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「アナログレコードって本当に音が良いの?」 〜 『関ジャム 完全燃 SHOW』 (テレビ朝日) の解説は本当か? (15)

●『関ジャム 完全燃 SHOW【視聴者からの音楽ギモンに答えます!教えて!
  関ジャム先生!】』「アナログレコードって本当に音が良いの?」
 (2019 年11月10日 放送)について感じたこと

 ※ このテーマについては『関ジャム 完全燃 SHOW【弾き語り・実はスゴ
   イ楽器・音楽ギモン…特別編】』(2021 年 5月23日 放送)でも取り
   上げられています

 ※ テレビ朝日系音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃 SHOW』は
   2024 年 4月から番組名を『EIGHT-JAM』(エイトジャム)と改めて
   放送を継続しています


<疑問> 20 kHz 以上の高音域が記録・再生できれば高品位(高忠実度)に
     なるのでしょうか? [14]


 Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)というのは、耳で判別できなくても、皮膚や骨振動などで知覚しており、可聴周波数帯域(20 Hz〜20 kHz)外の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)が含まれる音声を聴くと脳波に変化が現れる(α 波の優勢率が上がり、β 波の優勢率が下がる)というものです。

 ダイビングをされる方はご存知だと思いますが、水中では、人間でも 100 kHz の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を感知できますし、骨伝導を利用したフルデジタル超音波通信機(水中トランシーバー)も実用化されています。また、骨伝導補聴器や骨伝導イヤホンの利用者も少なくありません。もちろん、これらの機器で ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を再生できるわけではなく、一般的なイヤホンよりも音質は劣ります(例外的ですが、4 Hz 〜 40 kHz の周波数帯域を再生できる骨伝導デバイスもあります)。

 しかし、ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を感知できることが、音質が優れていることの論証になるのでしょうか。そもそも主観評価、平均オピニオン評点(MOS)を問わず、評価に使用する音源(音声、音楽)や評価者によって結果は違ってきますし、「良い音」の評価は相対的なもので、絶対評価ではありません。

 例えば、シンガーソングライターで作曲家、音楽プロデューサーの山下達郎氏はオーディオエンジニアリングに並々ならぬ関心をお持ちですが、いち早く 24 bit / 96 kHz でレコーディングを始められた折にも、主観評価の結果、音質傾向が自ら制作する音楽の方向性に合わないと判断されて、録音フォーマットを 24 bit / 48 kHz にスペックダウンされています。

 世間でよく言われるように「50 kHz を超えるような高周波」が高音質の理由であるとしたら、少なくともサンプリング周波数が 48 kHz(ナイキスト周波数:24 kHz)の録音よりも 96 kHz(ナイキスト周波数:48 kHz)の録音の方が「良い音」でなければ不自然であり、山下達郎氏の相対評価は間違っていることになります。そもそも、20 kHz 以上の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を捕捉できる物理特性を備えたマイクロフォンで収録しなければ無意味ですが…。

 山下達郎氏が 24 bit / 96 kHz レコーディングに対して否定的であったのは、当時の Pro Tools(スタジオ標準の DAW)における 24 bit / 96 kHz レコーディングは低品質で、ピーク成分の強靭な粒立ち、マージのしにくさ、歪感の強さが目立ったという事情もあります。

 アナログレコーディングでは、コンプレッサーで極端にピークを叩かなくても、テープ・コンプでピーク成分が潰れて馴染み、自然なソノリティが得られるほか、音量差で定位の前後感や空間の奥行きを表現できるのに対して、デジタルレコーディングは高解像度で定位が明確であり、小さな音もくっきりと分離して聴こえるため、アナログレコーディングのように音量差で奥行き感を演出したり、センター寄りの一体感のあるソノリティ(”太い音”と表現されます)を得ることが難しいという特性の違いがあります。

