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見て、光ってる【せりふ三題噺】

■セリフ
「見て、光ってる」
■三題
・宇宙
・スープ
・虫よけ

今週のお題

こちらのお題に参加させて頂きました。
なんと初の3,000字近いお話になりました。
お時間ある時に読んで頂けると幸いです。
よろしくお願いします🙇


空とぶ喫茶店『アナザースカイ』の店主・レイラは雑誌のあるページを食い入るように読んでいた。

そして、公務の間にフラリと立ち寄って、優雅にコーヒーを飲んでいるこの国の王子のところに行き、雑誌を見せながら聞く。

「なぁ、王子…。
 この雑誌に載ってる『宇宙スープ』って知ってる?」

雑誌に載ってる『宇宙スープ』は艶のある黒い深皿に注がれた真っ黒なスープに、赤や青、オレンジといった色とりどりの食材が入って優しい光を放ち、小さな宇宙を閉じ込めたような見た目だった。

レイラは大きくため息をつき

「こんなきれいなスープがあるんやなぁ…。
 雑誌には、『一度は飲みたいスープ3選』って書いてるけど、この『宇宙スープ』が1番飲んでみたいわ…。」

と言ってうっとりしている。

その様子を見ながら王子は、少しばかり申し訳なさを滲ませつつ、レイラに言う。

「……お城で開かれる晩餐会では、割と定番スープやから…知ってるというか…飲んだこともあるというか…。
まぁ、確かに少し照明を落として『宇宙スープ』が運ばれてくると……盛り上がるな…。」

レイラは、雑誌と王子を交互に見ながら、

「……え?
 割と定番スープ…??
 1度は飲みたいスープ3選に選ばれてんのに!?」

と、王子に詰め寄るも、頭を抱えて天井を向いて

「何それ〜!!
 はぁ〜さすがは王室!!
 ええもん食されてますねぇー!」

と、嫌味をたっぷり含めて叫ぶ。

王子は困ったように肩をすくめて

「そんなんオレに言われても…。」

と、言うがレイラの勢いは止まらない。

「こっちは雑誌見て、どんな味なのか想像するだけやのに!?
王子は『また宇宙スープかいな…たまにはシンプルなスープでええのに』とかなんとか言うてるんちゃいますの!?
贅沢なお悩みですこと!!」

「そんなこと言うてへんわ!!
 それに晩餐会なんてそうそうあるわけやないから、オレかてたまに飲むぐらいや!」

「ほなさ、今度、宇宙スープ出る晩餐会の時、余ったスープでもええから、ちょいわけてくれへん?
食材も微妙にはねたやつが入っててもええからさ。
王子ならそのくらいのわがまま通るやろ?」

「…アホ。
余りもんもらうくらいなら、うちのシェフに作り方教えてもろて、ここでも作ったらええやんけ。」

「…確かに。
 でもなぁ…食材、高いんちゃうの??
 そない高級食材、ようさん買われへんで?」

「……ひとまず、うちのシェフに話聞きにいくで。
 話はそれからや!」

早速、王子はレイラを連れて王室の厨房に行く。

シェフは腕を組んで、うーんと眉間に皺を寄せながら話し始める。

「宇宙スープの食材は…王室管理してる山の中で全部揃うんですが……。
問題は食材の生息場所なんですわ。
光る湿地帯の水で育った木の実やハーブ、きのこを使えば作れるんやけど、なんせ薄暗い森の中の光る湿地帯やから、虫が多いんですわ。
なので、虫よけ防護服を着て取りにいかなあかんねんけど、この防護服、しっかりした作りなだけに重たくてねぇ。
お嬢さん、虫よけ防護服着て取りに行くってなったら、湿地帯着くまでにバテてまいますよ?」

レイラはその話を聞いて目をキラキラさせながら

「…ということは、材料費タダってこと!?
 行きます。
 行かせてください。
 そして虫よけ防護服貸してください!!」

と言い深々と頭を下げる。

そして王子に向かって小声で

「王子も頭下げて!」

と言うので、王子はギョッとして驚き

「なんでオレまで頭下げなあかんねん!
 王子やで!?
 ほんで、オレも行くん!?」

「え?
 行けへんの?
 ………まぁ、温室育ちのお坊ちゃんには、重た〜い虫よけ防護服着て、山歩きなんてできひんわな。
 ごめん、ごめん、無理難題押し付けてたわ。」

