[読書]『異常』もし自分だったら
みなさん、ごきげんよう。
本記事では、エルヴェ・ル・テリエ著『異常』の感想を読了者向けに述べます。この小説はネタバレ非推奨ですので、未読の方は読んでからぜひ戻ってきてください。
この異常が私の身に起こったら
この小説のタイトルでもある「異常」
―自分の重複者が現れるという現象―
これが自分の身に起こったとしたら、みなさんはどうしますか。
私だったら嬉しいと思います。自分としか話せないことを話してみたいですね。自分自身にだけは何も隠す必要がないのですから。人に言えないことを共有できる人間として、重複者ほど適任はいないでしょう。
しかし、それは今だからかもしれません。今の私にはもう1人の自分と共有したくないものがありませんから。例えば私は恋人を誰かと共有したくはありません。
共有できない何かがあっても2人の私は穏便に解決するでしょうね。喧嘩はできない質ですし、どう分けるのが公平か、重複者と揉めるはずがありませんからね。
(財産は…山分けにするでしょうね。私が二人居ればきっと2倍稼げるでしょうから!)
とにかく私はもう1人の私と仲良くやっていきたいです。
それだけでは終わらない
とはいえ、この小説のラストを考えると心穏やかではありませんね。二人なら嬉しいですが三人、あるいはそれ以上の重複者が現れたら…
さすがに三人以上自分がいるのは多いと感じるでしょうね。私、グループトークは苦手なんですよ。大統領の決断は…正しいと言わざるを得ません。あくまで私の立場では。
最初読むのツラかった…
斜線堂有紀さんの解説にも書かれていますが、この小説の前半はミステリーなのです。
特に長々しい第一部では、登場人物の人生が列挙されており、初見で読んでいるときは「これ一体何の話なんだ…?」と小説を読み慣れない私にはかなり苦痛でした。(殺し屋ブレイクのインパクトだけで読み通すには長すぎました…)
ところが、一度読み終わってみればこの第一部が後半の展開に重要な役割を果たしていることに気付きます。それぞれの登場人物が自分の重複者に出会ったとき何を思うのか。その決断に信憑性を持たせるには欠かせないパートなのですね。
壮大な思考実験SF
結局この小説は
「重複者が現れたら何が起こるか?」
という思考実験にミステリーと登場人物たちの人生オムニバスを加えたものですね。
こういう架空の事柄に対して現実味を帯びた妄想を繰り広げる話、めっちゃ好きです。
表紙買いですが読んでよかった〜!

