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グラフを作らずに増減を見せる|セル内で数字を可視化する5つの技

「で、結局どこが悪いんですか」

月次の資料を持っていったとき、そう言われたことがあります。A4で3枚、グラフは12個。夜中までかけたので、正直なところ少し褒められるつもりでいました。

でも相手の手は止まっていました。当然です。グラフが12個あるということは、読む人は12回「これは何のグラフか」を読み取り、そのうえで頭の中で並べ直さないといけない。作った側の親切が、そのまま読む側の宿題になっていたわけです。

翌月、グラフを1枚に減らしました。全体の売上推移だけを折れ線で置き、残りは表の中で語らせる。数字の横に細い折れ線を入れ、大小は横棒の長さで示し、前月比には矢印を付ける。A4は1枚半になりました。返ってきたのは「あ、この部門だけ落ちてますね」。こちらが説明する前に、相手が先に見つけてくれた。

はじめまして、税理士ロキと申します。現役の税理士です。ふだんは中小企業や個人事業主の税務をやりながら、Excelと格闘したりAIを仕事に使い倒したりしています。「グラフを増やすほど伝わらなくなる」場面には、本当によく出会います。

この記事は全部無料です。操作手順はすべてWindows版のMicrosoft 365(Excel)を前提にしています。バージョンによってボタンの名前が少し違うことはありますが、置いてある場所と考え方は同じです。

この記事でわかること

  • セル内に折れ線を描くスパークラインの作り方と、軸を揃えないと嘘のグラフになる話

  • データバーで「棒の長さが値に比例しない」問題を直す設定

  • カラースケールを使ってはいけない場面

  • アイコンセットで前月比±5%を正しく切るための、種類の設定手順

  • REPT関数で作る、印刷とコピペに強い手作り棒グラフ

  • 5つの使い分け早見と、資料を出す前のチェック6項目

技1|スパークライン:セルの中に折れ線を入れる

12か月分の推移を、1つのセルの中に細い折れ線で描く機能です。表の右端に「推移」列を足すだけで、全行の動きが縦に並びます。

  1. 表示したいセル(たとえばN2)を選ぶ

  2. 「挿入」タブ →「スパークライン」グループ →「折れ線」

  3. 「データ範囲」に元の数字の範囲(B2:M2など)を入れる

  4. 「場所の範囲」が選んだセルになっているか確認して「OK」

  5. 下方向にフィルコピーすれば全行に入る

頂点のマーカーを出す。 セルを選ぶとリボンに「スパークライン」タブが出ます。「表示」グループの「頂点(山)」「頂点(谷)」にチェックを入れると、最大の月と最小の月に点が付きます。「マーカー」は全月に点が付いて煩雑なので、山と谷だけで十分です。

軸を揃える。これが最重要です。 初期設定では縦軸の最小値・最大値が行ごとに自動で決まります。つまり売上100万円で±3万円しか動かない行と、売上10万円で±8万円動く行が、同じギザギザに見える。端的に言って嘘のグラフです。

  1. 揃えたいスパークラインをまとめて選ぶ

  2. 「スパークライン」タブ →「グループ」グループ →「軸」

  3. 「縦軸の最小値のオプション」で「すべてのスパークラインで同じ値」を選ぶ

  4. 「縦軸の最大値のオプション」でも同じものを選ぶ

これで行同士の振れ幅を目で比べられます。逆に、商品ごとの季節性のように「行の中の波形だけ」を見たいなら自動のままで構いません。どちらを選んだか自分が分かっていることが大事です。

技2|データバー:大小を横棒で見せる

金額の列に、値の大きさに応じた横棒を重ねます。範囲を選んで「ホーム」タブ →「条件付き書式」→「データバー」→ 色を選ぶだけ。ただし初期設定のままだと、高い確率で誤解を招く表になります。

落とし穴1:棒の長さが値に比例していない。 初期設定は最小値も最大値も「自動」=「範囲内のいちばん小さい値」を棒の起点にします。100・110・120を並べると、100の棒はほぼゼロ、120は満杯。実際は2割しか違わないのに、20倍違って見えます。

