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推し活は、あなたの心を支えているか、それとも、預けすぎていないか─精神科OTの現場から見えてくること

「推し活があるから、生きていけます」

精神科の現場で、
この言葉を聞くことは、決して珍しくありません。

私はそれを、
軽く否定できたことは一度もありません。

実際、
推し活が“今日を乗り切る理由”になっている人が
たくさんいるからです。

ただ同時に、
少しだけ、立ち止まってほしい瞬間もあります。

それは、
推しが「楽しみ」ではなく
心の置き場所そのものになり始めたときです。


推し活は、悪いものではない

最初に、はっきりさせておきます。

推し活そのものを
悪だと言いたいわけではありません。

  • 日常に楽しみができる

  • 外に出る理由ができる

  • 孤独をやわらげてくれる

これらは確かに、
人の心を支える「作業的価値」

問題は、
推し活が“感情の避難所”を一手に引き受け始めたときです。

心がしんどいとき、人は「外」に預けたくなる

不安、孤独、虚しさ。

これらの感情は、
一人で抱えるには重すぎます。

だから人は、
それをどこかに預けようとします。

  • 仕事

  • お酒

  • ギャンブル

そして今、とても預けやすい場所として
推しが存在しています。

推し活が依存に近づくサイン

精神科の視点で見ると、
境界線は意外と分かりやすいもの。

  • 推しの動きで一日の気分が決まる

  • 推しがいない時間に、強い不安が出る

  • 課金した直後だけ、安心できる

これは「好き」の問題ではありません。

感情の主導権が、自分の外に移っている状態

なぜ、こんなにもハマってしまうのか

推し活が特に強く作用する理由は、
脳の仕組みにあります。

  1. 不安や寂しさが出る

  2. 推しを見る

  3. 一瞬、満たされる

  4. また空虚感が戻る

この「短期報酬のループ」は、
ギャンブルやアルコールと同じ構造です。

ただし推し活には、
「好きだから」「趣味だから」という
社会的な免罪符があります。

そのため、
自分でも気づかないうちに
深く入り込んでしまう人がいます。

特に、影響を受けやすい人がいる

これは人格の問題ではありません。

精神科の現場で見ていて、
特に影響を受けやすいのは、

  • 人との距離感に悩みやすい人

  • 承認される経験が少なかった人

  • 現実世界で役割を持ちにくい人

推しは、

  • 否定しない

  • いつも肯定的

  • こちらを拒まない

心の隙間に、
あまりにもぴったりとはまってしまうのが怖い。

ガチ恋や高額課金の裏にあるもの

「推しに会えないと涙が止まらない」
「生活費より現場を優先してしまう」

これらは
“好きすぎる”から起きているわけではありません。

  • 感情の調整

  • 自己価値の確認

  • 孤独への耐性

それらを、
一人の存在に背負わせてしまった結果です。

「やめさせる」ことが解決ではない

支援の現場で、
推し活を無理にやめさせることはしません。

大切なのは、
推し活を取り上げることではなく、分散させることです。

  • 推し以外の逃げ場を作る

  • 感情を調整できる手段を増やす

  • 現実世界での小さな役割を取り戻す

推し活が「唯一」にならなければ、
依存にはなりにくいんです。

推し活は、心の栄養にもなる

推し活は、
人生を豊かにすることもあります。

ただ一つだけ、
患者さんに問い続けてほしいことがあります。

今、自分の感情の責任者は誰か。

推しを楽しめているのか。
推しにしがみついているのか。

この違いは、
心が苦しくなったとき、
必ず表に出てきます。

立ち止まれるうちに、考えてみてほしい

  • 推し活で日常が少し楽になっている

  • 推し活がないと、日常が崩れそうになる

この2つは、
とても近い場所にあります。

だからこそ、
元気な今のうちに。

推し活を
人生の一部として楽しめているか。
それとも
人生そのものになり始めていないか。

静かに、考えてみてください。

これはまさに、作業療法で言う

病に生きるのか、病と生きるのか

山根寛先生

ですね。

一度立ち止まって考えたい方へ

ここまで読んでくださった方は、
おそらく「正解が欲しい」のではなく、
一度立ち止まって考え直したいのだと思います。

精神科作業療法の現場では、
こうした“グレーな問い”に、
すぐ答えを出さず、
考え続けること自体が支援になる場面があります。

齋藤のシゴトバ
『作業療法士のための思考と実践のネタ帳』
では、
1日14.4分(1%)で読める短い文章を通して、
臨床や支援の見え方を少しずつ整えています。

「分かりやすい答え」よりも、
考え直す余白を大切にしたい方は、
必要なときに覗いてみてください。


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齋藤信@シゴトバ 「臨床共育」の研究と実践の資金になります。論文化、書籍化のあかつきには、優先的に講義をしに伺います! あなたの情熱にありがとう!

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