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短編小説 業績好調なり

月曜のオフィスはなんとなくスロームードだ。
社員の顔も昨日の日曜を引きずっているようで今一つだが、営業部長の廣澤だけは元気が良い。きちんとした身なりにリズムのある歩き方、
社会人としてお手本のような男だ。

「専務、先月の売り上げデータはこちらになります。連続して好調な伸びを示しており懸念材料もなく・・・」

廣澤の無駄に元気の良い声が専務室に響いていく。

「廣澤君、業績が好調なのはみんな知っていることだよ?」
「はい。好調の波を少しでも維持すべく、次回作のリサーチも
がんばっております」
「うむ。給与もボーナスも期待していて良いと思うよ。
社長もそんなこといっていたし」
「はい、引き続き頑張らせていただきます」

廣澤が勤務するガト商事は近年まれにみる好景気にわいていた。
いや、ここ10年は好景気だ。
物価高、人手不足もなんのその。
ニュースではわが業界の需要は3兆円規模を超えたといっている。
(がんばった分だけ、報われてるのってやはり恵まれている。
感謝だな、なにごとにも。)
ひとり悦に入って休憩室で熱い渋茶をすすっていた。

「あっ!廣澤部長、こんなところで何しているのですか!探しちゃいましたよ」

廣澤の営業サポートを時々お願いしている柴田さんが息を切らして休憩室に入ってきた。
柴田さんは、細かい所によく気が付く良い部下だ。
今はコンプライアンスやハラスメントで容姿について語るのは良しとしないが、柴田さんの瞳はすごく魅力的だ。まるで猫の瞳のように、クルクルと良く動く。そして仕草がとてもしなやかだ。

「社長がお呼びですよ。お話があるらしいです」
「わかった、すぐいく」

重厚な扉を3回ノックして、廣澤は社長室に入った。
めったにお目にかかれない社長だから、胸はドキドキし
少し額に汗も出始めた。

実は、我がガト商事は世間にお披露目できない隠し事がある。
それは・・・・・・。

社長が猫なのだ。
今どきはAIがCEOという会社もあるらしいので、
そこまでトップシークレットというわけではないと思うが、
猫が社長というのも少し変わっているだろう。

しかし、猫がトップ故、今の事業が成り立っているのも過言ではない。
猫の気持ちがよくわかるし、何を売れば良いのかもよくわかるのだ。
猫目線での品ぞろえが功を奏している。
そう、わが社は猫のものを扱う商社なのだ。
猫のための会社といっても過言ではなかろう。

座り心地のよさそうな大きな椅子にふかふかの座布団。
窓からはぽかぽかのおひさま。
社長室には穏やかな時間が流れていた。

「社長、廣澤です」
「にゃぁ~」

何を言っているのかわからない。
通訳者が必要なのだ。その通訳者が先ほどの柴田さん。
社長おきにいりの通訳兼秘書なのだ。

「では、社長のお言葉を通訳いたします。

~いつもご苦労。この度わが猫族の最大の敵であった腎臓病の薬が発売となった。ゆえに我々は30年は生きることが可能になる。もっと我々を喜ばす品物を世界中から集め、また、世界へと輸出し、ガト商事を大きくするように!~」

柴田さんは大きな瞳にぐっと力を込めて、社長の言葉を訳してくれた。

「おおせのままに。猫族様にお仕えいたします。すぐにチームにもちかえり、新規プロジェクトを立ち上げます」
すぐさま、柴田さんが鈴を転がすような美声で社長に
通訳してくれる。

「にゃあ~ん~~」
社長のご機嫌な声が部屋に響く。
これからは、ますます猫族様の世界になっていくだろうと
思いながら、廣澤はうっすらとまたたびの香がする部屋を
辞したのであった。

「ともあれ、猫様も人間も、みんな、みんな、しあわせなら
それが一番だ!」

廣澤はゆううつな月曜日を蹴散らすように、猫と人間のために、
世界のためにひたすら働くのであった。


~お読みいただきありがとうございました~
2月22日 猫の日です。
猫や人間、すべての動物たちが穏やかに
平和で暮らせることを切に願い
今週は猫をテーマとして投稿したいと思います。
拙作では在りますが、お付き合いいただければ
ありがたいにゃ~ん。

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