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おじさんにチップを渡せなかった20代の私へ

 今は昔、私がまだ20代前半の頃、仕事でインドネシアに行ったことがあります。数週間の出張で、その間ずっと現地のドライバーを手配していました。

現地に着くと、約束通り、ドライバーがニコニコした笑顔で車で迎えに来てくれました。
彼は毎日、朝になると私たちが泊まっているホテルに迎えに来て、現地のオフィスまで送ってくれます。仕事が終わる時間に合わせてまた迎えに来てくれます。

オフィス以外の場所に行く日は、予定に合わせて車で送ってくれました。用事が終わって彼の携帯に電話をすると、数分でどこからともなく車をまわしてくれます。
いつ呼ばれてもいいように、ずっとその辺りで待機しているんですよね。あの暑い中で。

出発前、同じような出張に行った同僚から「ドライバーには初日にチップを渡すといいよ」とアドバイスをもらっていました。日本円で500円くらいでもすごく喜んでくれるらしいから、最初に渡しておくといいよ、と。

あぁチップ。この悩ましき文化。
当時20代前半で、海外にもほとんど行ったことがなかった私は、チップとどう付き合ったらいいのか全くイメージが湧きませんでした。

私もドライバーにチップをあげたほうがいいのかなぁと、頭の片隅で思いつつ現地に到着したところ、実際に顔を合わせたドライバーは、50代位のおじさんでした。

自分の父親と同じ位の年齢の男性に500円のチップを渡すってむしろ失礼じゃない…?
いやでも、そんなこと気にするの日本人だけ?
ここは事前情報通りに渡すべき…?

日本には、「お心づけの文化」はありますよね。
たとえば引っ越し作業で来てくれた人に、1人5000円とか、10,000円とか包む人も年配者を中心にいると思います。
でも500円って…どうなのよ?
子供のお小遣いみたいな金額を父親位の年齢のおじさんに渡すのか…?

出張先はインドネシアの中でもバリ島のような観光地ではなく、ビジネス街だったので、そこまでチップ文化は一般的では無いようでした。
ちなみに当時の物価で、日本円で500円程度あれば、現地の安い定食屋なら1週間分のランチ代くらいになるようです。

ドライバーの人の良さそうなおじさんっぷりに肩透かしを食らった私は、なんとなく初日にチップを渡すタイミングを逸してしまいました。

そこから数週間、なんとなくタイミングを逸し続け、結局最後までおじさんにチップを渡すことはできませんでした。
10年以上経った今でも覚えているので、私の心のどこかに引っかかり続けているんだと思います。

なぜあの時、チップを渡すことができなかったんだろう。
今になって思うのは、当時の自分の中に、無意識の「お金と仕事の捉え方」があったのかもしれない、ということです。

日本では、サービスを提供する側と、それを受け取るお客さん。この2つは、明確に分かれた立場であると考えることが多いですよね。

でも実はこれも、「サラリーマン的な考え方かもなあ」と思うようになりました。

たとえば、日本でも商店街の八百屋さんが、近くの町中華に野菜を納品して、そしてその町中華から夕飯の出前を頼む、みたいな日常があります。
そこでは、お客さんと提供者の役割がぐるぐると入れ替わっています。お金も行ったり来たり。
「お客さまは神様です」みたいな関係性とはまったく違う、相互依存のかたち。

チップはよく「サービスの対価」と言われますが、日本人的に考える「サービスの対価」だと高額になってしまう。
もっと「ありがとうのコミュニケーション」くらいの感覚があるんだろうなと思います。

自分とは違う”世界線”ってたくさんありますよね。
あれから10年以上経って、世の中にはいろんな考え方があるとなんとなーく理解した私は、今ならおじさんにチップを渡します。


このnoteは、レンタル無職ズボラさんのコンテスト企画に乗っかって書きました。最後にご紹介↓






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