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「薬の効かないヒーロー」(3分)

〇某医院

   セーラー服に皮手袋姿の、ヨーヨーを
   持った妙齢の女性(53)が、緊急搬
   送されてくる。
当直の医師(45)「怪我ですか? 病です
 か?」
救急隊員「安静時に倒れたようで、怪我はな
 し。既往症、持病ともになしです」
医師 「検査してみないと分らない、と……」
   苦しそうな女性。
   患者名を見た医師、驚く。
   その恰好と見比べて。
医師 「五代陽子……まさか、『鉄仮面に顔を
 奪われ十と七歳(とおとななとせ)、二代目
 スケバン刑事、麻宮サキ』?」
女性(サキ)「(苦笑い)……『おまんら、ゆ
 るさんぜよ!』が抜けてます……」
医師 「あ、すいません。あの……大ファン
 だったんで!」

〇検査されるサキ

〇数値を見ながら疑問に思う医師

医師 「おかしい……どうなってるんだ……」

〇診察室

医師 「薬が……効かない体質?」
サキ 「そうや。暗殺や毒に備えて、ウチは
 鍛え上げたんや」
医師 「じゃあ、治るものも治らない」
サキ 「この病気は……治るんか?」
医師 「新薬があるんです。普通は効く」
サキ 「ウチは戦士や(ヨーヨーを構える)。
 普通やない」

〇一人考える医師

   棚の薬たち(またはカタログ)を見な
   がら。
医師 「この薬なら効くのに……戦士って何
 だよ……」
   看護師、走ってくる。
看護師「先生! 麻宮さんが脱走しました!」
医師 「なにい?」

〇もぬけの空のベッド

〇路地裏、夜

   ビルの谷間で壁にもたれ、苦しそうに
   しているサキ。
   そこに駆け付けた医師と看護師。
看護師「いました! こっちです!」
医師 「なんで脱走なんかしたんだ! 麻宮
 さん、今自分がどういう状態か分ってるの
 か!」
サキ 「ウチには薬は効かん……だとしたら
 いても意味ないやん。ウチは戦いに行かな
 ……」
医師 「馬鹿野郎!(思わず怒鳴る)」
サキ 「……」
医師 「あ、すいません。つい熱くなっちゃ
 いました。……それで、薬の効かない理由
 が、分ったんです」
サキ 「なんよ? ウチは戦士の体で……」
医師 「それだ」
サキ 「?」
医師 「暗殺されない為の体だと言いました
 よね? つまり、私を敵だと思っているん
 だ」
サキ 「それが何か?」
医師 「あなたは戦士だろうがなんだろうが、
 今は僕の患者です。ヒーローじゃない。一
 人の人間なんだ」
サキ 「……」
医師 「そして、人間になら効くと分ってる
 薬があるんです。薬も私も、彼女(看護師
 を指し)も、あなたの味方なんだ。青狼会
 の偽医者でも、鎌倉の老人の刺客でもない」
サキ 「詳しいな」
医師 「大ファンって言ったじゃないです
 か!」
サキ 「もう一度……人を信じていいのね?」

〇時間経過、屋上、夕景

   医師と看護師が休憩しているところに、
   サキが退院の挨拶にやってくる。
サキ 「先生、有難うございました」
医師 「また、戦いに?」
サキ 「(うなづく)……ウチ、ふつうの女子
 高生に戻る為に闘ってきたのに、人である
 ことを拒否してたんやなって、ちょっと反
 省しました。いい薬になりました」
医師 「あ。……いや、セーラー服似合って
 るし、えー、まるで女子高生みたいです
 よ?」
サキ 「それは無理があるやろ。先生、お世
 辞下手やで」
   サキ、お辞儀をして去っていく。
   ふと振り返る。
   医師、ヨーヨーの真似をする。
   サキ、笑ってヨーヨーを構える。

タイトル「あなたの味方は、どこにでもいる。」

 【 アムジェン
 患者さんのために、今できるすべてを。】





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