見出し画像

恩念寺【チャレがや企画】

こちらの記事を見つけたので、挑戦させて頂きました。
2,000字弱ありますので、お時間ある時に読んで頂けると嬉しいです!
突然の初参加ですが、よろしくお願いします🙇

とある村の山の上に『恩念寺』というお寺がありました。

そこの住職は、まだ若くて、どこか抜けたところがあり、お経を唱えてる最中に、ふと黙り込み

「僕、どこまで唱えましたっけ?」

と聞く始末。

村の人たちからは、呆れられつつも、どこか憎めない住職で、とても可愛がられていました。

さらに、村の人たちが口々に

「恩念寺に行くと、なんや、体も心も軽〜くなんねんなぁ。
不思議なところやで!」

と言うのです。

そんなある日のことです。

恩念寺に、泥棒が入ってきました。

御仏前の装飾品をゴソゴソと探っていると、トイレに行こうとしてノソノソ歩いている住職に見つかってしまったのです。

泥棒が、刃物を出して

「静かにしろ!!
 黙って見逃してくれりゃ、命は助けてやる!!」

と脅すのです。

でも、その手は小刻みに震えていて、泥棒自身も自分の激しい焦燥感に戸惑っているようでした。

住職は、驚きつつも、どうしてもトイレに行きたくて

「静かにするし、どうぞ好きのもん取っててください!
ただ……トイレ……行ってもええかな??
さすがに御仏前で粗相したら、明日から仏様に顔合わせできひん……」

とお願いしました。

「トイレ!!?
 お前、自分立場わかってんのか!?
 ……まぁ、ええわ。
 ただし、オレもついていく。
 逃げんように見張らせてもらうで」

住職はペコペコ頭を下げて、トイレへと向かいます。

泥棒は後をついていきます。

スッキリした住職は、晴れやかな顔をしてトイレから出てきて

「いやぁ〜、ほんま、おおきに!
 あと一歩遅かったら、膀胱破裂するか、あなたの目の前で粗相するとこでしたわ!
 ほな、僕はもう一眠りするんで、どうぞお仕事続けてくださいな」

と言って、部屋に戻ろうとしたのです。

泥棒は住職の首根っこを捕まえて言います。

「おいおい!!
 はいそうですか、って続けられるかいな!
 ……オレは泥棒に入ったんやで?
 寺のもん、盗まれてもええんか?」

住職は少し焦りつつも

「いやぁ、まぁ、ええことちゃいますけど……。
 お困りなんでしょ?」

そう言いながら、仏前の宝飾品を見繕いながら、泥棒に手渡します。

「このあたりは売ればええ値段つくと思いますよ。
 こっちとこっちは、安もんやから、重いだけで捕ってもあんまり意味ないで。
 おすすめは、断然こちら!!
 間違いなし!!」

泥棒は呆気に取られて、刃物をしまうと、差し出された宝飾品をまじまじと見つめました。

「……ホンマや、これ結構ええ仕事してんなぁ。
……って、感心してる場合か!」

泥棒はガシガシと頭を掻くと、少し笑いながら言います。

「なんや、アホらしくなってきたわ。
 ……もうええわ。
 今日は手ぶらで引き上げるわ!」

「えっ?
 手ぶらで引き上げる!?
 これ、ほんまにええ値段付きますよ!!」

「……本気で言うてんの?
 っていうか、何、泥棒に盗むもんすすめてんねん!
 いらん、いらん!!
 帰る!!」

そう言って、泥棒は帰って行きました。

住職は泥棒の後ろ姿を見送ります。

そして、隣にいるうっすらとした黒い人影の方を見ながら言いました。

「あの人に取り憑いてまで、したかったことがあるんですかね?
あの人、元々コソ泥気質ではありそうですけど、あんな刃物振り回すようなタマやなさそうでしたし……」

すると黒い人影が少しずつ人の形となっていき、住職の質問に答えます。

「医者を……呼べんかった……。」

「妻が熱を出しても……金がなくて……。」

「子どもまで……。」

「……金さえあれば……金さえ……。」

嗚咽で途切れ途切れになる言葉を、住職は静かに拾い上げます。

「それは、それは……。
 よほど心残りやったんですね……。
 どうぞ、気が済むまでお話ししてくださいな。
 なんぼでも聞きますよ」

住職は朝日が昇るまで、話を聞き続けました。

そして朝日と共に、人影は「ありがとう…」と言って、キラキラとした光の粒になりました。

住職は光の粒を見送りながら思います。

(あれほどの怨念になるまで、家族を思い続けてはったんやなぁ……。
どうかお空で会えますように……)

住職は手を合わせて、静かに目を閉じました。

すると、朝の説法を聞きにきた村人がやってきました。

「住職さん……まだ寝巻きのまんまですか?
 朝の説法の時間やで?」

「……えっ!?
 もうそんな時間!?
 すんません〜!!
 すぐ準備しますわ!!」

ドタバタと部屋に戻る住職を、村人たちは「しょうがないなぁ〜」と笑いながら見送るのでした。

おしまい。

#チャレがや
#怨念
#みくまゆ会

いいなと思ったら応援しよう!