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そして地域医療が崩壊していく音が聞こえ始めた。怖いもの見たさではなく前に進むために覗きこんでみる。

ネガティブな発信ではなく、ポジティブな発信で社会を変えていきたい。
と思って発信しているつもりなのですが、ポジティブなストーリーのプロローグ的にネガティブな現状を書いたnoteが過去イチ読まれていて、いいねやスキを集めている。複雑な気持ち。

みんなネガティブストーリーが好きなのか?いや、ネガティブな現状を目の当たりにしている仲間や、気にかけている人たちがたくさんいるということなのだろう。
というわけで、今回も崩壊現場のレポートです。


ここ数年で出会った、地域医療崩壊の音。少し紹介していきたいと思います。

ものがたり① 住民にはできるだけ病気になってもらいたい

縮小していく地域の公立診療所の所長ドクターが、僕のところに相談に来ました。

「今のままでは、診療所の利用者が減っていき赤字は拡大。来年には診療所閉鎖の話まで出てきている。
このままでは地域医療を守れない。どうしたらいいと思う?
やっぱり、診療所の利用者が増えないことには赤字は続くわけだから、住民にはできるだけ病気になってもらって、診療所の利用率を上げてもらいたいんだよ。」

・・・それ、本気で言ってる?
村人の健康を守りたくて診療所に赴任した医師が、村人の病気を望んでいるって矛盾してる。

「!」

↑矛盾にこの瞬間に気づいたみたい。

良い方法がありますよ。
まずあなたが村を去る。医師の人件費がいちばん重いから。
週に1回だけの診療日にしてその日にまとめて午前外来、午後訪問診療。
村営の訪問看護ステーションを起ち上げて、医師がいない日は看護師チームが村の医療を守る。あなたの大切な仕事は訪問看護指示書をしっかり書くことと看護師チームとのコミュニケーション。
看護師チームは余裕があれば街の保健室的な活動もやれるといいね。
あなたが村にいない時に、医師の診たてが必要な時はオンライン。
看護師が研修を受けて看取りもオンラインで実施もできる。

https://www.med.or.jp/dl-med/etc/mitori_guidelines.pdf

あなたは村から2時間の街の医師不足の病院で勤務。週1回の診療所勤務の日は、村の民宿に泊まって、野菜とかはそこで買いだめして街に戻る。
どう?

「・・・・・・・
 そういうことじゃないんだよなぁ。」

今の村でのゆったりおしゃべりできる外来が続けられたらいいなぁ。って思ってるんでしょ。
で、公立診療所の定められた高い給料もらえる。
地域医療の崩壊、そこからですよー。変えなきゃ変わらない。
気づいた人から行動するしかない。


ものがたり② やり手の院長就任し病院は黒字化、町長も大変喜んでいる

そこは超高齢・人口減少地域の町。数年来の公立病院の赤字が続いていた。
そこに赴任した新しい院長先生がやり手で、外来運営や病棟運営の方針を刷新。黒字化したという新聞記事。
新聞記事では、院長と町長が笑顔で写真に写っている。

病院の黒字化は、病床稼働率をあげられたということ。
つまり、入院患者を以前より多く確保できるようになったということ。
この町は超高齢化し、人口はどんどん減っている。
そんな中、どうやって入院患者を増やしたのだろう。新しい医療の仕組みや救急体制を構築して、近隣市町村からの入院患者を増やしたのだろうか。
この地域は、周辺市町村もそれぞれが公立病院を持っていてそれぞれが経営難だという。

患者の取り合いをして黒字化を目指すのが、地域全体としては良いのだろうか?
ベッドが少ない地域なら外来に通いながら治す病気でも、ベッドが空いていると入院。
ベッドが少ない地域なら5日で退院する病気でも、ベッドが空いている地域では7日入院。
入院しやすく、丁寧に、時間をかけて診てくれる。と、住民満足度もあがるかもしれない。

けど、入院回数や期間が多くなると、結果的に体力が落ちたり、弱ったりする高齢者は多い。病院の会計は黒字になっても、その町の医療費の支出がそれよりも大きくなっていたら、結果的には喜べない。
そんな町ではどういう作戦が本当はいちばんいいのか、考えるきっかけを 黒字化と共に失ってはいないだろうか。


