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飲食のオペレーション改善を工場の仕組みで科学する新しい飲食経営

飲食のオペレーション改善に「工場の仕組み」が必要な理由

経営層の皆様、自店舗のピークタイムに、スタッフが汗だくになりながら必死に店内を走り回っている姿を見て、「みんなよく頑張ってくれている」と満足していないでしょうか。

あるいは、売上が伸び悩む現場に対して「もっとテキパキ動いて回転率を上げろ」「もっとおもてなしに時間を割け」と、精神論に近いハッパをかけてはいないでしょうか。

実は、飲食経営において最も危険な罠は、この「現場の忙しさ」と「オペレーションの効率」を混同してしまうことにあります。

誰よりも現場を駆け回り、必死に体力を消耗しているスタッフの動きを、一度冷徹なまでに客観的な視点で観察してみてください。

彼らの動きの半分以上は、実は利益を1円も生まない「お皿を取りに行くための無駄な往復」や「調理器具を探すための数秒の迷い」といった、プロセスのロス(無駄)で占められています。

スタッフが疲弊している原因は、彼らの怠慢や能力不足ではありません。 人間が効率よく動くための「仕組み(プロセス)」そのものがデザインされていないことに原因があります。

ここで、私たち飲食業界の経営層が導入すべきなのが、製造業の世界で100年以上磨き上げられてきた「工場の仕組み」です。

工場の製造ラインでは、作業員が「次に何をすべきか」を迷う時間は1秒もありません。 一歩も無駄に動くことなく、目の前の製品を完璧なスピードで組み立てられるよう、工具の配置から作業の動線までがミリ単位で科学的に設計されています。

この、工場の生産性を極限まで高めるための技術を、
専門用語で「IE(インダストリアル・エンジニアリング:生産工学)」と呼びます。

これまでの飲食経営は、あまりにも店長の「勘と経験」、あるいはスタッフの「個人の器用さ」という不確実な要素に頼りすぎていました。

「教える先輩によって言うことが違う」「人によってバッシング(片付け)のスピードがバラバラ」という現象が起きるのは、現場に工場のIEという思想が存在しないからです。

人間の脳は、目先の忙しさに追われると、長期的な視野や丁寧な接客といった「重要だけど緊急性の低い業務」を後回しにしてしまう心理的傾向(現在バイアス)を持っています。

店長やスタッフを「無駄なダッシュ」から解放し、本来やるべき「人に向き合う業務」へと集中させること。

そのためには、経営層がまず主導して、現場の飲食オペレーション改善を精神論から「工場の仕組み(プロセスの科学)」へとシフトさせる戦略必要不可欠なのです。


飲食のオペレーション改善の成否を分ける「スループット」の科学

では、店舗のオペレーション改善に工場の仕組みを取り入れると、具体的にどのようなインパクトが経営数値をもたらすのでしょうか。 経営層として押さえるべき、データと客観的なロジックを見ていきます。

全米レストラン協会(NRA)の動向調査や、米大手POSデータ分析企業であるToast社が蓄積した膨大な店舗データによると、現在の飲食経営において最も重視されている指標は、単純なコスト削減ではありません。

最も重要視されているのは、
「スループット(時間あたりの処理能力・回転率)の最大化」です。

ビジネス書などでもよく使われる言葉ですが、飲食店におけるスループットの定義は極めてシンプルです。 それは、「一定時間内にお客様に料理を提供し、お会計を済ませて、客席を次の顧客へ回転させられた数」のことです。

多くの飲食店オーナーは、利益を削ろうとする際、真っ先に「人件費」の削減に走りがちです。 しかし、これは飲食経営における最大のバイアスであり、店舗をジワジワと崩壊させる悪手です。

人件費を削るためにシフトの人数を減らせば、当然ながら現場のオペレーション速度は急低下します。 提供が遅れ、客席のバッシングが滞り、結果としてお店全体の「スループット」が著しく下がります。

例えば、ランチタイムのピーク1時間に、いくら客席が満席で大行列ができていても、現場の処理能力が低く20組しかさばけなければ、その店舗のスループットは「20」が限界です。

一方で、工場の仕組み(IE技術)を導入し、スタッフの無駄な動線や迷いの時間を徹底的に排除したとします。 同じ人数、同じ1時間の中で、流れるように30組のお客様をさばくことができれば、スループットは「30」へと跳ね上がります。

この時、経営層として最も注目すべきは、「店舗の家賃」や「社員の基本給」といった固定費は1円も変わっていないという事実です。

スループットが1.5倍に向上して増えた売上は、食材原価を除いた大部分が、そのまま会社の「純利益」として金庫に残ることになります。

目先の人件費を数万円削るために現場をガタガタにするよりも、現場のプロセスを科学してスループットを上げる方が、遥かに巨大な利益を店舗をもたらすのです。

データによって「現場のどこに無理と無駄があるのか」を正確に突き止め、同じ固定費の中で最大の売上を叩き出す。

これこそが、これからのインフレ時代を生き抜くために、経営層が店長へ授けるべき「プロセスの科学」です。


名著『ザ・ゴール』に学ぶ飲食のオペレーション改善とボトルネックの特定

これまで「職人の勘」や「店長の経験則」という曖昧な言葉で片付けられてきた飲食のオペレーション改善を、具体的な仕組みへと落とし込むために、経営層が絶対に知っておくべきバイブルがあります。

それが、世界的な大ベストセラーであり、製造業のバイブルでもある名著『ザ・ゴール(エリヤフ・ゴールドラット著)』です。

この書籍の中で、閉鎖寸前の工場を救うための核心的な概念として描かれているのが「ボトルネック(制約条件)」の本質です。

物語の中で、主人公の工場長は、週末に子供たちのハイキングの引率を任されます。 足の速い子供、平均的な子供、一番足の遅い「ハービー君」が1つの列になって山を登っていきます。

