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山姉様【3つのお題に空想のひらめきを】


日本むかし話のお題に挑戦したら、初の4,000字超えの物語ができてしまいました!
個人的にはとても気に入ってますが、お時間ある時にどうぞごゆるりお読みいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします🙇

🎈お題①:「鶴が残した白い羽」

🐾お題②:「鬼ヶ島に咲いた花」

お題③:「山姥が守った子」

🍊第55回 3つのお題(日本むかし話)

むかしむかし、あるところに、山姥の住む山がありました。

山姥がきのこ汁を作っていると、山の動物たちがざわざわと騒いでいます。

山姥は、小さく舌打ちをして山の動物たちに声をかけます。

「さっきから、騒々しいねん!!
 こっちは気分良ぉ、きのこ汁作ってんのに、なんやの!」

するとウサギがオロオロしながら言います。

「ああ、山姥。
 それがな……」

「誰が山姥やねん。
 山姉様って呼べ。
 で、なに?」

「……山姉様、それが人間の子どもがおるんですわ。
 大泣きしてて、みんなでどないしようか、話しあっとたところですわ……」

山姥は大きなため息をつきました。

「どないしようも、なにも、人間が山に置き去りしたんやろ。
 そのうち弱ってポックリいくから、ほっとけ、ほっとけ」

ウサギはギョッとして言い返します。

「そんなん殺生やで!!
 なあ、やまん……山姉様、どないかできひんかな?
 山姉様のきのこ汁、分けてあげるとか……」

「なんで、うちのきのこ汁、分けなあかねん!!
 ……ウサギ、その子、どこにおるん。
 山を騒がしくするなら、追い出すしかないな」

ウサギは不満げな顔をしつつも、山姥を人間の子どものところに連れて行きます。

人間の子どもはまだ乳飲み子で女の子でした。

お腹がすいているのか、おしめが濡れているのか、顔を真っ赤にして大きな声で泣いています。

山姥は、耳をふさいで覗き込み、ウサギに向かって言います。

「この山で、最近、子どもを産んだ動物おるやろ。
 そこに連れて行って、乳分けてもらえ。
 そしたら、ちったぁ、おとなしくなるやろ」

ウサギは言われた通りに、最近子どもを産んだタヌキの元へ行き、乳を分けてもらいました。

すると山姥がやってきて、洗いざらしの布を持ってきました。

「飲み終わったら、身にまとってる汚れた布を脱がせて、この布で巻いてやれ。
 やれやれ、これで静かにきのこ汁が食べられるで!」

山姥が帰ろうとすると、うさぎが引き留めて言います。

「なあ、山姉様。
 この子に名前つけてやってくれよ!
 この山でみんなで育てようや!」

「名前!!?
 ほんで山で育てる!?
 あっほらし~~!!
 知らん、知らん!」

「お願いだよ、山姉様……」

山姥は何か言い返そうとしたが、ウサギやタヌキが期待に満ちた眼差しでみてくるので、わざとらしく大きなため息をついて言います。

「……捨て子やから『ステ』でええやろ!!
 ったく、人間の子を育てるとか正気の沙汰やないで……」

こうしてステは山の動物たちに育てられ、いつしか元気な娘へと成長しました。

***

ある日のことです。

ステが山姥のところに行くと、山姥が機織りをしていました。

「山姉様~!
 お花摘んできたよ……って、なに作ってるん?」

山姥は手を止めずに、投げ捨てるようにいいます。

「見りゃ、わかるやろ。
 布作ってんねん。
 鶴が上等な羽を残してたから、新しい着物でもこさえようと思ってんねん」

ステは山姥の周りをウロウロしながら言います。

「鶴の羽ねって……。
 あ~この前、山姉様がケガした鶴を助けてたもんな~。
 お礼にくれたんやろ?」

「知らん。
 あ~ウロウロしたら、気ぃ散るやん!
 用がないなら帰んな!」

ステは山姥に甘えるようにして言います。

「山姉様~、ステも機織りしてみたい~。
 教えて!」

山姥は大きなため息をついて、ステをちらっと見ると

「1回しか教えへんからな。
 よーく聞くんやで」

と言って、ステに機織りを教えました。

ステが機織りに慣れた頃、山姥はステの摘んできた花を水につけ、それを眺めながら昼寝をしようとゴロリと横になります。

しかし、山の入り口で騒がしい声がするので、寝られません。

山姥とステがその声の元に行くと、山のふもとにある村の人たちが、おいおいと泣いていました。

ステが声をかけると、村人の一人が

「え……山から女の子……?
 ぎゃーーーーー!!
 山姥がおるやんかーーーーー!!
 食われるーーーーー!!」

「誰が山姥やねん!!
 山姉様や!!
 ほんで、なに泣いてんねん!
 うっさいわ!
 どっか行け!
 しっしっ!!」

あわてふためく村人をステは落ち着かせて、泣いている事情を聞きました。

「村に鬼がやってき、村ごと乗っ取られてもうてん……。
 ワシら、家がのうなってしもうたんや……。」

「……でも、女の子がおるっちゅーことは、この山、人が住めるんか?」

「そりゃ、いい!!
 ほな、ここに住むか!!」

山姥はギョッとして村人たちを一喝します。

「あかん、あかん!!
 山に住むなんてあかん!!
 これ以上、人に住まれたら騒がしくてかなわんわ!!
 ……鬼の奴らめ……。
 こらしめてやる!!」

山姥は鬼のいる村に行き、鬼の親分を呼び出します。

「こらー!!
 何、人間の村、乗っ取ってんねん!!
 追い出された人間が、山に住むとか言うてるで!!
 あんたら、鬼ヶ島ちゅー住処があるやろ!
 さっさと帰れ!!」