 その一方で囁(ささや)くような語り口の歌い方をしても、綺麗にディテールを拾ってくれるため、近年流行している J-POP の多くが、そのような歌唱になっているのです。

 例えば、TK from 凛として時雨unravel(アンラベル)』(TV アニメ「東京喰種トーキョーグール」第1期 OP、2014 年)で聴くことができる、(1)ウィスパーボイス、(2)裏声、(3)地声のハイキーを織り交ぜた声色の変化を克明に描写したボーカル、yamaslash』(TV アニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」Season 2 OP、2023 年) の高く澄んだ女声にバリのようにささくれ立つ、ざらついた質感が纏わり付いた中性的なハスキーボイスの魅力を引き出しているのも、デジタルレコーディングの特質が存分に活かされた結果であると言えます。


 ▢ 凛として時雨(公式サイト

   TK from 凛として時雨『unravel』 Music Video(Full Size)
   THE FIRST TAKE TK from 凛として時雨『unravel(アンラベル)』

 ▢ yamaslash』Music Video
   (TV アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season 2 OP)


 ※ 作曲家で音楽プロデューサーの 松任谷正隆 氏は、ユーミン(松任谷由
   )のレコードをコンパクトディスク(CD)でリリースした当時の印
   象について、レコードとコンパクトディスク(CD)の音声品質の違い
   に驚き、コンパクトディスク(CD)で聴くユーミン(松任谷由美)の
   音楽は「大きな皿の上に料理が並べられているけれど、全く盛り付けが
   されていない料理みたいだった。」と感想を述べられています。「音質
   は担保されているが、音楽としては纏まりがない」と感じられたので
   しょう。松任谷正隆 氏は毎週末に外食をする習慣がある家庭環境で育
   ち、幼少期から高級外車に乗せられて、正装で銀座の一流レストランに
   通い ”食育” を受けた経験をお持ちですから、このように表現されたの
   だと拝察いたします

 ※ チャンネルセパレーションに難点があるレコードはセンターに音像が集
   まるため、その周辺に楽器を配置するミックスで一体感のあるソノリ
   ティが得られますが、レコード用のマスタリングでコンパクトディスク
   (CD)をプレスすると、平場に楽器を並べただけの、薄っぺらな音場
   になったということでしょう。ユーミン(松任谷由美)の全盛期は、ア
   ナログレコーディングで極められた音作りのクオリティをデジタル環境
   で再現(実現)するために格闘した日々であったと、松任谷正隆 氏は
   回想されています

 ※ 松任谷正隆 氏は 慶應義塾幼稚舎(私立小学校)のご出身で塾員(慶應
   義塾大学の卒業生)です。残念なことに ホテルニューオータニ の関連
   会社が運営する給食専用のカフェテリア(幼稚舎新館 21:けやきホー
   ル、2002[平成14]年竣工、設計:谷口吉生)で ”食育” を受ける機会
   に恵まれませんでしたが、それ以前から、ご家庭で ”食育” が実践され
   ていたのです


LOVE LAIKA[新田美波 × アナスタシア]

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS
ANIMATION PROJECT 02 Memories


日本コロンビアオフィシャルサイト
アイドルマスター(THE IDOLM@STER)公式ページ

LOVE LAIKA[新田美波 × アナスタシア]
THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS
ANIMATION PROJECT 02 Memories

新田 美波(にった みなみ)CV:洲崎 綾(すざき あや)
   アナスタシア(ANASTASIA)CV:上坂 すみれ(うえさか すみれ)


 Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)の発見者として知られる、脳科学者の 大橋 力(おおはし つとむ)氏は 千葉工業大学 教授時代の2000 年に米国生理学会の学会誌で Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)について発表されています。

