優しい人たちに囲まれてるのに、なんでこんなに疲れるんだろう|つむぎのひとりごと
土曜日の夕方。
洗濯はした。
部屋も少し片づけた。
平日にできなかったことも、
最低限は終わらせた。
なのに私は、
イスに座ったまま動けなくなっていた。
スマホを見ても、
内容が頭に入ってこない。
テレビをつけても、
気づいたらぼーっとしている。
別に、
嫌なことがあったわけじゃない。
むしろ逆だ。
今の職場は、
ちゃんと優しい人が多い。
上司の美咲さんは、
本当に丁寧に教えてくれる。
質問しても、
「そんなこともわからへんの?」
みたいな空気を出さない。
忙しい時でも、
一回手を止めて、
「ここはな、こうしたら大丈夫やで」
って説明してくれる。
私が焦っている時ほど、
ゆっくり話してくれる人だ。
たぶん、
新人を安心させるのが上手なんだと思う。
赤いちゃんも、
見た目ほど怖くない。
むしろ、
かなり気を遣うタイプだ。
私に直接きつく言うことはない。
何かあれば、
美咲さんを通して伝えてくれる。
たぶん、
私が必要以上に落ち込まないように。
最初は気づかなかったけど、
最近わかるようになった。
「あ、この人なりに守ってくれてるんだな」
って。
職場の空気も悪くない。
挨拶すれば返ってくるし、
困っていたら誰かが助けてくれる。
新人だからって、
露骨に邪魔者扱いされることもない。
だから私は、
恵まれていると思う。
もっと厳しい職場なんて、
たくさんある。
怒鳴られる場所。
放置される新人。
陰口ばかりの空気。
そういう話を聞くたびに、
今の環境はありがたいと思う。
なのに。
なんでこんなに疲れるんだろう。
金曜日の夜は、
「やっと休みだ」って安心する。
でも土曜日になると、
張っていた糸が切れたみたいに動けなくなる。
寝ても眠い。
誰かに会いたい気持ちもあるのに、
連絡を返す気力がない。
何か楽しいことしたいのに、
身体がついてこない。
前は、
「社会人ってこんなものなのかな」
と思っていた。
でも最近、
少し違う気がしている。
私はたぶん、
仕事そのものより、
ちゃんとしようとすることに疲れている。
職場では、
ずっと気を張っている。
電話を取る時も。
この言い方で大丈夫かな。
聞き返しすぎてないかな。
書類を出す時も。
確認漏れないかな。
順番合ってるかな。
質問する時も。
今聞いて大丈夫かな。
忙しいかな。
同じこと聞いてないかな。
昼休みに話している時も。
変な空気にしてないかな。
ちゃんと笑えてるかな。
そんなことばかり考えている。
誰にも怒られてない。
でも、
「迷惑かけたくない」が
ずっと頭から離れない。
新人だから、
できないことが多いのは当たり前。
頭ではわかっている。
でも、
優しくしてもらうほど、
ちゃんと応えなきゃって思ってしまう。
美咲さんに、
「教えなきゃよかった」
って思われたくない。
赤いちゃんに、
「気を遣って損した」
って思わせたくない。
だから、
失敗しないように頑張る。
空気を読む。
先回りする。
気を遣う。
ちゃんとする。
でも、
それを毎日続けていると、
思っている以上に疲れる。
たぶん私は、
怒られることより、
がっかりされることの方が怖い。
だから、
誰も責めてないのに、
勝手に自分でプレッシャーを作ってしまう。
帰り道。
今日の会話を思い返す。
あの返し変じゃなかったかな。
電話の対応、
もっと上手くできたかも。
あの確認、
もう少し早くできたな。
そんな反省を、
ずっと頭の中で繰り返している。
土曜日になっても、
心だけ仕事している感じがする。
だから疲れる。
本当は、
もっと力を抜いていいのかもしれない。
新人なんだから、
できなくて当たり前。
助けてもらいながら覚えればいい。
みんな最初はそうだった。
たぶん、
美咲さんも赤いちゃんも、
ちゃんとわかっている。
でも私は、
まだうまく甘えられない。
ちゃんとしなきゃって、
すぐ思ってしまう。
迷惑かけちゃだめって、
先に考えてしまう。
そのくせ、
「大丈夫やで」って言われると、
少し泣きそうになる。
たぶん私は、
安心したいんだと思う。
失敗しても大丈夫。
完璧じゃなくても大丈夫。
まだ途中でも大丈夫。
そう思えたら、
もう少し楽になれるのかもしれない。
土曜日の夕方。
窓の外が少し暗くなってきた。
明日はまだ休み。
それだけで、
少しだけ救われる。
今日くらいは、
ちゃんとできる新人を休ませてもいいのかもしれない。
優しい環境の中で疲れてしまう自分を、
責めなくてもいいのかもしれない。
たぶん今の私は、
怠けているんじゃなくて、
毎日ちゃんと頑張っていたんだと思う。
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