主人公は気づきます。列の先頭を歩く足の速い子供たちをどれだけ急がせても、全体の歩く速度(スループット)は1ミリも上がらないということに。 なぜなら、全体の移動速度を決定づけているのは、列の真ん中で息を切らせて歩いている、一番足の遅い「ハービー君」の速度そのものだったからです。

この「ハイキング列のハービー君」こそが、店舗の利益をガタガタにするボトルネックの正体です。 ボトルネックとは、瓶(ボトル)の首が細くなっていると中身の水が勢いよく出ていかないように、「店舗全体の処理能力を決定づけている、一番流れが詰まっている場所」を指します。

多くの店長は、忙しい時間にお店が回らなくなると「ホール全体の動きが遅い」「キッチンがたるんでいる」と、全体を感情的に責めてしまいがちです。

しかし、プロセスの科学において、全体の流れを止めているボトルネックは、常に現場の「たった1箇所」にしか存在しません。

例えば、キッチンがどれだけ最新のオーブンを導入し、超高速で料理を作ったとしても、ホールのバッシングが遅れていれば、次の新規客を席に案内することはできません。 この場合、店舗のスループットを制限しているハービー君は「バッシングのプロセス」です。

バッシングが詰まっている状態で、キッチンの調理速度をどれだけ早くしても、店舗全体のスループットは1ミリも向上しません。それどころか、キッチン内に提供できない料理の在庫が溜まり、現場がさらに混乱するだけです。

逆に、ホールがお皿を完璧に下げて席を常に空けていても、キッチンのメイン調理担当の手元が詰まっていれば、そこがボトルネックになります。

経営層が店長に指南すべきは、「お店のハイキング列を遅らせているハービー君(ボトルネック)はどこか」を冷徹に見極めさせ、そこだけに店舗の全リソースを集中させて改善させることです。

ボトルネックではない場所をどれだけ改善しても、それはただの「自己満足の徒労」に終わります。 現場の一番細い管を見つけ出し、そこをピンポイントで広げること。これこそが、名著『ザ・ゴール』が教えてくれるオペレーション改善の真髄です。


飲食のオペレーション改善をシステム化し持続可能な飲食経営へ

結果の数字が書かれた損益計算書(PL)を後から見て店長を叱責するのではなく、現場の「プロセスを先に見る」ことでスループットを最大化すること。

この思想に基づき、現在私たちがローンチに向けて開発を進めているのが、店舗オペレーション分析システム「OpSight(オプサイト)」です。

私たちは、店長がストップウォッチでプロセスを可視化する手間を無くすため、現場のピーク帯の動画データからAIがバッシングの動線や無駄な時間を自動で可視化し、科学的な改善へと導くシステムを開発しています。

これは決してスタッフを監視するための仕組みではありません。 お店の回転率(スループット)に本当に貢献してくれているメンバーの「隠れた努力や秒単位の工夫」をデータとして正当に評価し、お店に確かな利益を残すためのシステムです。

工場の仕組み(IE)やテクノロジーによって、事務作業やボトルネックの分析が自動化されたとき、店長の手元には、人間にしかできない「圧倒的な時間」が確実に残ります。

店長がパソコンの前に座り込んで文字入力をしている時間は、経営層にとって1円の利益も生まない埋没コストです。

その不毛な時間を削り落として生み出した時間こそが、人間にしかできない「スタッフへの感謝の言葉」「細やかなモチベーションケア」「お客様への小さなおもてなし」のために使われるべきです。

テクノロジーが泥臭いプロセス管理を引き受け、人間が本来の温かいマネジメントに集中する。 この、現場が楽になりながら利益が最大化する環境をデザインすることこそが、これからの時代に求められる経営層の役割です。


まとめ:経営層が明日から店舗で実践すべき「工場の仕組み」チェックリスト

本記事で解説してきた「工場の仕組み(IE)」を用いた飲食のオペレーション改善は、これからのインフレ・人手不足の時代を勝ち抜くための、最もロジカルな経営切り札です。

経営層として、自社の店長を勘頼みのマネジメントから解放し、強い組織を作るために、明日から実践すべきアクションを3つのチェックリストにまとめました。

  1. 店舗全体の「ハービー君(ボトルネック)」の特定 忙しいピークタイムに、店長が「今、お店の回転を止めている一番の詰まりどころはどこか」を即答できるか確認してください。キッチンなのか、バッシングなのか、レジなのか。それが言えないうちは、現場はただ無駄なダッシュを続けている状態です。

  2. 「動線」の1歩を減らす環境レイアウトの変更 調理場やパントリーを経営層自らの目で見て、スタッフが道具を取るために「不自然にしゃがむ」「数歩歩く」といったロスがないか確認してください。工場のラインと同じように、その1歩を無くすために棚や器具の位置を10センチ変えることこそが、IEの第一歩です。

↓ダウンロードして使ってくださいね↓

飲食の現場を支えているのは、間違いなく「人」という温かい存在です。 しかし、その人が磨り減ることなく、笑顔で最大のパフォーマンスを発揮できる環境を用意するのは、経営層の「仕組み」に他なりません。

店長が再び「お客様の笑顔」と「スタッフの成長」に100%の情熱を注げる高収益な環境を、工場の仕組みとテクノロジーの力を借りて、共に構築していきましょう。

このnoteとXでは、飲食店オーナーの皆様の努力が正当に報われ、しっかりと利益が残るためのオペレーションの科学をこれからも発信していきます。 少しでも共感していただけましたら、ぜひフォローやスキをいただけると励みになります。

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