  1. 範囲を選んだまま「条件付き書式」→「ルールの管理」

  2. データバーのルールを選んで「ルールの編集」

  3. 最小値の「種類」を「数値」にして、値に0を入れる

  4. 複数の表で棒を比べたいなら、最大値も「数値」にして共通の上限を入れる

最小値を0に固定した瞬間、棒の長さが素直に金額の比になります。

落とし穴2:数字が棒に埋もれる。 対処は色を淡くするか、数字を消すか。消す場合はルールの編集画面の「棒のみ表示」にチェックを入れ、隣に数字の列を別に置きます。社内で数字を拾って使う列なら、棒を淡くして数字を残すほうが親切です。

負の値があるとき。 同じ画面の「負の値と軸の設定」で軸の位置を選べます。「自動」だとデータ次第で軸が動くので、僕は「セルの中間点」に固定します。プラスとマイナスが左右対称に伸び、月ごとに軸がずれる事故がなくなります。

技3|カラースケール:面の濃淡で「どこが熱いか」を見せる

縦に月、横に部門といった二次元の表を色の濃淡で塗ります。範囲を選んで「条件付き書式」→「カラースケール」。配色の選び方には理屈があります。

3色スケール(赤・黄・緑)は「良し悪しの比較」用。 中立点があるので、達成率・前年比・利益率のように高いほど良い数字に向きます。2色スケール(白→青)は「密度」用。 時間帯別の件数のように、多いか少ないかだけを見たいとき。良し悪しを含まない数字に赤と緑を使うと、読む人が勝手に「赤=悪い」と受け取ります。

使ってはいけないのは、値の桁が大きく違うときです。 部門別売上でA部門だけ3億円、ほかの9部門は2,000万円前後という表に3色スケールをかけると、A部門だけ真っ赤で残りは全部ほぼ同じ薄い色になります。本当はその9部門に1,200万円と3,100万円の差があるのに、完全に潰れる。色を最小値〜最大値の間で線形に割り振る仕組みなので、外れ値が1つあるだけで残りが全滅します。

対処は3つ。順位で塗る(RANK.EQ関数の順位列を塗る)、比率に直して塗る(前年同月比や構成比なら分母が揃う)、外れ値を表から外して脚注に置く。カラースケールが効くのは「同じ単位・同じくらいの桁の数字が並んだ表」だけと思っておくと、事故が減ります。

技4|アイコンセット:前月比±5%で矢印を切る

前月比の列に上向き・横向き・下向きの矢印を付けます。3値に丸めるので、読む速度がいちばん上がる見せ方です。

ここでほぼ全員がつまずくのがしきい値です。「プラス5%以上なら上向き」にしたいのにそうならない。原因は、「種類」で「パーセント」を選んでしまうことです。

Excelの条件付き書式でいう「パーセント」は、セルの値が5%かどうかではありません。その範囲の最小値から最大値までを100としたときの5%の位置という意味です。データが入れ替わるたびにしきい値が動く、まったくの別物です。

正しい手順です。前月比が「1.05」「0.98」の形で入っている前提で書きます(表示形式がパーセントでも、中身の値は1.05です)。

  1. 前月比の列を選ぶ

  2. 「条件付き書式」→「アイコンセット」→「3つの矢印(色分け)」

  3. もう一度「条件付き書式」→「ルールの管理」→ そのルールを選んで「ルールの編集」

  4. 上向き矢印の行を「値:1.05」「種類:数値」、演算子は「>=」

  5. 横向き矢印の行を「値:0.95」「種類:数値」、演算子は「>=」

  6. 下向きは残り全部(自動で埋まります)→「OK」

増減率で持っている表(プラス5%を0.05とする形)なら、入れる値は0.05-0.05。「5」「-5」で持っているなら5と-5です。しきい値には、そのセルに実際に入っている数値と同じ形の数を入れる。これだけ覚えておけば間違えません。