 この論文の主旨は ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を聴くと基幹脳が活性化して、リラックス、ストレスの軽減、免疫力の増加などにより、癒し効果が認められるというもので、ハイパーソニック・エフェクトの発現には、可聴周波数帯域(20 Hz〜20 kHz)の可聴音を聴覚系に呈示すると同時に、高周波非可聴音(ultrasonic:超音波)を体表面に印加する必要があるとされています。しかし、その発現には音以外の要因、体調差、個人差があり、一定の医療効果も保証されていません。

 Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)には、免疫活性の上昇、ストレス性ホルモンの減少などの他に、音がより快く、美しく聴こえる効果が認められるというのですが、高周波非可聴音(ultrasonic:超音波)を体表面に印加しなくても、脳波に変化が見られたと報告する論文もあることは前述した通りです。

 ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)は相互変調歪(Inter Moulation Distortion:IMD)となり、聞こえる場合もありますが、これは元の信号にはない周波数成分であり、音質劣化の原因の1つです。

 レコードに関して言えば、前述した通り 20 kHz 以上の楽音が収録されている可能性は極めて低く、40 kHz 付近まで緩やかに減衰しながら記録される音声信号の大部分は高周波ノイズです。脳科学者である 大橋 力(おおはし つとむ)氏の説が正しいとすれば、この高周波ノイズが Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)を発現させる要因であると判断するのが妥当です。換言すれば、高周波ノイズ(もしくは高周波の楽音)が含まれないハイレゾ音源では、Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)は発現しないことになります。

 ご参考までに Audio-technica(オーディオテクニカ)が Web サイトで公開している Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)に関する記事を紹介しておきます。


 ▢ Audio-technica(オーディオテクニカ)
   Always Listening 音にこだわる人、モノ、コト、場所をお届け

   おすすめ記事 | 2024.01.27 Sat
   超高周波「ハイパーソニック・エフェクト」が心身に与える影響と
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   リー『音と文明』公開イベント総括


 ▢ 厚生労働科学研究成果データベースの資料
   ハイパーソニック・エフェクト応用による音響療法の展望


 ▢ 内閣府ホームページ

   最先端・次世代研究開発支援プログラム 事後評価対象研究課題一覧
            (総合評価結果別)
   (4)「十分な成果が得られていない」と評価された課題(11 課題)

     ライフ・イノベーション[課題番号:LR032]
     補助事業者:仁科 エミ
     所属機関・役職:放送大学教養学部教授
     研究カテゴリ:理工系
     研究課題名「ハイパーソニック・エフェクトを応用した健康・快適な
     メディア情報環境の構築」(参考資料:52 ページ)


 ▢ 日本学術振興会

   最先端・次世代研究開発支援プログラム
   ハイパーソニック・エフェクト応用した健康・快適なメディア情報環境
   の構築


 現在、制作されているコンパクトディスク(CD)には、意識しても聴き取れない音量レベルのノイズが付加されています。ノイズを付加すると音質が向上するからです。人間の脳は物理的に存在する音が聴こえなかったり、存在しない音が聴こえたり、高い音が低く聴こえたり、低い音が高く聴こえたりする「錯聴」(さくちょう:音の錯覚)をします。存在しない音が聴こえる「連続聴効果」という現象も「錯聴」(さくちょう:音の錯覚)の1つです。

 一定の間隔で音声の一部を削除すると、音声は途切れて聴こえますが、音声を削除した部分に適切な特性のノイズを付加すると、連続した音声として聴こえます。人間の脳はノイズが付加された部分には、マスキングされた音声が存在するはずだと予測して、削除された音声を自ら修復して聴くのです。

 実際に耳で聴いている音声と知覚した音声との間には、ズレが生じるわけですが、予測が正しいと脳が判断すれば、それを物理的に存在する音声として知覚します。コンパクトディスク(CD)に低レベルのノイズを付加すると音質が向上したり、20 kHz 以上の周波数帯域に高周波ノイズが広く分布するレコードの音質が優れて聴こえたりするのは、こうした脳の知覚メカニズムと無関係ではないと思われます。

 Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)の発見がハイレゾ規格を成立させた要因の1つであることは事実であり、大橋 力(おおはし つとむ)氏が音楽産業の発展に一定の貢献をしたという意味では「第23回文化庁メディア芸術祭 功労賞」の受賞理由として十分な評価が認められているのでしょう。

 しかし、大橋 力(おおはし つとむ)氏は「山城祥二」名義で芸能山城組を主催して音楽活動をされています(1998 年公開の大友克洋原作 / 監督映画『AKIRA』の劇伴を担当、国内外で高い評価を受けており、『回想 ILLUSION』はヒップホップのラッパー Danny Brown が『Fields』という曲でサンプリングしたことでも知られています)。このことが、問題の本質を見えにくくしています。

 可聴周波数帯域(20 Hz 〜 20 kHz)外の音響成分(ultrasonic:超音波)は人間の聴力で識別可能なのか、NHK 放送技術研究所 は科学的に検証しています。その結果は、一般に 20 kHz まで記録された音源と 100 kHz まで記録された音源の違いを識別できる人間はいないと結論して不都合のないものです。

 このことは、ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を含む音声を聴くと基幹脳が活性化して α 波の優勢率が上がるという Hypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)とは別の問題です。いずれにしても、ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)の有無が「良い音」の評価に直接影響を与えるものではありません。

 測定すれば自明ですが、ブルガリアン・ヴォイスやホーミーなどの喉歌(のどうた)、ガムラン(民族音楽)などの民族楽器の音には、20 kHz 以上の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)が豊富に含まれています。けれども、近代楽器を使用する西洋音楽に 20 kHz 以上の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)は、ほとんど含まれていません。ですから、ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)が録音・再生できたとしても「良い音」の評価に大きな影響を与えることはないのです。

 大橋 力(おおはし つとむ)氏が指摘されたのは、レコードの高周波を強調してみたら、音の印象が変わったということです。

 注意すべきなのは(1)対象となる音(原音)の周波数レンジ、(2)音声記録の周波数レンジ、(3)メディアの記録可能な周波数レンジ、(4)オーディオ・イクィップメントの再生可能な周波数レンジについて、個々に確認し、ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)の音声を含むのか否かを判定する必要があるということです。

 対象となる音(原音)が民族楽器で音声信号に ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)の倍音が含まれているとしても、それを記録できるメディアなのか、再生できるオーディオ・イクィップメントなのかが問題になります。

 大橋 力(おおはし つとむ)氏が強調したのは、(1)レコードの高周波ノイズなのか、(2)楽器の倍音なのか、(3)そのどちらも含むのか、という点も重要です。楽器の倍音を含まない高周波ノイズであってもHypersonic effect(ハイパーソニック・エフェクト)が発現するのであれば、レコードの再生品質が要因(メディアの問題)であり、ハイレゾ音源でメディアの制約を受けないのであれば、ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)の倍音それ自体が要因ということになります。

 プロのエンジニア、研究者などが会員の国際団体 AES (Audio Engineering Society Inc. 会員数は 12,000 名以上、本部はニューヨーク)では、多くの場合サンプリング周波数 48 kHz(リニア PCM)で音響制作、編集作業を行うことを推奨しています。24 bit / 48 kHz(リニア PCM)フォーマットで人間の聴覚限界まで余裕を持ってカバーできるからです。

 また、海外メーカーはスピーカーシステムの高域再生限界周波数を 24 kHz 程度に設定するのが一般的です。国産メーカーのようにハイレゾ対応機器と銘打って 40 kHz であるとか 100 kHz まで再生可能なスペックにすることに有意性があるとは考えていません。現在までの研究成果では、50 kHz 以上のサンプリング周波数で録音しても、人間にとって意味のある音声情報は得られないことが明らかになっています。

