映画『blank13』感想
俳優の斎藤工が「齊藤工」名義でメガホンを取った長編監督デビュー作。放送作家のはしもとこうじの実話を基にした家族の物語が描かれる。13年前に突然失踪した父親の消息が判明した。しかし、がんを患った父の余命はわずか3カ月。父と家族たちの溝は埋まることなく、3カ月後にこの世を去ってしまう。葬儀に参列した人びとが語る家族の知らなかった父親のエピソードの数々によって、父と家族の13年間の空白が埋まっていく。
含み笑いのまま泣いてしまった。
それもそうだと納得した。
もともとはコントとして作る予定だったらしく、葬儀のシーンはほぼアドリブだとか。でも「どこまでが実話なんだろう?」と思うほど、クセ強なエピソードとキャラで大渋滞だった。
起用されたキャストの方々も、そもそも強いんだと思う。
笑いに昇華しているけれど、一応葬儀である。
でも最後には胸がじんわりとして、「家族ってこういうもんだよな」という余韻が残った。
コント前提の部分以外に過去の回想などを加えて拡張していて、
よりユーモアの要素が引き立ったのかもしれない。
拡張部分は余白・距離が多く淡々としていて、言葉よりも「気配」で感情が読み取れるような表現だったと思う。知らんけど。
人物の位置、表情、佇まい、間合い、小物。
それにセリフがあっても言葉の奥が見えるようだった。
演技の絶妙さもあるのかも。
大嫌いだったのに、憎み切れない…そんな複雑な感情が記憶を緩やかに優しくしていき、父の姿を新たに形作る。
そして13年の空白を埋めていくという感じだった。
亡くなったあとに、身内以外から家族の想いや人となりを知ることって結構ある。
私はコロナ禍で両親を相次いで亡くした。(コロナが原因ではなく)
そしてどちらの葬儀にも出られなかった。
当時はまだ韓国に住んでいて、飛行機がすぐに取れなかったり、飛べても隔離期間があったりしたためだ。子連れだったし、状況的に無理だった。
葬儀後に一時帰国をして色々と後始末をする間、親の知らない一面を発見することもあった。
母は手帳に毎日六曜を書き込んでいて、
「多分、認知症が怖かったんだろうな。」とか。
父が取りまとめている趣味の会のメンバーから電話がかかってきて、ずいぶん頼りにされていたんだなとか。
どんなに尽くしても後悔は残るものだけど、当時コロナでずっと一時帰国ができなかったから、どんな思いだったのか、どう過ごしていたのかと、いまだに気になることはある。
きっと、それぞれの形で家族に思いを馳せるんだろうなと感じる作品だった。
とあるシーンを見て思い出した余談。
子供の頃、親とどなたかのお葬式に参列し、
お焼香している人たちを後ろから眺めていた。
自分の番が来た時、お焼香を食べてしまった。
(みんな食べているように見えた)
