くらもちふさこファンであること
大泉スレでは語りませんでしたが、私はくらもちふさこさんの長年のファンです。大泉スレでは萩尾望都批判という立場を明確にしているので、あまり、誰々のファンだということは語りたくなかったんですよね、いろいろとめんどくさいことになる危険性があるので
それでも三原順さんの場合は、「イグアナの娘」の件があったし、佐藤史生さんの場合は、大泉サロンの主要メンバーなので、自分がファンという立場をアピールする必要があったのですが、なぜか私がファンであると告白しても、初期の頃は「嘘つくな」と何度も言われたものです(笑)
田村由美さんに関しては、作品はとても好きだけど、ファンというわけじゃないんですよ。市川春子さんに関しても、「宝石の国」ファンではあるけれど、市川春子さん自身のファンであるかというと、微妙です。
ファンであることと単に作品が好きなことの境目はどこにあるのか?自分でもよく把握してないので、あまり説得力がないのですが、とにかく、くらもちさんのファンであることは間違いありません。私がそう感じるからってだけですが(笑)
ただ、くらもちファンの「正統派」ファン(っていうと語弊がありそう)ともちょっと違うかな。「いつもポケットにショパン」や「東京のカサノバ」はそこまで好きじゃないんです。多くのくらもちファンはこの二作、あるいはどちらかを特別にに好きといった印象なので
それはともかく、くらもちさんと言えば、「はみだしっ子」のフー姉さま(オフィーリア)のモデルとして有名だったので、何も知らなかった頃は、単純にくらもちさんはフー姉さまのようにイイ人だからなんだろう程度に考えてました。ところが「総特集 三原順」(河出書房新社)の中で、実は「はみだしっ子」の中には他にもくらもちさんがモデルになってるキャラがあって、なんとそれは第一話で出てくる底意地の悪い姉妹だったことが書かれてたんです!
姉がくらもちふさこさんで妹がやはりマンガ家の倉持知子さんらしいのですが、つまり、三原順さんは完全にくらもちさんをおちょくっていただけなんですよ。こうなってくると、オフィーリアのモデルって言っているのも、ただの冗談なのでしょう。
でも、なんかすごくイイ話だなーと嬉しくなりました。三原さんはくらもちさんのことが大好きだったんでしょうね
で、くらもちふさこさんの何が凄いって、多くの人が語っていることですが、描く漫画がいつも「新しい」ことです。これがいつまで続くんだろうと、ハラハラしつつ、数十年読み続けてきましたが、期待を裏切られたことはなかったです。さすがにもうお年だからか、ストーリーマンガを描かれなくなっちゃったのは寂しいです
ちょっと不謹慎な話ですが、仮に高校生くらいのくらもちさんのクローンがいたとして、彼女に、くらもちさんの描いたマンガをすべて読んでもらった上で、「あなたには、ここで描かれた以外のマンガを描いてほしい」と頼んだら、少し考えた末に「わかりました」と言ってくれそうな気がするんです。
それくらい、くらもちさんは常に新しいものに挑戦され続けてました
その「新しい」という点で、一番ぶっとんでた作品が「花に染む」です。
私は世界で一番この作品を熟知しているという自負があるのですが、くらもちさんもとうとうやることが尽きてしまって、こんな酔狂なことをやり始めたのか?と思われても仕方ない作品だったりします。
これについては長くなるので、記事を改めて書く事にします
で、くらもち作品の中でどれが一番優れているか?という話はとても難しいんですよ、だって、どれも違うから。同じ土俵で比べられないんです
私自身は「A-Girl」を読んでくらもちさんに注目し始めたのですが、それ以前に描かれた古いけど「おしゃべり階段」なんかも凄いと思うし、当然「天然コケッコー」は外せないし……「[α]」も素晴らしい。今ではいろいろと問題になりそうな「海の天辺」なんて別マの連載を追いかけて読んだものです。
で、過去にくらもち作品のAmazonレビューもいくつか書いたのですが、そのうち自分でよく書けていると思ったものを紹介します
「アンコールが3回」
初めて読んだのは二十歳くらいの頃でしょうか、よく覚えてないんですけど…
以来、何度か読み返したのですが、大意は掴めるけれど、最後の一点が頭の中でどうしてもクリアにならない、という消化不良感が薄れてきたのは最近のことなので、私の場合は年齢を経る必要があったのかなと。
「恋」の脆さと先行き不透明な芸能界とがシンクロされて、恋に対する不安がより増幅されて読者の胸に迫ります。
「過去」に対する嫉妬も乗り越え、結婚という「未来」の保証も捨てて、主人公が臨んだ武道館コンサート。
誰よりも「安定」を望んでいたはずの彼女がそこで求めたのは、永遠の愛ではなく、男が何もかも捨てて自分に向ける、「アンコールを3回」するほどの「一瞬」の恋の激情だった…
この後二人は別れるか友人に着地していくかそれとも生涯のパートナーになるかはわからないけれど、いずれにせよ「恋」とは別の何かに変わってゆくのでしょう、それは生きていれば避けられないこと。
それでも、あの瞬間、二人の恋は確かに「真実」だったという、王子と姫は末永く幸せに暮らしました…的おとぎ話とは対極にある、限りなく「一瞬」の恋を追求した、一粒の結晶のように凝縮された恋の話だと思います。
「A-Girl」
相手に尽くすことが自分の生き方だと思っていたマリ子が、相手から認められ褒められ理解されるという初めての経験を経て、自分が心の底で本当に欲しているものに気づいていく過程にピンポイントに絞り込んだ描写に、マリ子と同一化するほどどっぷりのめり込んでしまったことが懐かしい記憶です。今読み返しても、クラゲのシーンは涙が止まらなくなります。
この二つくらいかな。当時「天然コケッコー」についてもなにか書こうと思ったのですが、他のレビューが良すぎて、とてもこのレベルでは書けないと思って断念したことを覚えてます。
そんなわけで興味を持った方は、ぜひいろんな方のレビューを読んでみて、実際にくらもちさんのマンガを手に取って読んでほしいです
その時の気分にもよるでしょうが、漫画家として一番すごいと思う人は誰?という問いに対して、私だったら、総合的に考えて、8割くらいの可能性でくらもちさんを挙げるんじゃないかと思います。
(残りの2割は三原順さんですが、三原さんの場合、漫画家としてすごいというより、もっと別の何かなんですよね)

