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千葉県で「捨てられている資源」ってどれくらいあるの?——公開データだけで調べてみた

千葉県で「捨てられている資源」ってどれくらいあるの?——公開データだけで調べてみた

この記事について

「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という言葉を最近よく耳にするようになりました。

ざっくり言うと、「ごみとして捨てているものを、別の誰かの資源として活かそう」という考え方です。

聞くと「それは良いことだね」と誰もが思う。でも実際にやろうとすると、すぐにぶつかる壁があります。

「そもそも、何がどれだけ捨てられているのか、よく分からない」 ということです。

そこで今回、私たちの拠点がある千葉県を対象に、誰でもアクセスできる公開データだけを使って、「捨てられている資源」の全体像を調べてみました。

調べてみたら、思った以上に面白い結果が見えてきたので、共有させてください。


まず、千葉県のごみの量ってどれくらい?

環境省と千葉県が毎年公表しているデータがあります。これを見てみると、千葉県のごみ総排出量は年間約237.5万トン(令和4年度)。

1人あたりに換算すると、1日867グラム。全国平均が880グラムなので、ほぼ平均的な水準です。リサイクル率は24.3%で、これは全国平均(19.6%)を上回っています。

ここだけ見ると「まあ普通だな」と思うかもしれません。

ところが、中身を見ると少し驚きます。

排出されたごみの**68.2%が「可燃ごみ」**として分類され、その大部分が焼却処理されています。処理方法の内訳を見ると、約78%が「燃やして埋める」というルートを辿っている。

この可燃ごみの中に、かなりの量の食品残渣が含まれています。

食品残渣は、実はメタン発酵という方法でバイオガスに変えることができて、そこから電気も熱もつくれます。つまり、「燃やしているもの」の中に「エネルギーの素」が混ざっているということなんです。


千葉県には「見えにくい資源」がたくさんある

ここからが本題です。

一般廃棄物(いわゆる「ごみ」)の統計だけを見ていると、千葉県が持つ資源のポテンシャルの半分も見えてきません。

なぜなら、千葉県は全国有数の農業県だからです。

農業産出額は4,029億円で全国第4位(令和5年)。落花生は全国シェア86%でダントツの1位。日本なし、えだまめ、かぶ、マッシュルームなど、全国1位の品目を7つも持っています。

さらに、醤油の生産量は全国1位。キッコーマンやヤマサの工場がある野田市・銚子市を中心に、醤油づくりの一大拠点になっています。日本酒の酒蔵も県内に38蔵あります。

こうした農業や醸造業からは、製品をつくる過程で「副産物」が大量に発生します。稲わら、もみ殻、野菜の切れ端、落花生の殻、果樹の剪定枝、酒粕、醤油粕……。

これらは通常の「ごみ」の統計には出てきませんが、バイオマス資源としてはとても大きなポテンシャルを持っています。

品目ごとに副産物の量を推計してみたところ、こんな数字になりました。

千葉県の主な農畜水産物と副産物

※推計方法:各品目の生産量に、一般的に知られている副産物の発生比率をかけて算出しています(例:稲わらは米の生産量×0.9倍、もみ殻は×0.3倍)。あくまで概算です。

合計すると、農畜水産業からの副産物は年間約382万トン

これ、一般廃棄物の237.5万トンよりも大きい数字なんです。

ここに醸造業の副産物(酒粕や醤油粕)を加えると、千葉県で毎年発生する有機性資源の総量は約626万トンと推計されました。


資源の流れを一枚の絵にしてみた

ここまでのデータを整理して、千葉県の有機性資源が「どこから来て、どこへ行くのか」を一枚の流れ図にまとめてみました。

マテリアルフローアナリシス(MFA)と呼ばれる手法で、いわば「資源の地図」のようなものです。

今回、この分析結果をインタラクティブなサンキーダイアグラムとして公開しました。

👉 千葉県マテリアルフローアナリシス(MFA図)

実際にページを開いてもらうと、各ノード(四角い要素)にマウスを乗せると、そこに繋がる資源の流れだけがハイライトされます。たとえば「醸造業」にホバーすると、酒粕がどこへ流れて何に変わるかが一目で分かります。

「発生源 → 廃棄物分類 → 処理方法 → 最終アウトプット」の4段階で、緑のフローがサーキュラーエコノミーに転換可能な流れ、赤が焼却処理の流れです。

流れの全体像(簡略版)

以下はテキストで簡略化した図ですが、実際のMFA図ではフローの太さが量に比例するサンキーダイアグラムになっています。

【発生源】           【分類】           【処理】          【行き先】

🏠 家庭 ──────→ 可燃ごみ ───→ 焼却 ──────→ 焼却灰→埋立
   1,618千t         1,620千t       1,270千t

🏢 事業 ──────→ 資源ごみ ───→ リサイクル ──→ 再生資源
   757千t           437千t         437千t

🌾 農業 ──────→ 稲わら等 ──→ 農地すき込み
   3,819千t         302千t

                    畜産ふん尿 ─→ 堆肥化 ─────→ 土壌改良
                    3,200千t      2,600千t

🍶 醸造業 ────→ 酒粕等 ──┐
   26千t                     ├→ CE転換可能 ──→ 電力・熱・飼料
🐟 水産業 ────→ 加工残渣 ┘    1,323千t
   45千t

