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【第41話】私はなぜ断れなかったのだろう


電話の内容は予想もしないものだった。

「お願いがあります」

彼は弱々しい声でそう言った。


そして続いた言葉に、私は耳を疑った。

「心筋梗塞で入院しました」


私は何が起きたのか理解できなかった。


つい先日まで元気だった人が、突然病院のベッドの上にいる。


しかも彼には頼れる家族がいなかった。


私は東京にいた。


電話を切った後もしばらく動けなかった。


あの時の私は、このご縁はここまでかもしれないと思っていた。


それなのに今度は、命に関わる事態が起きていたのである。


私は沖縄へ向かった。


病室で再会した彼は、以前よりずっと弱々しく見えた。


そして私にこう言った。

「お願いがあります」

彼は家族と絶縁状態だった。

保証人になってくれる身内がいなかったのである。


「婚約者のふりをして、保証人になってもらえませんか」


私は言葉を失った。


まだ付き合っているわけでもない。


もちろん婚約もしていない。


知り合ってから、それほど長い時間が経っていたわけでもなかった。


普通なら断る話だったと思う。

それでも私は断らなかった。


保証人の書類に名前を書いた後、私はしばらくその紙を見つめていた。


後になって何度も考えた。


なぜ私はあの時、迷いながらも引き受けたのだろう。

同情だったのか。

責任感だったのか。

それとも彼の誠実さを信じていたからなのか。


病室の窓から見える沖縄の空は青かった。


けれど私の心の中は晴れてはいなかった。


「これで良かったのだろうか」


その思いが何度も頭をよぎった。


しかし彼は何度も頭を下げた。


その姿を見ていると、不思議と後悔よりも「助けたい」という気持ちの方が大きくなっていった。


私はまだ知らなかった。


この決断が、その後の人生を大きく変えていくことになるとは。

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