ものがたり③ 認知症のいない街

「この地域では、長谷川式で20点をきったら入院するんです」

長谷川式=改訂長谷川式簡易知能評価(HSD-R)は30点満点の認知症をスクリーニングする検査。20点をきると認知症疑い、とされる。
確かに、認知機能の低下により、日常生活に不便や支障が出始める点数。だけれど、
僕たちの地域の現場では、20点をきっても家で過ごしている人はたくさんいる。
銀行や役場での手続きに一人で行くのは難しいけど、家族やサポートする人がいればできる。
時間や季節の感覚はわからないときもあるけど、今までやってきた家事は平然とこなして美味しい煮物を自分でつくって暮らしている。
デイサービスや訪問介護を使いながら一人暮らしをしている人たちもいる。

認知症が軽度でも、社会から隔絶され入院してしまう・・それってとても怖いことだと思うけど・・
なんで?

この地域では、人口減少が進んでいます。
でも、昔から地域を守ってきた精神科病院の病床数は維持されたまま。縮小するのは政治的に難しいそうです。
相対的に、精神科病床の多いこの街では、
相対的に、精神疾患の方の入院がしやすい(入院させられやすい)
相対的に、若者はとても少ない地域なので
相対的に、高齢者の精神疾患の方が、とても入院しやすい(入院させられやすい)
結果的に、認知症での入院のハードルは下がる。
下がりすぎて、普通に暮らせている人の足元にまで下がった入院のハードルが迫っている

年齢をかさねれば、誰でも認知症になり得る。
ほかの地域では、認知症になっても住み慣れた街で暮らせるためのまちづくり、が進んでいたりもする。
同じ国内で、こんなに違う世界もあるんだな、と考えさせられます。


ものがたり④ 地域医療を守るために地域医療を守っていられない

わかりやすい矛盾。

地域医療の現場は変化し続けている、だから、
ただ往診をするだけじゃない、地域づくりや急性期医療にも対応する在宅医療チームや、
人口過疎地域をカバーする巡回診療やオンライン診療の仕組みづくりやその実践チーム、
地域を担う医師の新しい視点や働き方を開発するチーム、
そんな動きを率先して作っていくべきではないでしょうか?

と、とある総合診療チームのボスに話しかけたら

「今はそんな余裕はない。①②③のような診療所や病院に医師を回すので精一杯なんだ」

ひゃー!

「超高齢化」という、慢性型災害が日本を取り囲んでいます。
地震のような急性型災害だけでなく、この慢性型災害に丁寧に柔軟にすばやく取り組んでいく必要があると思います。


ものがたり⑤ 行き詰まった地域医療機関がM&A上場会社に相談

先行きがなく「地域のために」という合い言葉のみで根性でがんばっている田舎の民間医療機関は行き詰まっている。

引き継ぎ手もいなくなったのか、地域を跨いで県を跨いで「売りに出ている」情報が回ってくる。

資本主義思考の行き過ぎで行き詰まった地域医療の最期の引導を資本主義に委ねるしかない田舎の医療機関。

売れても売れなくても地域の人が医療を選べても選べなくても、上場会社は困らないしうまくいけば儲かるだけの立ち位置。

ほかに相談の仕方がなかったのだろうか。


地域医療の現場に「崩壊」「突然の倒産」以外の縮小の仕方・閉じ方、が必要です。

カンフル剤と延命治療の末の絶望死だけでなく、緩和ケアの末の大往生、が必要です。


暗闇からの方が光を見つけやすい、はず

このものがたりたちは、僕がそれぞれの地域で実際に見聞きしたものです(一部、複数の見聞きしたものを併せていたり、地域情報を言い換えている部分もあります)
深く調査をすると詳細が異なっていたり、別の立場の人からは別の見解もある話だとは思います。
その事象そのものの良い悪いよりも、こういう話が聞こえてくること、そしてそれは「嘘でしょ」と一蹴できないくらいリアルに迫ってきていること。をお伝えしたくまとめました。

先日の介護保険崩壊最前線の話でもいろんな反響がありましたが、
僕が言いたいことは、暗闇の方が光を見つけやすい、ということ。
きっと、こんな 介護や医療の崩壊最前線だから気づけることの中に、良い方法があるはずだ、という確信です。

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