推し活は、あなたの心を支えているか、それとも、預けすぎていないか─精神科OTの現場から見えてくること
「推し活があるから、生きていけます」
精神科の現場で、
この言葉を聞くことは、決して珍しくありません。
私はそれを、
軽く否定できたことは一度もありません。
実際、
推し活が“今日を乗り切る理由”になっている人が
たくさんいるからです。
ただ同時に、
少しだけ、立ち止まってほしい瞬間もあります。
それは、
推しが「楽しみ」ではなく
心の置き場所そのものになり始めたときです。
推し活は、悪いものではない
最初に、はっきりさせておきます。
推し活そのものを
悪だと言いたいわけではありません。
日常に楽しみができる
外に出る理由ができる
孤独をやわらげてくれる
これらは確かに、
人の心を支える「作業的価値」
問題は、
推し活が“感情の避難所”を一手に引き受け始めたときです。
心がしんどいとき、人は「外」に預けたくなる
不安、孤独、虚しさ。
これらの感情は、
一人で抱えるには重すぎます。
だから人は、
それをどこかに預けようとします。
人
仕事
お酒
ギャンブル
そして今、とても預けやすい場所として
推しが存在しています。
推し活が依存に近づくサイン
精神科の視点で見ると、
境界線は意外と分かりやすいもの。
推しの動きで一日の気分が決まる
推しがいない時間に、強い不安が出る
課金した直後だけ、安心できる
これは「好き」の問題ではありません。
感情の主導権が、自分の外に移っている状態。
なぜ、こんなにもハマってしまうのか
推し活が特に強く作用する理由は、
脳の仕組みにあります。
不安や寂しさが出る
推しを見る
一瞬、満たされる
また空虚感が戻る
この「短期報酬のループ」は、
ギャンブルやアルコールと同じ構造です。
ただし推し活には、
「好きだから」「趣味だから」という
社会的な免罪符があります。
そのため、
自分でも気づかないうちに
深く入り込んでしまう人がいます。
特に、影響を受けやすい人がいる
これは人格の問題ではありません。
精神科の現場で見ていて、
特に影響を受けやすいのは、
人との距離感に悩みやすい人
承認される経験が少なかった人
現実世界で役割を持ちにくい人
推しは、
否定しない
いつも肯定的
こちらを拒まない
心の隙間に、
あまりにもぴったりとはまってしまうのが怖い。
ガチ恋や高額課金の裏にあるもの
「推しに会えないと涙が止まらない」
「生活費より現場を優先してしまう」
これらは
“好きすぎる”から起きているわけではありません。
感情の調整
自己価値の確認
孤独への耐性
それらを、
一人の存在に背負わせてしまった結果です。
「やめさせる」ことが解決ではない
支援の現場で、
推し活を無理にやめさせることはしません。
大切なのは、
推し活を取り上げることではなく、分散させることです。
推し以外の逃げ場を作る
感情を調整できる手段を増やす
現実世界での小さな役割を取り戻す
推し活が「唯一」にならなければ、
依存にはなりにくいんです。
推し活は、心の栄養にもなる
推し活は、
人生を豊かにすることもあります。
ただ一つだけ、
患者さんに問い続けてほしいことがあります。
今、自分の感情の責任者は誰か。
推しを楽しめているのか。
推しにしがみついているのか。
この違いは、
心が苦しくなったとき、
必ず表に出てきます。
立ち止まれるうちに、考えてみてほしい
推し活で日常が少し楽になっている
推し活がないと、日常が崩れそうになる
この2つは、
とても近い場所にあります。
だからこそ、
元気な今のうちに。
推し活を
人生の一部として楽しめているか。
それとも
人生そのものになり始めていないか。
静かに、考えてみてください。
これはまさに、作業療法で言う
病に生きるのか、病と生きるのか
ですね。
一度立ち止まって考えたい方へ
ここまで読んでくださった方は、
おそらく「正解が欲しい」のではなく、
一度立ち止まって考え直したいのだと思います。
精神科作業療法の現場では、
こうした“グレーな問い”に、
すぐ答えを出さず、
考え続けること自体が支援になる場面があります。
齋藤のシゴトバ
『作業療法士のための思考と実践のネタ帳』 では、
1日14.4分(1%)で読める短い文章を通して、
臨床や支援の見え方を少しずつ整えています。
「分かりやすい答え」よりも、
考え直す余白を大切にしたい方は、
必要なときに覗いてみてください。
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