と言って軽く失笑するレイラ。

王子、ムッとして

「重た〜い虫よけ防護服着て山歩きなんて余裕やし。
なんやったら、うちが所有する山やから湿地帯までの道のりなんて散歩コースみたいなもんやし。
オレが華麗に案内してやるわ!!」

レイラは王子の手をギュッと握りしめて

「さすが王子!!
 ほな、案内役よろしく〜。」

と言って満面の笑みを見せた。

ーーー数日後、王子とレイラは虫よけ防護服を着て山の中を歩いていた。

2人はこまめに休憩を取りつつ、黙々と山の中を歩いていく。

虫よけ防護服は思っていた以上に重いし、山道は昨晩の雨でぬかるんでいるため、とても歩きにくい。

レイラは肩で息をしながら、王子に6度目の休憩を申し出ようとした、その時

「……王子、見て、光ってる。

と言って緩やかな坂道の奥の方を指差した。

そこから2人は早足になり、坂道を登り切ると虹色に輝く湿地帯が目の前に広がった。

2人は息が整うまで、その光景に見惚れていた。

レイラが

「きれいやな…。」

とポツリと言うと、王子は

「……うん、来てよかった…。」

と言って、レイラの方を向き、手を差し出して

「……材料、取りに行こうか。」

と言う。

レイラは王子の手を取り、笑顔で頷いた。

その時、2人の間にムカデに羽が生えたような虫が、ビーンという羽音をたてて通り過ぎた。

レイラは「キャー!!」と大声をあげてうずくまる。

王子はその虫を見て

「あ、あれは!!
 ムカデバチやないか!
 正式名称は『銀羽百足(ぎんばむかで)』と言って、薄暗い場所を好むため、なかなかお目にかかれない貴重な虫やで!!
 オレも図鑑で見たことあるだけや!
 すごい、めちゃくちゃ間近で見れた!」

と、大興奮。

その後も、奇妙な虫が続々と現れて、レイラは叫び、王子は虫のうんちくを語った。

ようやく必要な材料を集め終えた頃には、2人とも泥だらけになっていた。

喫茶店へ戻ると、レイラはすぐに厨房へ駆け込み、王室シェフから教わった通りに『宇宙スープ』を作り始める。

ぐつぐつ、と黒いスープが音を立てる。

最後に、光る木の実とハーブを浮かべた瞬間――

ふわり、と器の中で赤や青の光が揺れた。

「うわぁ……。」

レイラは目を輝かせる。

艶のある黒い深皿の中には、本当に小さな宇宙が広がっていた。

王子も静かに笑う。

「……ちゃんと宇宙になったな。」

レイラはそっとスプーンですくい、一口飲んだ。

「……美味しい。」

その声は、いつになく素直だった。

王子も一口飲み、

「苦労した分、余計美味しく感じるな。」

と満足そうに頷く。

すると次の瞬間。

ブーンという羽の音と共に、ツノの生えた虫が店の中に入ってきた!!

「また虫が入ってきたー!!」

と叫ぶレイラに、王子は落ち着いた様子で虫が止まるのを待ち

「これは俗にいう虹ツノ虫やな。
 正式名称は『星角甲虫(せいかくこうちゅう)』で、宇宙スープのハーブの香りに誘われて入ってきたんやろな。
 晩餐会でも時々入ってくるで。
 大人しいし、害ないし、よう見ると可愛いで。」

と言って、虹ツノ虫を優しく摘んで、レイラに見せた。

「キャー!!
 足が8本もあるし、なんやギザギザしてるー!!
 お腹のところ気持ち悪い!!」

「レイラ、ここはお腹やなくて胸やねん。
 みんなよう間違えるけど。」

「胸でも腹でもどっちでもええねん!!
 2度と宇宙スープ作らん!!」

レイラは宇宙スープを一気に飲んで自室に籠ってしまった。

そして、宇宙スープは2度と作られなかった。

おしまい。

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