 日本を代表するオーディオメーカーの1つである TAD(Technical Audio Devices Laboratories,Inc.)の CSTドライバーのように 250 Hz から 100 kHz まで再生可能なドライバー・ユニットを搭載するスピーカーシステムであっても、100 kHz まで再生可能とすることに目的があるわけではなく、可聴周波数帯域(20 Hz 〜 20 kHz)における同軸型ドライバー・ユニットの位相特性や指向特性を改善するために広帯域化しています。

 TAD でスピーカーシステムの開発を担当されているエンジニアのお話では、100 kHz は数値目標ではなく、ダイアフラムのレゾナンス(共振)の両端のうち、可聴周波数帯域(20 Hz 〜 20 kHz)側に共振スパイクが出ない、フラットな周波数特性を追求した結果、測定してみると 100 kHz まで再生可能になっていたというのが事実であるそうです。また、プログラムソースに含まれる音声情報は可能な限り、そのまま再生することを基本方針としているため、スピーカーシステムの再生周波数範囲を意図的に制限することはないと仰っていました。そして、ハイレゾに何等かの効果があるのかどうかについては分かりませんが…とも。

 高音域側が広帯域化すると低音域側の再生音が改善されるケースもあるけれど、反対にハイバランスになって低音域の再生に悪影響を及ぼすこともあり、高域特性を伸ばすことが諸刃の剣になることは、老練なオーディオファイルであれば自明の事実として認識されていることでしょう。同社では、営業部門からの要請で 60 kHz が上限であった、あるスピーカーシステムの高域特性を 100 kHz まで拡大したこともあるそうですが、結果は思わしいものではなく、最終的に 60 kHz に戻されたそうです。


TAD Reference One Limited Edition TAD-R1TXLTD

      TAD(Technical Audio Devices Laboratories,Inc.


 前述した通り、100 kHz の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を電気信号に変換できるマイクロフォンで収録しているとは限りません。測定用ではない 100 kHz まで収音可能なマイクロフォンが製品化されるようになったのは、広帯域な音楽収音に対する要望が高まった 2000 年代以降のことであり、ハイレゾ対応のマイクロフォンで収録することは、今日でも一般的ではありません。そして、ハイレゾ音源の再生に 100 kHz まで再生可能なスピーカーシステムは必要ないのです。

 このことは(1)JEITA(電子情報技術産業協会)、(2)JAS(日本オーディオ協会)によるハイレゾオーディオの定義を見ても明らかです。


 ▢ JEITA(電子情報技術産業協会)

   ビットレート、サンプリングレートのいずれか一方がコンパクトディス
   ク(CD)フォーマット(16 bit / 44.1 kHz)よりも上位のフォーマット
   であること


 ▢ JAS(日本オーディオ協会)

   (1)24 bit / 96 kHz以上のフォーマットであること
   (2)40 kHz 以上の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)が再生で
     きること


 どちらの定義も高音域については、コンパクトディスク(CD)フォーマット以上の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)が再生可能であることを要件としていますが、100 kHz まで再生可能であることを必要条件とはしていません。

 低音域については、コンパクトディスク(CD)フォーマットと同等である点に注意してください。とりわけスピーカーシステムに関しては、一部の例外を除けば 100 Hz 以下の低音域(100 Hz 〜 20 Hz)をフラットに再生できる製品は存在しないと言っても過言ではありませんから、「ハイレゾオーディオロゴ対応機器」認定による商品の差別化が難しいため無視しています。つまりローエンドの拡張は大型化・重量化・高額化の3重苦となり、販路拡大に貢献しないため、自らの首を絞めるような悪手は打たないわけです。

 プロのインストーラーが手掛ける 100 インチを超えるプロジェクタースクリーンのホームシアターであっても、映画館向けの Meyer Sound X-800C(サブウーハー)のように、総重量が 100 kg を超える大型のサブウーハー(18 インチドライバー ×2)をインストールするところまでは想定していないでしょう。

Meyer Sound X-800C


 ◎ Meyer Sound X-800C(データシート) ※ X-800C(生産完了品)


