内緒だからな【せりふ三題噺】
【お題】
■セリフ
「内緒だからな」
■三題
・第二ボタン
・たい焼き
・駐輪場
こちらのお題に参加してみました!
よろしくお願いします🙇
ケンちゃんが自転車の鍵をなくして、駐輪場で立ち往生している時に、自転車屋『サイクル佐々木』の親父がやってきて、手持ちの工具で鍵を開けてくれた。
佐々木の親父に
「いや〜助かったわぁ〜
もう抱えて帰ろうかと思うてたところやってん。
で、作業代なんぼ?」
と聞くと、佐々木の親父は首を振って
「こんくらいの作業で金なんかいらんわ!
またなんかあったら、うち来てくれや」
と言うので、ほな代わりに…と、お土産に買っていたたい焼きを1つ出して渡しかけたけど
「…って、佐々木の親父、甘いもんなんか食わんか」
と言って引っ込めた。
佐々木の親父は、少し不服そうな顔をして
「ケン……お前もそう思うか…??
オレ、甘いもん食いそうにないように見える?」
と聞いてきた。
佐々木の親父の見た目は、正直いかつい。
眼力も強いし、口を閉じてたら怒っているようにも見える。
いつもシャツを第二ボタンまで開けているのだが、その理由は首元に布が当たっている感触がどうにも窮屈で開けているとこのこと。
この見た目で、ケーキやプリンを嬉々として食べているところは………想像しにくい。
佐々木の親父はため息をついて
「ほんまは、ホテルとかでやってるスイーツビュッフェとか行って、思う存分食べてみたいんやで…。
でも、気恥ずかしくて、行かれへん。
……っていうか、この話、内緒だからな。」
と言って、ケンちゃんが持ってるたい焼きを1つ奪い取り、幸せそうな顔で食べて帰っていった。
数日後のこと。
ケンちゃんが佐々木の親父のところにやってきて
「親父、ちょっと、頼みたいことあんねん。
ついてきてくれるか?」
と、佐々木の親父を公民館まで連れ出した。
扉を開けると甘い香りがふわりと漂い、目の前には料理学校の生徒たちが作った、たくさんのお菓子が机に並べられていた。
「ここの料理学校、年に一回、オリジナルのスイーツを作って、いろんな人に食べてもらって評価してもらうっていうイベントをやってんねん。
女性の参加率が高いけどよ、生徒さんは男性の意見も聞きたいんだとよ。
親父、協力してやってくれや。」
と言って、佐々木の親父の背中を押した。
佐々木の親父は、少し驚きつつも、ニカっと笑って
「しょーがねーなー!!
若者の頼みなら、断られへんわ!」
と嬉しそうに、生徒たちのお菓子を片っ端から食べ始めた。
佐々木の親父の評価は、なかなか的確で、最初は戸惑う生徒たちも、次第に熱心にメモを取り始めた。
その後、佐々木の親父は、吹っ切れたように甘いものを食べるようになり、今では『お菓子評論家』と自ら名乗り、自転車の修理中も工具片手に『今週のイチオシ』を熱弁している。
おしまい。
