内緒だからな2【せりふ三題噺】
【お題】
■セリフ
「内緒だからな」
■三題
・第二ボタン
・たい焼き
・駐輪場
こちらのお題に参加させていただきました。
1つ前に同じお題でお話し書いているので、お時間あればぜひ読んでくださいね!
こちらは続編みたいなものです。
料理学校の製菓コースに通っているムギちゃんと宮本くんは、年に一回開催される、オリジナルスイーツ評価会に参加していた。
自分の作ったスイーツがどう評価されるかドキドキもしたが、多くの人に試食してもらい、率直な意見を聞ける機会は新鮮で、充実した一日となった。
会が終わった帰り道でのこと。
ムギちゃんが
「佐々木のおっちゃんが、あんなにスイーツのこと語る人やなんて知らへんかったわぁ。」
と、えらく感慨深く言うので、宮本くんは
「佐々木のおっちゃん?
どの人のことやろ?」
と聞くと
「いかつい顔して、怒っとるような男の人おったやろ?
あの人、小さい頃からお世話になってる自転車屋のおっちゃんやねん。」
と言ったので、宮本くん、記憶の糸を手繰り寄せて、ムギちゃんと楽しそうに話をしていた、強面で、シャツを第二ボタンまで豪快に開けている男性のことを思い出した。
その「佐々木のおっちゃん」は宮本くんの甘さ控えめ米粉クッキーをじっくり眺めてから、険しい表情で食べた後、少し口元を緩ませながら
「…おう、ええ食感や。
なんぼでも食える。
オレの好みとしては、もう少し甘みあってもええけど、小さい子どもが食べるんやったら、このくらいの甘さからの方がええかもしれん。」
と、言ってニコッと笑ってくれた。
宮本くんは、その感想にドギマギしながらも
「あ、ありがとうございます!!
参考になります!!」
と思わず深々とお辞儀をして、心の中では
(なんや、この人!!
渋っ!!
かっこよ!!)
と、思っていた。
ムギちゃんも
「佐々木のおっちゃん、お店では黙々と作業してるし、あんまり笑った顔、見たことなかったけど、あない幸せそうにお菓子食べんねんねな〜。
意外やったけど、なんかかっこよかったわぁ〜」
と少し遠くを見ながら目をキラキラさせていた。
宮本くん、すっかり佐々木のおっちゃんのファンになり、次の日には早速、シャツを第二ボタンまで開けて着て、学校でも寡黙な男風を装い、同級生たちを驚かせた。
同級生の1人が
「宮本…お前…何があったんや…。
辛いことあったんなら聞くで?」
と声をかけてきたが
「…何があったかって…?
……まぁ、生きてりゃ、いろいろあんねん…。
そう詮索するな…内緒だからな。」
と、すっかり悦に入っていたので、それ以上、誰も何も聞かなかった。
放課後のこと。
駐輪場で自分の自転車を出して帰ろうとした時、ムギちゃんから声をかけられた。
「宮本くん、たい焼き食べに行かへん?
なんかな、たい焼きの中身にあんこだけちゃうくて、お餅が入ってるお店あんねん!
お餅好きとしては、これは外せんやろ……って
何!?宮本くん、そのシャツの着方!!
だらしないなぁ。
ちゃんとボタンしめとき!」
と、シャツのボタンを第一ボタンまできっちりとしめられてしまった。
「こ、これは、男のたしなみというか…ロマンというか……」
とモゴモゴ言っているうちに、ムギちゃんから
「え?
男がなんて?
それより、たい焼き、食べに行こうや!
お店、後、30分で閉まってまうねん!!
急ぐで!!」
とせっつかれてしまい、慌てて自転車にまたがり、ムギちゃんの後を追う。
(オレだって、いつかは渋い男に…!!!)
と、思いながら、必死に自転車のペダルを踏むのだった。
おしまい。
