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安い倫理観が引留めた

小学校の低学年だったと思う。
親戚の法事の席で、おじさんに言われた。
「新しいジュースだから飲んでみれ」

差し出されたのは、小さなガラスのコップ。
中には、ぬるそうな黄色い液体。
恐る恐る口をつけた瞬間、顔が歪んだ。
苦い、えぐい、これは飲み物じゃない。
子どもながらに「毒だ」と思った。

それが、私とビールの最初の出会い。

それから50年以上が経った。
今ではどうか。
休みの日になると、寝起きの乾いた喉に
ビールをぶち込んでいる。

朝から、ホロ酔い・・・
「堕落してるな」と思う。

でもやめられない。
人間は、一度「気持ちいい〜」を覚えると弱い。

先日も朝に目が覚めて、冷蔵庫の取手に
手をかけた。

★マークのビールを取り出して、
喉にぶち込む

はずだった。
えっ、無い。
ビールが、ビールが無い。

寝起きで、着替えて買いに行くのは面倒だ。
だが、ないことが喉の渇きをいっそう強くする。
仕方ない。
シュワシュワなら同じだ。
ハイボールでいいじゃないか。
そう思った瞬間だった。
なぜか、心にブレーキがかかる。

「朝からハイボールは、ダメなんじゃないか?」

もう1人の自分が、安い倫理観を持ち出してきた。
同じアルコールだろ・・・意味不明。
なのに、角形の瓶に手が伸びていかない。

なぜだ・・・この違和感の正体を考えた。
思い当たったのは、アメリカのドラマ。
昼間、庭で家族や友人が集まってBBQをしている。
太陽の下、笑いながら瓶ビールを飲んでいる。あの光景は、妙に“健全”だ。

一方で、ウイスキーを飲むシーンはどうか。
薄暗いバーや部屋・・・
一人でグラスを傾ける男。
だいたい人生に失敗している。
なるほど。

明るい時間=ビール   
暗い時間=ウイスキー

そんなイメージが、頭に刷り込まれていたのかもしれない。

人間の判断なんて、そんなものだ。
倫理観なんて後付けなのかな〜
そう考えたら、急にどうでもよくなった。

さあ行くか〜 
またブレーキがかかる。

「スエットでコンビニは、ダメなんじゃないか」

やかましいわ・・・

私はパジャマ化しているスエットでコンビニに向かった。

ビールを買うために。

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