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家族について、わからないまま考える / ドラマ『ペアレントフッド』

まず、いままで私の日記の中だけで展開してきた映画・ドラマの感想を、人様が見えるかたちで残しておくという試みは生まれてはじめてであり、非常に恥ずかしい。
病院でまさか服を脱ぐことになるとは露も思わず、捨てるタイミングを完全に逃した、審美性:0  安心感:100のよれた下着を身に付けて行ったが、結局抜き打ちで服を脱ぐ検査にぶち当たってしまったあの時くらい恥ずかしい。
それにしても、よれた下着ってどうしてあんなに着心地が良くて安心するのかね?
安心感が尋常ではない。それも、人をダメにする種類の安心感。

さて、今日書いていく感想は、そんなよれた下着と甲乙つけ難いくらい安心感を与えてくれる、家族についてのドラマ『ペアレントフッド / Parenthood』(2010)です。

2026年5月現在、Netflixで配信中。

アメリカでは2010年の放送当時からとにかく大人気で、S6まで続いた伝説のホームドラマらしい。こちらも同じくアメリカで根強い人気を誇る映画『バックマン家の人々 / PARENTHOOD』(1989)がドラマのベースになっているとのこと。

『バックマン家の人々』には、
ラッパーやジョーカーで世間を騒がせる前の
ホアキン・フェニックスが出演。
ジョン・ウィックになる前のキアヌ・リーブスも
シレッといるよ。麗しい……

出演者も豪華で、『ギルモア・ガールズ / Gilmore girls』でおなじみローレン・グレアムや、『ブラックパンサー / Black Panther』のマイケル・B・ジョーダン、Netflixで人気の『13の理由 / 13 Reasons Why』のマイルズ・ハイザーなどなど…海外ドラマを割と観る方なら「あ、観たことある!」とピンとくる出演者が多いでしょう。(個人的にはSATCのエイダンが、ゲスト出演だが楽しそうに歌唱していたのを観れてご満悦だった。)

だが、日本では16年の時を経て待望のNetflix配信!という事で、「知る人ぞ知る」扱いされているドラマだ。
現にFilmarksでもまだ作品登録がされておらず、運営に登録リクエストを送るなどした。
(5/28追記:5/25にFilmarksで追加されてた!ヤッター!運営さんありがとう!)

正直、サムネや予告を見ても登場人物はみんな地味だし(失礼)、心躍るキャッチーな印象はなかった。
今まで私が視聴してきたザ・グレイトアメリカンホームドラマといえば、『フルハウス』や『ハンナ・モンタナ』『モダン・ファミリー』あたりの(ラインナップで歳がバレる)、“でっかいオレンジジュースとミルクをでっかい冷蔵庫から出して常飲し、底抜けに明るく家族みんなで冗談を言い合い、想像の斜め上をいくドジをやらかしても、しっかり話し合ってハグすれば全部解決!オレたち最高のアメリカンファミリー!”というシットコムに近いドラマばかり。
なので、この普通の落ち着いたトーンに自身の生粋のドパガキ気質がマッチするのか非常に不安だった。

これが私の思う“𝑻𝑯𝑬 𝑮𝒓𝒂𝒕𝒆 𝑨𝒎𝒆𝒓𝒊𝒄𝒂𝒏 𝑯𝒐𝒎𝒆 𝑫𝒓𝒂𝒎𝒂”
見るからにしてこの後アホな展開になりそうである。

しかし、その不安は全くの杞憂だった。
とにかくストーリーがおもしろい。おもしろすぎる。
何がおもしろいかって、家族や友人・恋人との「生活」に脚色や嘘が全くない。とことん誠実なのである。ドラマ内で発生するハプニングや持ち上がる問題が残酷なまでにリアル。「つい先日、我が身にもこういう事あったよな…」と、ドラマ視聴中に自分の生活に突如引き戻されるくらいリアルなのだ。

これに時間を費やしてくれている読者も、今、ちょっとばかし家族や恋人・友人との過去のすれ違いや問題に思いを馳せてみてほしい。

思い出してる間、
ぬいぐるみに情け容赦のない高橋一生をどうぞ。


どうですか思い浮かびましたか?
はい、あなたがいま思い浮かべたそれ、全部このドラマに盛り込まれてます。断言します。
つまりそういうことです。

私たちの、誰にも見られていないし誰にも言っていない喧嘩や問題のあれやこれ、そして過去の恋愛のあれやこれも全部、何故かこのドラマの制作陣には全てお見通しで、無断でエピソードに盛り込まれている。(ちなみに私は衝撃のあまり、過去綴った日記がちゃんと自室にあるか2回ほど確認しに行くという常軌を逸する行動に出た。極東の一般人の日記が独りでにハリウッドに行く訳なかろう、とわかっていつつも、確認せざるを得ないくらいの衝撃だった…念の為PCとスマホのカメラも塞いどこ…)

ここまで読んだ勘の鋭い読者であればお分かりだと思うが、このドラマは過去のあれこれだけでなく、これから未来で起こり得る、親やパートナー・子供と一緒に直面するであろう問題も余すことなく淡々と綴られているのだ。恐ろしすぎる。ここまでくるともはや預言書である。
派手な演出も、突飛な展開も何もないんだけれど、どうしても目が離せない。そんな、おもしろさがある反面、底の知れない恐ろしさもあるドラマだ。

唐突だが、私は学生時代成績が良かった。効率よく力を抜くところは抜いて(抜きすぎて本調子に戻るまで時間がかかることもしばしばだったが)、しっかりやるべき事はやり切った。
特に高校時代は「参考書こそが絶対神であり正義」であると盲信し、ボロボロになるまで参考書を読み漁り頭に叩き込んだ。いわゆる中程度の受験パンクというやつだ。

いま振り返ると身も蓋もないが、参考書は参考する以上でも以下でもなかった。まさに名は体をあらわすで、参考書が無ければたしかに知識量は多少下回っただろうが、参考書があったから指定校推薦を勝ち取れたのかというと、決してそうではないだろう。

それと同様、このドラマを観たからといって今後の人生の決断すべてに迷うことなく正しい道を進める!という通行手形が発行されるわけではないが、まちがいなく「参考」にすることは出来るのではないかと思う。
そして、同じようにボロボロの参考書を片手に歩く高校生を見かけると無性に嬉しくなったあの感じのように、このドラマを観ると「自分は、ひとりぼっちでこの悩みに立ち向かってるわけじゃないんだな」と、見えない味方に背中をさすってもらっているような感覚になる。

ここまでなんとか約30年余生きてきたが、結局どんな人を伴侶にすればよかったのか正解はわからないし、長く同棲をしているカップルがどのタイミングで婚約すればいいのかもわからない。そして、子を産み育てるのにベストなタイミングもわからないし(そもそも子がいた方がいいのかもわからない)、どんな心構えをすれば親になれるのかもわからない。そしていずれ来る子の反抗期にどんな備えをしておいて、どう立ち回るべきなのかもわからない。悔しいくらいになんにもわからない。
そして残念ながら、このドラマも人生の諸問題への正解へと導いてくれるわけではない。
そもそも正解なんてないし、「これが正解だ!」と大声で煽る奴がいるのなら、その人はまだわかり合えなさは愛で上書きできると思っているんだろう。

けれども、自分の意志で選んだ回答を正解にしようと日々奮闘する、ブレーバーマン家ひとりひとりは、間違いなくかつての私たちで、これからの私たちだ。

ドラマを観ても、人生の正解は最後までわからなかった。
ただ、それでも誰かと食卓を囲む理由くらいは、少しわかった気がする。

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