 一般的な住宅では、床の積載荷重は ㎡ あたり約 180 kg に耐えられることが建築基準法で定められており、物理的に設置可能であるとは思いますが、この基準はあくまで、床面が多少歪んでも「抜け落ちない」強度を示すものであり、構造体として床面の不要振動を抑え込めるレベルの強度までは求められていません。仮に実現したとしても、窓がない防音扉付きの地下室でもなければ、近所迷惑になるだけです。

 オーディオで最大の課題は低音の処理です。理想的な室内音響特性を実現しながら、効果的に音響エネルギーを減衰させて低周波騒音を防止することは、とても困難な課題です。低周波騒音の防音対策は複雑であり、音響壁による吸音処理が十全に機能するとは限りません。

 木造住宅であれば、音の振動が外部に伝播することは避けられず、鉄筋コンクリートの住宅であれば、室内の音響エネルギーが減衰しないため、適切な吸音処理を施さないと、とても聴けたものではない音響特性になります。また、低周波は思いがけないところまで伝播しますので、耳では聞こえていなくても、近隣住民に健康被害を及ぼす可能性もあります。

 オーディオファイルにとって、低音の処理は永遠の課題であると言っても過言ではありません。バブル経済の象徴的存在であったディスコ『ジュリアナ東京』(JULIANA'S TOKYO British discotheque in 芝浦、東京都港区芝浦 1 - 13 - 10、1991 年 - 1994 年)、クラブ『GOLD』(ゴールド[通称:芝浦GOLD]、東京都港区海岸 3 - 1 - 6、1989 年 - 1995 年)が芝浦運河の周辺にある倉庫を改装して営業されたのは、(1)交通アクセスが良好で、(2)居住区から離れた大規模屋内空間であり、(3)窓がなく、壁に適度な厚みがある構造の建物なので防音性能を確保できたからです。

 discothèque(ディスコテック)のようなミュージック・ホールは、1980年代の伝説的なディスコ『六本木 XANADU』(キサナドゥ、東京都港区六本木 3 - 13 - 12、1979 年 - 1980 年)がそうであったように、騒音対策が立てやすい地下空間で営業するのが王道です。”地下アイドル” という言葉もライブアイドルの活動拠点となったライブハウス『四谷サンバレイ』(現在は『四谷 Honey Burst』に店名を変更、東京都新宿区市谷本村町 3 - 19 千代田ビル B-1)が地下1階で営業していたことが由来になっています。

 TVアニメ『サクラクエスト』(P.A.WORKSの「お仕事シリーズ」第 3 弾、2017 年放送)に登場する鈴原廉之介(すずはら れんのすけ、文化人類学者、元大学教授、CV:中 博史)は、山奥の寒村(蕨矢集落の間野山)に移住した一軒家の独居老人ですから、心置きなくボリュームを上げて、クラシック音楽を聴いていますが、一般的な住宅地では、近隣への配慮なしに大音量で音楽を楽しむことはできません。環境省が示す住宅地の騒音基準は昼間で 55 dB 以下、夜間で 45 dB 以下と定められており、これ以上の音は騒音とされています。

 ちなみに音響機器の音は「生活騒音」に分類されますが、法律による規制は限られています。通常、自治体の条例による規制に罰則規定はありません。また、軽犯罪法第1条14号に規定された静穏妨害(静穏を害し近隣に迷惑をかける行為)は「公務員の制止をきかずに」というのが構成要件になっていますから、この行為(人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出す行為)を止めさせるためには、第一の段階として、司法警察職員(警察官など)に要請して「制止」してもらう必要があります。