数字を消して矢印だけにするなら、同じ画面の「アイコンのみ表示」にチェック。そして原価率や残業時間のように「減ったほうが良い」指標には「アイコンの順序を逆にする」を押します。これを忘れて、原価率が下がっているのに赤い下向き矢印が並ぶ資料を作ったことがあります。

技5|REPT関数:印刷とコピペに強い手作り棒グラフ

条件付き書式を使わない方法です。同じ文字を繰り返して棒に見せます。いちばん短い形はこれ。

=REPT("■",ROUND(B2/1000,0))

B2が5,000なら■が5個。1,000円あたり1個の棒です。ただし実務では、桁が大きいとセルからあふれ、B2が負の数だとエラー(#VALUE!)になります。両方つぶした形がこちらです。

=REPT("■",MAX(0,MIN(20,ROUND(B2/MAX($B$2:$B$13)*20,0))))

範囲全体の最大値を20個分としてスケールし直し、0未満と20超をカットしています。B2:B13は自分の表の範囲に置き換えてください。表をまたいで比べたいなら、MAX($B$2:$B$13)を共通の固定値に変えます。

仕上げのコツは2つ。フォントを等幅にする(「MS ゴシック」など。でないと行ごとに棒の長さがずれます)。8ポイント前後のグレーにする(数字の邪魔をしない補助線になります)。

利点は、印刷やPDF化で崩れず、値貼り付けでメールやチャットにも棒ごと貼れること。弱点は1個刻みで5.4と5.6が同じ長さになることなので、ざっくり見せる用途と割り切ってください。

持ち帰り|5つの使い分け早見と、出す前のチェック

使い分け早見

  • 時間の中でどう動いたかを見せたい → スパークライン。 月次推移、日次件数。軸を「すべてのスパークラインで同じ値」に揃える

  • どれが大きいかを見せたい → データバー。 部門別売上、費目別金額。最小値の種類を「数値・0」に固定する

  • どこが濃いかを面で見せたい → カラースケール。 曜日×時間帯のマトリクス。桁が大きく違う表には使わない

  • 良くなったか悪くなったかを見せたい → アイコンセット。 前月比、予算達成率。種類は必ず「数値」。減ったほうが良い指標は順序を逆にする

  • 印刷・PDF・コピペ前提 → REPT関数。 紙で配る資料、メールに貼る報告。等幅フォントとセットで

共通の原則がひとつ。1枚の資料で使う可視化は2種類まで。 全部いっぺんに使うと情報が多すぎて、結局「で、どこを見ればいいの」に逆戻りします。僕はたいてい「推移はスパークライン、良し悪しはアイコンセット」に固定しています。

出す前のチェック6項目

  1. グラフは1枚に1つになっているか。2つ目以降は表の中に入れられないか

  2. スパークラインの軸は揃えたか。揃えていないなら、行同士は比べられない

  3. データバーの最小値は0固定にしたか

  4. 色だけで意味を伝えていないか。赤と緑は区別しにくい人がいるので、矢印や数字と併用する

  5. 「矢印は前月比±5%で切っています」の1行が表の下にあるか。これだけで質問が半分に減ります

  6. 条件付き書式の適用先が今の表と合っているか。行を追加したのに色が付かない事故はよく起きる

まとめ

グラフを12個貼った資料は、これからも作られ続けると思います。作る側は誠実にやっているつもりだからです。でも、読む人の目は1組しかありません。

明日やる最小の一歩は、いつもの集計表の右端に「推移」列を1本足して、スパークラインの折れ線を入れ、軸を「すべてのスパークラインで同じ値」に揃えること。5分で終わります。次の資料で相手が先に何かを見つけてくれたら、この記事の目的は達成です。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


税理士ロキ|現役税理士。ふだんは中小企業や個人事業主の税務をやりながら、AIを仕事に使い倒しています。会社員が損しないお金の話と、明日から使えるAI仕事術を発信中。フォローしてもらえると更新の励みになります。

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