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飛べ浦島太郎【3つのお題に空想のひらめきを】

日本むかし話に挑戦しました。
またもや3,000字超えの話になりました💦
お時間ある時に、読んで頂けると嬉しいです☺️
よろしくお願いします🙇

🎈お題①:「乙姫様の相談室」
🐾お題②:「天狗の飛行教室」
⏳お題③:「浦島太郎スマホ買う」

🍊第56回 3つのお題(日本むかし話)

浦島太郎は激怒した。

そして、必ずや、あの容姿端麗な乙姫と再び会わなければならぬと決意した。

太郎には龍宮城の事情がわからぬ。

太郎は、漁師である。

釣竿を持ち、魚を釣って暮らしてきた、ただの若者である。

しかし、玉手箱の理不尽さには人一倍、敏感であった。

龍宮城から陸に戻ると、まるで知らない浜辺に到着し、不安すぎて乙姫から渡された玉手箱を開けると、あっという間に老人になるなど許されることではない。

「……なんでやねん!!!
 オレ、何した!?
 カメ助けて、お礼してもろただけやで!?
 何、この仕打ち!!
 くっそぉ……もう一回乙姫に会って、一言物申さな気がすまへん!!」

年老いた太郎は、帰ろうとするカメをとっつかまえて、もう一度龍宮城に連れて行くように言った。

「玉手箱……開けたらあかんよ、って言われてたやん……」

と言うカメを一睨みして太郎は低い声で言った。

「……言うてたよ?
 ちゃ~んと聞いたで?
 でも、こんなわけのわからん場所に連れてこられたら、オレ、不安で何かにすがりたくもなるやん!!
 なんでもええから、もう一回、乙姫に会わせてくれ」

カメは渋々、太郎を龍宮城に連れて行くことになった。

龍宮城に到着すると、乙姫が年老いた太郎を見て頭を抱えた。

「あれほど、開けてはいけませんと言うたのに……
 ……で、龍宮城に戻ってきて、どないするつもりですか?」

太郎は顔を真っ赤にして怒鳴りちらかした。

「どないもこないも、何とかしてくれや!!
 オレ、まだ若者やったんやで?
 それが、こない年取ってもうて……。
 砂浜で足とられて歩きにくいしよ……。
 どうやって生きていったらええねん……」

乙姫はうずくまってシクシクと泣き出した太郎の背中を優しくさすりながら言う。

「……確かに、急に年とってもうたら、歩きづらいやんな……。
 これは提案なんやけど、私の知り合いに天狗がおるから、天狗に空の飛び方教えてもらったらどうやろうか?
 そうすれば、少なくとも移動が大変ってことはなくなるで?」

「もうなんでもええ……
 天狗でもなんでも、助けてくれるんなら……」

「ほな、今すぐ天狗のところに案内するわ!
 カメ、太郎さんを天狗のところに連れて行ってあげて!」

カメは再び太郎を天狗のいる山へと連れて行くことになった。

天狗はカメが連れてきたヨボヨボの太郎を見て驚いた。

「おじいちゃん、無理すんなよ……
 覚えることも多いし、老体に鞭打つことないやん……」

太郎は天狗を一睨みして言い放つ。

「見た目は老人やけど、頭脳は若者や!!
 ほんで、おじいちゃんちゃう!
 浦島太郎や!!」

天狗は太郎の気迫に押されて、空の飛び方を教えた。

空を飛ぶ訓練は思っていた以上にきつかったが、藁にも縋る思いで取り組んでいると、うまく飛べるようになった。

そして、この能力を生かして、魚がたくさんいるポイントに飛んでいき、たくさんの魚を釣れるようになったので、そのまま魚屋に売りつけて、生計を立てられるようになったのだ。

生活が安定したころ、ふと、助言をくれた乙姫に会いたくなり、カメを呼び出し、再び龍宮城へと行くことにした。

乙姫は大層喜んで、お祝いしよう、と盛大な宴を催してくれたのだ。

太郎が、さて、そろそろ陸に帰るか……と言い出すと、乙姫はまた、玉手箱を持ってきた。

「はい、今回の分の玉手箱な。
 絶対、開けたらあかんで。
 今回はだいぶん長居したから、これ開けたら……」

乙姫は首元に親指を立ててスッと横に引いた。

太郎は大層驚いて乙姫に聞く。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!!
 また何十年もたってしもてるんか!!?」