 日本のメーカーが 40 kHz から 100 kHz まで再生可能な物理的性能にこだわるのは、それを商品のアピールポイントにしているからでしょう。そもそも「20 kHz 以上の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)が再生できるから高音質」と銘打って、制作時の録音フォーマットでハイレゾ音源を配信している以上、少なくともサンプリング周波数が 192 kHz(ナイキスト周波数:96 kHz)のハイレゾ音源で再生可能な周波数帯域はカバーしないと整合性が取れないため、商売上の不利益になると判断しているのだと思います。

 代表的な海外メーカーの製品でも JBL のフラッグシップモデル Project Everest DD67000(生産完了品、受注最終日:2025 年 6月 30日)のように 60 kHz までカバーするコンベンショナルなスピーカーシステムもあります。これはプロの現場では 24 bit / 96 kHz 以上のフォーマットで音響制作・収録することが一般化しており、現状に対応する必要があること。スピーカーシステムのトータルバランスを考慮すれば、60 kHz を上限とするのが適切だと判断されているのでしょう(先代の JBL Project Everest DD66000 は 40 kHz が上限)。15インチ(直径:380 mm)のウーハーユニットをチャンネル当たり2基搭載する強力なスピーカーシステムであっても、100 kHz まで高域特性を伸ばすことにメリットはないということです。

JBL Project Everest DD67000

 
    ◎ JBL Project Everest DD67000 ※ 生産完了品(在庫限り)


 海外のメーカーはハイレゾ音源の 20 kHz 以上の周波数帯域には(1)量子化ノイズが多く含まれ、DAC、アンプ、スピーカーに複数の大きな信号が入力されると(2)相互変調歪(Inter Moulation Distortion:IMD)が発生することを問題視しているように思います。

 相互変調歪(Inter Moulation Distortion:IMD)が発生すると、本来は存在しない倍音成分が付加されて、可聴周波数帯域(20 Hz 〜 20 kHz)に影響を及ぼし、音が混濁するなどの弊害が生じます。つまり、科学的見地からすれば、可聴周波数帯域(20 Hz 〜 20 kHz)外の ultrasonic(ウルトラソニック:超音波)を不用意に信号系に入力することは有害でしかなく、高品位な再生を実現するためには、24 kHz を超える周波数帯域をロールオフすることが望ましいと判断しているわけです。これらのことは常識的に知られており、ライントランスで可聴周波数帯域(20 Hz 〜 20 kHz)外の音声信号(ノイズ)を遮断する手法などは、アナログ時代から多用されてきました。

 このような事例を集めて思慮分別すれば、プロの音楽家として山下達郎氏が行った主観評価には、一定の妥当性があるものと理解できます。筆者の経験から述べても、48 kHz 以上のサンプリング周波数で録音すれば、間違いなく品質が向上するわけではなく、本来の音の質感を損ないかねない変化が起こります。

 これはコンパクトディスク(CD)からリッピングした音源を(1)SoX Resampler、(2)Secret Rabbit Code(別名:libsamplerate)などでアップサンプルしても感じられる質感の違いです。高音域の分解能が向上して、高密度な音になりますが、硬い音の角は取れて、アタック音の重心深度は上がり、音の芯も微妙に外れて、本来の音作りから乖離した細い骨格の造形感になります。自動車のデザインコンセプトに例えれば、「ボクシー」なデザインが「スクワークル」になるようなものです。


 ※ スクワークル:スクェア(四角)とサークル(円)の中間形となる角が
   取れたデザイン。自動車の FIAT(フィアット)Panda(パンダ)が代
   表例


 レコーディングやコンパクトディスク(CD)の制作過程で 24 bit / 96 kHz 以上の録音フォーマットが選ばれるのは、編集やイコライジングでビット落ちすることを見越しているからであり、最終的にダウンコンバートして 16 bit / 44.1 kHz に落とし込むまで、一定水準の音声品質を維持するべく細心の注意が払われているのです。フォーマットコンバートは音質劣化の大きな要因ですが、そのことを理由として「16 bit / 44.1 kHz だから音質が悪い」と主張するのは筋違いです。


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