおとなしく、毛並みが柔らかくて、本当に美人な自慢の愛犬でした。
今年に入ってからは徘徊と粗相が増え、オムツでの生活が続いていました。 高齢であり、大往生。いつかはこんな日が来ると分かってはいたものの、心のどこかで「まだもう少し一緒にいられるんじゃないか」という気持ちもあり、お別れはやはり寂しくてたまりません。
「ああ、もうすぐお別れだな」と悟った朝。 私はベッドを窓の近くへと移動させました。1人と1匹で、雨の降るお庭をじっと眺めました。お外に出るのは嫌いだったけれど、窓からお外に向かって吠えるのが大好きだったグリのために。
当日と次の日は、涙を流しながらも、必要な手続きに追われて気が張っていました。けれど、それらの用事がすべて過ぎ去ってしまうと、心の中がぽっかりと伽藍堂になってしまいました。
今は、食べて、寝るだけの日々です。 それでも、食べても味がしないし、どれだけ寝ても眠くてたまらない。心と体が、大きな喪失に戸惑っているのを感じます。
以前、本で「人生の最大の仕事は思い出作り」という言葉を目にしました。 グリは私に、数え切れないほどのあたたかい思い出をくれました。そして何より、母犬が旅立ったときもずっとそばにいて、私の心をどれほど救ってくれたか分かりません。
グリを見送り、私は改めて「命は有限であること」を深く実感しています。 かれこれ20年近く、犬のいる暮らしが当たり前でした。だからこそ、今、犬のいない暮らしを送っていることが、どこか現実ではないような不思議な感覚の中にいます。 きっと、この静かな日常にも少しずつ慣れていくのでしょう。
梅雨のすっきりとしないお天気のせいもあり、なかなか心は晴れませんが、グリからもらったたくさんの思い出を抱きしめて、少しずつ、少しずつ、前を向いていこうと思います。