乙姫は首を横に振り、苦笑いしながら言った。

「……何百年……かな?」

太郎は、その場に膝をついて、オイオイと泣き出した。

「いやや!!
 オレ、もう陸に行きたくない!!
 一生ここにおる!!」

乙姫は困ったように「そら、無理な話やで」と言うも、太郎は引き下がらない。

乙姫は考えた挙句

「ほな、スマートフォンを契約したらどうやろか?」

と、提案した。

「……すまーとふぉん……?」

乙姫はにっこり笑って言う。

「今ならシニア割いうのもあるし、スマホを使えば、わざわざここに来んくても、スマホで電話してくれたら相談に乗れるで!」

太郎は、乙姫から『乙姫相談室』のチラシを渡されて、無理矢理、陸へと帰された。

陸に着くとまたもや太郎の知らない景色が広がっていた。

男女問わず、布面積の少ない衣類を身にまとい、真っ白な大きな傘の下に寝そべるものや、手毬で遊ぶものもいた。

聴いたこともない珍妙な音楽が大きな音で流れ、ズラリと並ぶ小さな小屋からは、良い香りが漂っていた。

太郎は、玉手箱を抱えて、人気のないところに行こうと、砂に足を取られながら歩いていると、屈強な青年が駆け寄ってきて

「おじいさん、1人で来たん……?
 家わからんようになってもうたん……?」

と心配そうに顔を覗き込む。

太郎は玉手箱を力強く抱きかかえて言う。

「ろ、ろ、老人扱いするな!!
 見た目は老人やけど、頭脳は若者や!!
 お、おい、青年。
 すまーとふぉんのこと教えてくれ。
 お金はあんねん!」

太郎が袋に入った大判小判と、紐に通した銭を見せると、青年が驚く。

「えっ!?
 こ、これ本物??
 オレの大学の友人が、考古学を学んでんねんけど……。
 こない状態のええ古銭見たら驚くで……」

青年はすぐにスマホでその友人を呼び出した。

しばらくして息を切らせて走ってきた考古学マニアの友人は、太郎の持つ古銭を見るなり、目玉が飛び出そうなほど驚いて叫んだ。

「う、うわあああ!
これ、数百年前の本物の通貨やんけ!
しかも新品同様の保存状態……国宝級やで、これ!!
おじいさん、頼むからこれ、僕の教授や博物館に高額で買い取らせて!!」

太郎は何が何だかわからないまま、青年たちに連れられて、あれやこれやと世話を焼いてもらえた。

数日後、太郎の手元には、見たこともない桁の数字が並ぶ「預金通帳」という紙の冊子と、現代で不自由なく生きていけるだけの大金が残されていた。

軍資金を手に入れた太郎が、真っ先に向かったのは駅前の派手な携帯ショップである。

ヨボヨボの着物姿のおじいちゃんが「すまーとふぉんをくれ! シニア割で頼む!」と乗り込んできたので店員は一瞬固まったが、太郎がビシッと大金を見せると、親切丁寧に最新のスマートフォンを契約してくれた。

ショップを出た太郎は、さっそく乙姫から渡されていた『乙姫相談室』のチラシを開き、そこに書かれた謎の数字を震える指でタップする。

画面に「発信中」の文字が浮かび、耳元にスマホを当てると、ピピッという音のあとに、あの懐かしい声が響いた。

『はい、こちら龍宮城の「乙姫相談室」でーす!
あら、太郎さんやないですか!』

画面の向こうには、数百年ぶり(太郎にとっては数日ぶり)に見る、あの容姿端麗な乙姫がにっこりと微笑んでいる。

「お、乙姫ーっ!!
 聞いてくれや!
 陸に上がったらまたわけわからん場所やったんやけど、オレの持ってた小銭がめちゃくちゃ高く売れてな!
おかげですまーとふぉん買えたわ!」

『あらま!
そら、良かったですねぇ。
天狗さんに教わった飛行教室の調子はどうですか?』

「バッチリや!
 空を飛べんのここでも役立ってるで!
 上空から魚の群れを見つけられるから、漁師さんに重宝してもらえてよ。
 『浦さん居らんと、魚釣られへん』なーんて言われてよ!
 引っ張りだこやで!」

太郎が嬉しそうに胸を張ると、乙姫は画面の向こうで優しく微笑んだ。

『さすが太郎さん、順応性高すぎやわ。
これでもう陸の上でも迷子にならずに生きていけますやん。
また困ったことや、玉手箱を開けたくなったら、いつでもこの相談室にリダイヤルしてくださいね』

「おう!
ありがとう、乙姫!
またなんかあったら電話するわ!」

通話を終えてスマホを懐にしまい、太郎は現代の青空を見上げた。

見た目は老人、頭脳は若者。
おまけに空を飛ぶスキルと最新スマホ、そして莫大な資産を手に入れた太郎の、最強の現代セカンドライフが今、幕を開けるのだった。

めでたし、めでたし。

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