古代朝鮮と倭族―神話解読と現地踏査
著者の鳥越憲三郎さんは、日本の古代史や宗教史を研究してらっしゃる方です。
本書では、古代日本と関係が深かった、古代朝鮮について、取り上げています。
鳥越さんの主張は、以下のようなものです。
「弥生時代の日本に、朝鮮半島の中南部から、倭族【わぞく】と呼ばれる人々が、おおぜいやってきた。彼らこそは、稲作などの弥生文化を作り出し、後の日本文化の基礎を築いた人々だった。
倭族のルーツは、中国長江上流域にある。そこから、朝鮮半島の中南部に移住した倭族がいた。その倭族が、さらに日本へ渡って、弥生時代の日本人になった。
倭族は、朝鮮半島の中南部に長くいたため、そこで一定の文化を築いた。だから、弥生時代以降の日本文化を知るには、朝鮮半島から移入された、倭族の文化を知る必要がある」
この主張は、学界で、広く認められているわけではありません。毀誉褒貶【きよほうへん】の激しい説です。
私も、この説は、決して鵜呑みにできないと思います。とはいえ、一部には、聴くべきところもあると考えます。
本書では、鳥越さんが倭族の文化だと考える、古代朝鮮の文化について、解説されています。鳥越さんが宗教史に関心を持つために、神話や神話的歴史の話が多いです。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
序章 古代の辰国と倭族
馬韓の辰王
百済の登場
倭族とはなにか
など
I 章 朝鮮神話の系譜を探る
1 扶余族系の神話
二系統の神話
高句麗と百済の場合
扶余の神話と百済の神話(東明神話)
など
2 徐国の神話
『史記』の卵生神話
徐国の神話
水稲農耕民神話の浸透
3 新羅の神話
複雑な古代新羅
馬韓の三氏族
三王統譜の序列
など
4 駕洛【カラ】の神話
『三国遺事』の「駕洛国記」
首露王【スロワン】大王となる
演劇的要素と祭儀性による神話の変容
など
II 章 耽羅【タンナ】国の神話と歴史
1 神話はかくつくられる
『瀛州【えいしゅう】誌』の三神人
歴史を投影する神話
三姓の歴史的起源
など
2 作為された歴史
耽羅国の歴史への疑問
作為の理由
耽羅国の四囲の情勢
など
III 章 邪霊の侵入を防ぐ神々
1 馬韓伝の蘇塗【そと】
生きていた蘇塗
済州島のタプ
ソッテ祭りと鳥の形象物
2 チャンスンの性格
天下大将軍・地下女将軍
アカ族の習俗
注連縄【しめなわ】と鬼の目
など
3 ソンドルの習俗
錦江流域の立て石
立て石の起源
4 石人像の由来
倭寇を防ぐ石人像?
石人像を検討する
元の済州島支配
IV 章 堂信仰と蛇神
1 聖林としての堂
倭寇時代の悲話
兎山里の聖林
淫祠とされた朝鮮王朝時代
など
2 農耕神としての蛇神
村落神の属性
農耕神と蛇
重複する農耕神
3 兎山里事件の解明
「兎山堂本解」の大要
日本の侵略に備えた沿岸防備
兎山里事件が語り継ぐこと
など
あとがき