すると鬼の親分が口をとがらせて言います。

「そないなこと言うても、山姥……」

「山姉様って呼べ」

「……山姉様、鬼ヶ島には、この村みたいに住みやすくないねん……。
 畑もないしよ……」

山姥は頭を抱えて大きなため息をつきます。

「だからって、人間の村を乗っ取ってどうすんねん!
 鬼ヶ島でも畑ぐらいつくれるやろ」

「やり方、わからへんし……」

「ほな、人間に聞け!!
 あ~まどろっこしい!!」

山姥は村の村長のところに行き、鬼ヶ島に行って畑の作り方を教えるように言いました。

村長も、それで村に帰れるのなら……ということで、村の男たちを鬼ヶ島に向かわせて、鬼たちに畑づくりを教えることになりました。

すると、ステが

「私も、鬼ヶ島で畑づくりやってみたい!
 おもしろそう!!」

と言い出したので、山姥はどうぞ、どうぞ、と送り出しました。

村の男たちは鬼たちに畑づくりを教え、鬼たちも見よう見まねで鍬を握りました。

最初はぎこちなかった鬼と人でしたが、一緒に畑を耕すうちに少しずつ笑い合うようになりました。

ステも鬼ヶ島で畑仕事を手伝ううちに、村の男たちと自然に言葉を交わすようになっていました。

***

それから数か月後のことです。

鬼ヶ島に行っていたステが、山姥のもとに帰ってきました。

「山姉様!!
 鬼ヶ島の畑づくりが終わったで!
 あとな、山姉様に見せたいものがあんねん」

山姥はしぶしぶ、ステと一緒に鬼ヶ島に行きました。

きれいに作られた畑をステが説明しながら歩きます。

山姥は「へ~」「ふ~ん」と適当に相槌を打ちながら、ステの後をついて歩きます。

そして……

「見て、山姉様!
 お花畑も作ったんよ!」

ステが満面の笑みで花畑を指さしました。

かつては荒れ果てた岩だらけだった鬼ヶ島に、色とりどりの花が咲き乱れ、その花畑の美しさに、山姥は一瞬、目を見開きます。

ステは花の種類を一つずつ、山姥に説明します。

「ほら、これは山姉様の好きなお花やで!
 鬼ヶ島でもきれいに咲いてるやろ。
 こない、きれいなお花畑があったら、鬼も村を襲ったりせえへんよね!」

そしてステは花畑で作業をしている一人の男のところに山姥を連れて行きました。

「……山姉様、この人、弥助さんっていうねん。
 鬼ヶ島の畑づくりで、仲良くなったんよ。
 ほんでな……」

ステが少し顔を赤らめながら話そうとすると、弥助が「オレが話したい」と言って話し始めます。

「山姉様、はじめまして。
 弥助と言います。
 ステちゃんが言うたように、畑づくりで仲良うなりました。
 ……ステちゃんと夫婦になりたいと思ってます。
 山姉様、ステちゃんをオレにください!」

山姥は幸せそうに並んでいる弥助とステを交互にジッとみて、フンと鼻で笑いながら言います。

「……夫婦でもなんでも、勝手になったらええやん。
 話はそれだけか?
 ほな、そろそろ山に帰るわ」

山姥は二人にくるりと背中を向けて山へと歩き出します。

「山姉様!!
 山のふもとの村で、式挙げようかって話してんねん!!
 山姉様も来てくれるやんな??」

ステは少し不安げな表情で山姥にそう言います。

「……気がむいたら行くわ~。
 ほな、達者でな~」

山姥は振り向かずに手をヒラヒラさせて山へ帰りました。

山に帰った山姥は、機織り機の前でしばらく立ちすくみ、誰もいなくなった家をぐるりと見渡します。

「やれやれ、静かになった……」

とポツリと言うと、鶴の羽を取り出して、カタンカタンと機織りをするのでした。

***

それからしばらくたったのちの、弥助とステの式の日のことです。

村のみんながお祝いする中、ステはキョロキョロと山姥を探します。

宴が始まったころに、山姥がひょっこりと現れて、ぶっきらぼうにステに風呂敷で包んだ何かを渡します。

「山姉様……これ……」

「ほれ、途中でほったらかしにしとったやろ!!
 着物こさえてる途中やったんちゃうの??
 邪魔でしゃあないからもってきたわ」

「あれは、山姉様の着物作ってる途中やって……」

「あんたのこさえた着物なんか、よう着んわ!!
 ガタガタの波縫いでカッコ悪い。
 波縫いってそういう意味ちゃうで!?」

ステが風呂敷を開けると、鶴の羽で作られたきれいな着物が入っていました。

「私の着物、作ってくれたん!?
 ……山姉様……ありがとう……」

ステは、着物を抱きしめてホロホロと泣き始めました。

「めでたい日に泣くな!!
 辛気臭い!
 弥助とかいうたな。
 ステは機織りはまあまあできるけど、裁縫はまだまだやから、着るもんには期待せんように」

と言って、弥助の両肩をポンポンと叩きます。

弥助は苦笑いをしながら言います。

「これからも山姉様に教えてもらわなあかんね」

ステは涙目でニコリと笑って頷きます。

「はぁ~~??
 村の人に教わったらええやろ!!
 うちは知らんで!
 ……で、この料理とお酒もらってもええんやろ?」

山姥はひょいひょいと料理とお酒をきれいに包みます。

「ほな、さいなら~」

山姥はみんなに見送られながら山へと帰りました。

山に帰った山姥は、早速、料理を食べながら考えます。

(なかなか肩幅もあるし、背の高い男やったな……
 草木染で布に色付けて着物こさえるか……)

食べ終わると、鶴の羽を取り出して機織り機の前に座り、カタンカタンと機織りをするのでした。

おしまい。

#創作大賞2026
#オールカデゴリ部門

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