(※テキストでは伝わりにくいので、ぜひMFA図を触ってみてください)

この図から見えてくること

この図のポイントは、右下の「CE転換可能」と書かれた部分です。

年間約626万トンの有機性資源のうち、サーキュラーエコノミーに転換できそうなのは約132万トン。全体の約21%です。

内訳はこんな感じです。

  • 畜産ふん尿のバイオガス化:約80万t(今は堆肥にしているけど、バイオガスにすれば電気も取れる)

  • 可燃ごみの中の食品残渣:約35万t(燃やさずにメタン発酵に回せる分)

  • 野菜くず・農業残渣:約18万t

  • 稲わらのバイオ炭化:約10万t(炭にして土に埋めると炭素を長く固定できる)

  • 酒粕・醤油粕・水産残渣:約7万t

量だけで見ると畜産ふん尿が圧倒的ですが、個人的に面白いと思っているのは酒粕と醤油粕です。

量は少なくても、酒粕は発酵効率がとても高い素材なんです。そして何より、「千葉の地酒の酒粕からエネルギーをつくって、そのエネルギーで育てた野菜や魚を地元で食べる」というストーリーが描ける。数字だけでは測れない価値がそこにあると思っています。


なぜ「可視化ツール」をつくったのか

今回、分析結果をただ数字で並べるだけでなく、インタラクティブなMFA図として公開しました。

正直に言うと、最初はここまでやるつもりはありませんでした。

きっかけは、サーキュラーエコノミーについて人に説明しようとしたときの「伝わらなさ」です。

「食品残渣をメタン発酵でバイオガスにして、その廃熱できのこを育てて、消化液は液肥にして農地に戻して……」と話すと、相手の目が途中で泳ぎ始めるんですよね。要素が多すぎて、何がどうつながっているのか頭の中で組み立てられない。

これは聞いている人の問題じゃなくて、伝える側の問題だと思いました。

サーキュラーエコノミーの本質は「つながり」です。Aの廃棄物がBの原料になり、Bの副産物がCのエネルギーになる。この「全部がつながっている」という感覚は、言葉だけでは伝えきれない。

だったら、見せるしかない

そう思ってつくったのが、このマテリアルフロー図です。

つくってみて気づいたこと

実際につくってみると、自分たち自身にとっても発見がありました。

データをExcelの表で眺めているだけだと、「畜産ふん尿320万トン」「可燃ごみ162万トン」と、それぞれが独立した数字に見えます。でもフロー図に落とし込むと、これらがひとつの大きな「流れ」の中にあることが一目で分かる。

たとえば、「家庭系の可燃ごみ」と「農業の野菜くず」は、発生源はまったく違うけれど、処理先としては同じ「バイオガス化」に流れ込める。そういう意外なつながりが見えてくるんです。

もうひとつ気づいたのは、「焼却」の赤い流れの太さです。

フローの太さは量に比例するように設計しているのですが、焼却処理に向かう赤いフローの存在感が圧倒的に大きい。千葉県で毎年127万トンの有機物が、エネルギー回収もされずに燃やされている。その「もったいなさ」が、数字で見るよりもフロー図で見たほうがずっと直感的に伝わります。

「見える」と「動ける」は違う。でも「見えない」と「動けない」

このツールをつくったからといって、すぐに循環が回り始めるわけではありません。

「見える化」は第一歩でしかない。実際に資源を集めて、処理して、届けるのは、もっと泥臭い現場の仕事です。

でも、見えていないものは、動かしようがない

私たちのバックグラウンドは自治体DXやデータサイエンスです。プラントを建てる技術者でもなければ、農家でもない。でも「情報の流れをつくる」ことならできる。

サーキュラーエコノミーのボトルネックは、モノの循環ではなく情報の循環だと考えています。どこに何があるのか。誰が何を必要としているのか。その情報がつながっていないから、物理的には可能な循環が実現しない。

このMFA図は、その「情報の循環」の最初の一歩です。

千葉県の有機性資源626万トンの流れが一枚の図で見渡せる。「ここに転換の余地がある」という場所が緑色でハイライトされる。それだけで、「じゃあ次はどこから手をつけようか」という会話が始まります。

実際に、この図を見せながら話をすると、相手の反応が明らかに変わりました。数字の羅列では「ふーん」で終わっていたのが、フロー図だと「ここの赤い流れを緑に変えたいよね」と、自分ごとの言葉が出てくる。

「データで見せる」ことが、循環の第一歩を動かす。

大げさかもしれませんが、これは今回の取り組みで得た一番大きな学びでした。

ツールの使い方は簡単です。MFA図にアクセスして、気になるノード(四角い要素)にマウスを乗せてみてください。そこにつながるフローだけがハイライトされて、資源がどこから来てどこへ行くかが一目で分かります。


