はえぎわ「幸子というんだほんとはね」
2月28日、「大大大傑作」と叫ぶ、信頼する劇評家のFacebookを読んで、なんの予備知識もないまま本多劇場に駆けつけた。
口コミで当日券が、売り切れになるというのは珍しい。
久しぶりに劇場に若者が溢れている。
劇団はえぎわ「幸子というんだほんとはね」(作・演出、ノゾエ征爾)を見る。
幕が開いて、本多劇場のバックステージツアーが始まる。
「43年の歴史がある本多劇場は、今まで1万5千本の芝居が上演されてきた、昔は銭湯だった」など案内人の説明がある。
いちいち、13人の男女が「オーン」とうなずく。
目の前には、何もない裸の舞台があるだけ。その舞台で、いくつかの物語が動き出す。
突然、手を繋いで離れなくなった婦人(高田聖子)と青年(串田十二夜)。
謎のノートを拾って、書かれている言葉通りに動いていく拾った女(踊り子あり)と寄り添う人(東野良平)。
書けなくなった絵本作家の笹木(笠木泉)と編集者サシバ(柴田鷹雄)。
撃たれた主夫(町田水城)と介抱する労働者本山(山本圭佑)と猫島(鳥島明)。
おそらく警察と呼ばれている鳥皮(富川一人)と滝口(竹口龍茶)。
渕山(山口航太)という記憶のない男と面倒をみている山男(ノゾエ征爾)。
断片的なエピソードを立体化しようとラクガキ(下田昌克)が懸命にライブペインティングで書き割りを作っていく。舞台の中に下北沢の街が作られていく。抽象的な話がうっすらと見えてくる。
それぞれの悲しみや苦しみが語られる。
「あなたにとって幸せとはなんですか」という問いかけが、芝居のテーマだが、決してわかりやすく見せるわけではない。
バラバラなエピソードが最後の最後でまとまっていく。
演劇でしか見せられない生身の力に圧倒される。
役者が全員で歌い、懸命に観客に語りかける。その熱量に心が動く。
芝居の原点を見たようなカタルシスがあった。
