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「ネクスト・コア」資金調達

### 🏢 登場人物


* **黒田(30代):** 『ネクスト・コア』CFO候補。過去の粉飾の膿を出し切り、本物のガバナンス体制を構築するために奮闘する鉄の意志を持つ女性。

* **丸宮(40代):** 『ネクスト・コア』社長。資金調達や節税の「美味い話」に目がないが、黒田の監視によって少しずつ規律を学び始めている。

* **マダム・キヨ:** 特別アドバイザー。後日、BAR『オフバランス』のカウンターで、黒田からこの一件の報告を受け、その成長を祝福する。


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### 📊 第1幕:喫茶店に持ち込まれた「美味い節税」の誘い


ガタゴトと頭上を走る電車の振動が響く、純喫茶の奥の席。

丸宮社長は嬉しそうな顔で、タブレットの画面を黒田さんに見せた。


「黒田さん、うちの次の資金調達の件なんだけどさ、知り合いのコンサルタントから面白い提案をされたんだよ。『エンジェル税制』っていう国の優遇措置をうまく使えば、投資家側の税金を劇的に減らせるから、もっと大きな金額が集まるって。ついでに、うちの役員報酬や個人資産の税金もゴニョゴニョとうまく節税できるスキームがあるらしくて……」


黒田さんは丸宮社長の言葉を遮るように、本日(7月23日)の毎日新聞のスマホ画面をピシャリとデスクに叩きつけた。そこには、エンジェル税制を悪用した容疑者グループが摘発された巨額脱税事件の見出しが躍っていた。


「社長、目を覚ましてください。あなたが今『美味い節税スキーム』と言ったその手口、まさに今日、東京地検特捜部や国税に一網打尽にされた『脱税犯罪』そのものですよ」


丸宮社長はコーヒーを吹き出しそうになりながら画面を凝視した。

「えっ……!? 脱税? いや、これは国が認めている制度を活用した“賢い節税”だって……」


「それは制度の『活用』ではなく『悪用』です!」黒田さんの鋭い声が響いた。


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### 🛠️ 第2幕:ロジックの因数分解――「エンジェル税制悪用」の闇


黒田さんはノートを開き、事件の歪んだ構造を冷徹に書き下した。


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【優遇税制が「脱税の凶器」に変わる構造】

1. 国の制度(エンジェル税制) ──→ 本来はベンチャー投資を促進する綺麗な仕組み

2. 不正スキームの介在 ──→ 実体のない形式だけの投資や、書面上の還流取引を偽装

3. 結果 ──→ 「節税」という嘘の仮面をかぶった、悪質な「国税の騙し討ち(脱税)」


```


「本来、エンジェル税制はリスクを取ってベンチャー企業に投資してくれた個人投資家の税負担を軽減し、日本のイノベーションを支えるための素晴らしい制度です。

しかし、今回の事件で摘発されたグループは、実体のない形だけのスタートアップを隠れ蓑にしたり、書面上でのお金のやり取りを偽装して、富裕層の税金を不当に還付させていた。彼らは『これは合法的なタックスプランニング(節税)だ』と言い張って出資者を募っていたはずです。でもね、社長。いくら書類の形式を整えても、そこに『投資の実体』がなければ、国税や検察の目から見れば一発でアウトの悪質な犯罪行為なんです!」


丸宮社長はゴクリと唾を飲み込んだ。

「形式が整っていても……実体がなければ脱税になるのか……」


「当たり前です! 私たちが今やろうとしているIPOの準備だって同じです。もしネクスト・コアが、こんな怪しいスキームを使って投資家を集めたり、社長の個人節税に利用したことが後から発覚したらどうなりますか? 上場審査は永久にストップ、それどころか会社に家宅捜索が入って、私たちの信用は一瞬で地に落ちるのよ!」


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### 🚀 第3幕:本物の信用を作る「番人」の覚悟


丸宮社長は、額の汗をおしぼりで拭いながら、深く深く頭を下げた。

「……すまない、黒田さん。また俺は『目先の美味い話』に目が眩むところだった。かつて架空売上に手を染めそうになったあの頃から、何も成長していないところだったよ。君がいてくれなかったら、今頃そのコンサルタントと契約書を交わしていたかもしれない」


黒田さんは静かに自分のノートPCを開き、新しい資本政策のシートを画面に映した。


「社長、私たちが目指すネクスト・コアは、そんなハリボテの裏技で大きくなる会社じゃありません。エンジェル税制を使うなら、私たちの事業の成長性を正々堂々とアピールして、本気で応援してくれる本物の投資家を、正しい手続き(コンプライアンス)で迎え入れましょう。ルールを正しく守ることこそが、結果として会社と、社長自身を一番安全に守る防弾チョッキになるんです」


丸宮社長は力強く頷いた。「分かった。その怪しい話は今すぐ断る。これからのネクスト・コアの資金調達も税務も、すべて君の引いてくれた『ガラス張りのガバナンス』の線の上だけで行うよ」


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### 🍹 エピローグ:BAR『オフバランス』にて


「——ということが月曜日にあったのよ、マダム。社長ったら、ニュースを見せた瞬間、本当に漫画みたいに真っ青になっちゃって」


深夜、私のBARのカウンターで、黒田さんはそう言って愛おしそうにフローズン・ダイキリのグラスを揺らしたわ。私は彼女の確かな成長を誇らしく思いながら、冷たいカクテルを追加した。


「見事な仕分けだったわね、黒田さん。怪しいコンサルタントの言葉に惑わされず、当日の最新ニュースという強烈な『他山の石』を使って、社長が一線を越えるのを未然に防いだ。これこそが、会社の命運を握る本物のCFO(財務最高責任者)の姿よ」


黒田さんはグラスを見つめながら、誇らしげに微笑んだ。

「コーポレートガバナンス・コードの改訂でも『適切なリスクテイクとコンプライアンスの環境整備』が叫ばれていますけど、その意味が身に染みて分かりました。財務の番人の仕事は、過去の集計をするだけじゃない。最新の時事からリスクを察知し、経営陣の目が曇った瞬間に『そっちは崖です!』と正しくブレーキを踏むことなんですね」


https://mainichi.jp/articles/20260724/ddm/041/040/124000c

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