母は時に、壁となる。
ウォーキングの帰りに、時々寄るカフェがある。
娘たちのおやつに、ケーキをテイクアウトした。
その店には、いつ仲良くなったのか忘れたが、よく話す女性スタッフがいる。
その女性スタッフも、娘が二人いるらしい。
その女性スタッフの長女は、おはようと言っても返事はなく、何か
用事で話しかけても、違う方向を向いていると、途方に暮れていた。
「もういやになっちゃう、思春期には。」
と言いながら、ケーキを箱に詰めていた。
ちょうど店がすいていた。
その女性スタッフは続けて話した。
「娘に話しかけても何しても、避けてくるのよ。私は壁じゃないんだから。」
そう言って、ため息をついていた。
妖怪に出てくる、「ぬりかべ」のようなものなのか。
かぼちゃのタルトケーキと、バームクーヘンが入った袋を持ちながら、
女性店員との会話を思い出した。
私は壁じゃないんだから。
確かにうちの長女もすれ違う時、妙に避けたり、話しかけても違う方向を
見つめている。
目の前にいるのに、まるでいないように接してくるという
ことだろうか。
でも私は、壁は嫌いじゃない。
壁にもたれることが好き。
壁に隠れることも好き。
誰にも言えない気持ちを壁に話すこともある。
もしかしたら、いつもそこにある壁は、背負いすぎた背中を支えてくれているのかもしれない。
長女も、部屋の壁にもたれていることが多い。
だらんと壁にもたれて何かを考えている。
私は、長女の部屋の壁がうらやましい。
壁になれば、長女の声を聞くことができるかもしれないからだ。
だから、時々壁になれるなら壁になりたい。
壁になって、大きく成長した長女の背中を抱きしめてあげたい。
今度、カフェの女性店員に会ったら、話そう。
「時々壁になるのも、いいんじゃない?」
☆本日のウォーキング 8.48km