ここから何ができそうか

この分析を通じて、いくつかの面白い可能性が見えてきました。

① 食品残渣×酒粕×稲わら → バイオガス

メタン発酵で大切なのは、原料の「C/N比」(炭素と窒素のバランス)です。食品残渣だけだと偏りがちですが、稲わら(炭素が多い)と酒粕(窒素が多くて発酵が早い)を混ぜるとバランスが良くなります。

千葉県にはこの3つの素材がすべて揃っています。これは地域の強みです。

② バイオガスの廃熱 → きのこ栽培

バイオガスで発電すると、電気と一緒に熱が出ます。千葉県はマッシュルームの生産量が全国1位なのですが、きのこ栽培は温度管理にかなりのエネルギーを使います。この廃熱を使ってハウスを温めれば、暖房コストを大きく下げられます。

③ 発酵後の液 → 農地の肥料に

メタン発酵の後に残る液(消化液)には、窒素やリンが含まれていて、液体の肥料として使えます。千葉県は農業県なので、使い道には困りません。化学肥料の使用を減らすことにもつながります。

つまり、**廃棄物を受け入れて(=処理費をもらい)、エネルギーと食料と肥料をつくる(=売上が立つ)**という、入口と出口の両方で収益が生まれる仕組みが描けるんです。


正直に言っておきたいこと

ここまで書いてきましたが、この分析には限界もあります。大切なことなので正直にお伝えします。

推計値が多いです。 農業副産物の量は「生産量 × よく使われる比率」で概算しているので、実際とはズレがあります。食品残渣の千葉県分も、全国データを人口比で割り戻しただけです。

「量がある」と「集められる」は違います。 稲わらが30万トンあっても、県内各地の田んぼに散らばっています。一箇所に集めるコストを考えると、全部は使えません。

季節によっても変わります。 収穫期と端境期で副産物の量は大きく違いますし、事業者さんの事情や制度の変化でも流れは変わります。

それでも、公開データだけでここまで見える化できたことには手応えを感じています。「何がどこにあるのか」が見えれば、「じゃあ何から始めよう?」という話ができるようになるからです。


これからやっていくこと

私たちは、この分析を出発点に、千葉県でサーキュラーエコノミーの実証に取り組んでいく予定です。

1. メタン発酵の基礎実験 地域の大学や研究機関と一緒に、食品残渣と酒粕の組み合わせでどれくらいのガスが出るか、実際に測ります。

2. 自治体との共同研究 「営業」ではなく「一緒に調べませんか」という形で、自治体と廃棄物データの分析に取り組みます。

3. 補助金の活用 農水省の「みどりの食料システム戦略推進交付金」など、使える補助制度もリサーチ済みです(これも別記事で共有予定)。


おわりに

「サーキュラーエコノミー」というと、なんだか大きな話に聞こえるかもしれません。

でも今回調べて分かったのは、私たちの身近な場所にも、まだ活かされていない資源がたくさんあるということでした。

千葉の落花生の殻。酒蔵から出る酒粕。田んぼに残る稲わら。市場に出せなかった野菜。

ひとつひとつは小さな話です。でも、マテリアルフロー図を見てもらえれば分かるように、それらが全部つながると、年間132万トンという大きな流れになる。

「見える」ようにするだけで、「つながる」可能性が生まれる。

まだ私たちの取り組みは始まったばかりです。このMFA図も、データが増えるたびにアップデートしていきます。地域の方からの「うちの廃棄物データも載せてほしい」「この数字、もっと正確な値を知っているよ」というフィードバックも大歓迎です。

こうした「もったいない」を、データの力で「もったいなくない」に変えていく。

それが、私たちのやりたいことです。

もしこの取り組みに少しでも興味を持っていただけたら——自治体の方でも、研究者の方でも、農家の方でも、事業者の方でも、どなたでも——ぜひお気軽にお声がけください。

一緒に「循環」をつくれる仲間を探しています。


この記事は2026年4月時点の公開データに基づいています。 マテリアルフロー図は公開中です → MFA図を見る


弊社作成マテリアルフロー図


分析ダッシュボード・バイオガスシミュレーターも順次公開予定です。


使ったデータの一覧

この記事で使ったデータは、すべて誰でもアクセスできる公開情報です。

出典 発行者 主な利用内容 一般廃棄物処理事業実態調査(R4) 環境省 排出量・リサイクル率 清掃事業の現況と実績(R4) 千葉県 ごみ組成・市町村別 食品ロス量の推計値(R4) 環境省 食品ロス全国値 食品廃棄物等の発生量 農林水産省 業種別食品廃棄物 清酒の製造状況等(R4酒造年度) 国税庁 酒粕発生量の推計元 千葉県農林水産業の動向(R6) 千葉県 農業産出額・品目別 生産農業所得統計(R5) 農林水産省 全国順位 漁業・養殖業生産統計年報(R4) 農林水産省 水産業の産出額 産業廃棄物処理実態調査(R5) 千葉県 産廃の業種別データ 千葉県の全38酒蔵一覧 CHIBASAKE.COM 酒蔵の地域分布

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