ネタがない【アマノ文筆クラブ】
こちらの企画に参加させてもらいました!
よろしくお願いします。
町内会の親睦会会場に行くと、テーブルの上にはご馳走がズラリ並べられていた。
だが、どこか違和感があった。
……お寿司のネタがない。
シャリだけがきれいに残されおり、一番奥の席では自称アーティストのリリーがお寿司のマグロの部分を食べている姿が目に飛び込んできた。
ケンちゃんは驚いて、リリーに詰め寄る。
「おい、リリー!!
何やってんねん!!」
リリーはジッとケンちゃんを見つめたまま、モグモグ口を動かし、ごくりと飲み込んでからキッパリと言う。
「マグロ、食べててん。」
「……いや!?
見たらわかるけど!!?
オレが聞きたいんは、なんで寿司のネタだけ食べてしもたんや!!ってことや!!」
リリーは、「やれやれ」と言わんばかりの大きなため息をついて、ケンちゃんを鋭く睨み返した。
「刺身が……ないからやんけ!!!
刺身さえあれば、こんなことにはならんかった!!」
「………………。」
リリーの開き直りっぷりにケンちゃんも、他のメンバーも開いた口が塞がらない。
するとリリーが、ポンと手を叩き
「そういや、この間、回転寿司行ったらな。
ハンバーグ寿司やローストビーフ寿司っていうのがあってん。
うまかったで〜。
ちょうどここにもあるし、ウチが作ったろ!」
と、残ったシャリの上に、ハンバーグを乗せたり、ローストビーフを乗せたりし始めた。
自称アーティストらしく、彩りのバランスやソースの添え方は非常におしゃれで、見事な仕上がりになった。
「ほれ、食べてみ!
うまいで〜!」
ケンちゃん、一貫つまんで渋々食べてみる。
「……うまいやんけ。」
皆も釣られて食べ始め、「唐揚げ乗せてもうまいんちゃう?」「レタスでクルッと巻いても意外といけるで!」と、それぞれがアレンジし始めた。
最終的には誰のアレンジが一番美味しかったか、という白熱した議論が交わされて、町内会メンバーの親睦は見事に深まったのだった。
リリーがやれやれと首をすくめてから少しだけ笑ってい言う。
「ネタなんてなくても、充分やろ?」
おしまい。
