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現場AI録 #31 AI推進派と反対派は、実は『同じバイアス』を抱えていた


私は昔、

AI導入が進まない原因は

「反対派」

だと思っていた。

新しいツールを提案すると、

必ず誰かが言う。

「情報漏洩は大丈夫?」

「まだ早いんじゃない?」

「責任は誰が取るの?」

そのたびに、

「だから進まないんだ」

と思っていた。

しかし最近は、

少し違う。

むしろ、

AI推進担当にも原因がある

と思うようになった。


AI推進派が見る世界

AI推進担当は、

AIの可能性を先に見る。

  • 作業時間が減る

  • 資料作成が速くなる

  • 検索が便利になる

  • 人手不足を補える

だから、

「使わない理由がない」

と思う。


AI慎重派が見る世界

一方で慎重派は、

リスクを先に見る。

  • 情報漏洩したら?

  • 間違った回答を使ったら?

  • 誰が責任を取る?

  • 監査で説明できる?

だから、

「今はまだ早い」

と思う。


実はどちらもバイアスを持っている

ここで面白いことに気づく。

推進派は成功事例を集める。

慎重派は失敗事例を集める。

推進派は

「こんな会社で成功した」

を探す。

慎重派は

「こんな事故が起きた」

を探す。

どちらも間違っていない。

ただ、

見ている景色が違うだけだ。

図① AI推進派とAI慎重派のバイアス比較

この図を作りながら、

自分自身も少し反省した。

私は慎重派のバイアスばかり見ていた。

しかし推進派にも、

技術楽観バイアスや成功事例への確証バイアスがある。

結局、

どちらも人間なのだ。


AI導入会議で起きていること

実際の会議では、

こんな会話になる。

AI推進担当

「年間100時間削減できます」

管理職

「教育時間は?」

情シス

「セキュリティは?」

品質保証

「記録は残せる?」

推進担当は

「また反対された」

と思う。

しかし、

相手は反対しているわけではない。

見ているリスクが違うだけだ。

管理職は責任を見ている。

情シスは事故を見ている。

品質保証は説明責任を見ている。

それぞれが、

自分の役割を果たそうとしているだけなのである。


本当は現実が真ん中にある

推進派の話を聞いていると、

AIはすぐ効果が出るように見える。

慎重派の話を聞いていると、

AIは危険で失敗するものに見える。

しかし現実は、

その真ん中にあることが多い。

効果はある。

でも定着には時間がかかる。

リスクはある。

でも管理で下げられる。

失敗もある。

でも小さく学ぶことができる。

図②:AI推進派・現実・AI慎重派の比較

現場にいると、

極端な意見ほど目立つ。

でも実際に改善を進める人たちは、

いつも真ん中あたりで悩みながら進んでいる。


AI導入が止まる本当の理由

AI導入が進まない理由は、

推進派と反対派がいるからではない。

お互いが

相手の思い込みばかり見て、

自分の思い込みを見ていないからである

推進派には

「うまくいくはず」

という期待がある。

慎重派には

「失敗するかもしれない」

という警戒がある。

どちらも自然な反応だ。

だからこそ、

大事なのは勝ち負けではない。


改善策① 反論する前に「なぜそう思うのか」を聞く

人は意見だけを見ると対立する。

しかし背景を見ると理解できることが多い。

「なぜそう思うのですか?」

と聞いてみる。

情報漏洩が心配なのではなく、

過去のトラブル経験が原因かもしれない。

導入に慎重なのではなく、

現場が疲弊していることを知っているのかもしれない。

反対意見の奥には、

必ず理由がある。


改善策② 自分のバイアスを先に疑う

人は相手の偏りには敏感だ。

しかし、

自分の偏りには驚くほど鈍感である。

推進派なら、

成功事例ばかり見ていないか。

慎重派なら、

失敗事例ばかり集めていないか。

まず疑うべきは、

相手ではなく自分の見方かもしれない。


改善策③ 相手を論破できたら危険信号

AI導入の議論で、

相手を論破したくなることがある。

しかし、

論破できたときほど危険かもしれない。

なぜなら、

相手が黙っただけで、

納得したとは限らないからだ。

現場で本当に必要なのは、

勝つことではなく、

続けられる合意を作ること。

AI導入は技術導入ではなく、

認識合わせの作業でもある。


今日5分で試せること

次にAIの話をするとき、

相手にこう聞いてみる。

「一番心配していることは何ですか?」

そして自分にも聞いてみる。

「自分は何を見落としているだろう?」

この2つの質問だけで、

会話はかなり変わる。


最後の気づき

私は昔、

反対派を説得しようとしていた。

今は少し違う。

まず考えるのは、

「相手は何を見ているのか」

である。

そして同時に、

「自分は何を見落としているのか」

も考える。

AI導入とは、

AIを理解することではない。

人間がどれだけ思い込みで判断しているかを理解することなのかもしれない。

そして、

相手を理解すること以上に、

自分の思い込みに気づくことが難しいのだと思う。

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