【MYOG】サコッシュ制作ノート《前編》#5
パタンナー島村です。5回目の投稿になります。
今回は、MYOGで作ったサコッシュができるまでの過程を説明しようと思います!何か物を作るときにどんなことを考えているのかを具体的に書くことで、ものづくりをしている方や始めたい方の参考になればよいと思っております!また、今回、制作したサコッシュの説明も併せてしていきます。
つまりこれらはサコッシュ(Trunche 1)制作ノートになります📔それではいってみましょう!
はじめに
MYOGを始めて最初に作ろうと考えたのはULのアイコンであるサコッシュ。
前提としてアウトドアの服やギアは、特定のアクティビティに対して適合する形でデザインされる事がほとんどです。そして、ULの考え方(2つの用途を1つにまとめたり、ミニマルで引き算するデザインなど)に沿う形でものづくりをすると、どうしても市場にあるULブランドが作るサコッシュと似たものが出来てしまいます。
やはりパタンナーである自分は、【明確な目的や用途、思想によって制度の枠組みが強固なものとなったときに収束されるデザインの探求】ではなく、それらの外で物作りがしたいとどうしても考えてしまう訳です。
そして、UL素材だからこそ幅広い可能性があるデザインによって、※独自性のあるサコッシュを目指して作りたいと考えました。
※独自性のあるものづくりを可能とする方法論は、現在執筆中です。哲学者のロランバルトやソシュールの本などを用いて0→1のデザインをする為の方法論を作っています。とても面白いのでもう少々お待ちください!
①まずは言葉の意味から考える
サコッシュというカテゴリー(類)の中で、原型を作る必要があるので、まずはサコッシュの意味を調べました。
サコッシュ(Sacoche)とはフランス語でカバン・袋を意味します。 サコッシュの始まりは自転車のロードレースでドリンクや補給食などを入れるために使われていた肩から掛けられるバックに起源します。競技中の邪魔にならないように軽く、荷物の取り出しに優れているのが特徴です。
その使いやすさ、機能性がよかった為、アウトドアメーカーなどが一般向けに作るようになり、今ではフェスや山登りなどアクティブなシーンで愛され続けているアイテムなのです。
要約すると、アクティビティの中でスムーズに荷物の出し入れが可能となる肩掛けのかばんのことです。その定義を踏まえた上で用途•目的に合うようであればサコッシュという名称で呼んでも良さそうです。
②ラフ画を描いてみる
素材を触ったりして感じる印象なども考慮しながら作りたいイメージを固めてデザインするやり方もしたりしますが、素材が明確に決まっていなかったので、まずは手を動かして簡単にラフ画を描くことから始めました。

③とりあえずひとつ作ってみる

それで出来たのがこれです。
👇


④たくさん失敗して改良を重ねる
肩紐をつける前にこれは色々失敗した!と思っていました。そしてこれは次により良くする為の情報が見えたというものづくりのヒントを得たということになります。
具体的な失敗を言語化してみましょう。
【サコッシュ原型へのヒント】
●肩紐テープは両サイドから生やすとサコッシュのシルエットが崩れてしまう為、肩紐テープを生やす場合は上に生えるようにした方が良い点
●メッシュのギャザー分量とメッシュ形状がミスマッチ。ここは登山中にすぐに取り出しやすいもの(携帯やティッシュなど)を入れる想定をしていたのでもう少し高さを出したいし、ギャザー分量少なすぎるのでシルエットにメリハリが無い。そもそもメッシュにギャザーそんなにあっても?という気がする。
●シルバーの再帰反射はストレッチ性が無いのでカーブした縫い目に入れ込むと波打ちが出るのでこの意匠性は微妙。フラップも兼ねた形状にしたが、色々ダサい…
●そして何より全体の※調和(ここでは素材は自宅にあるものを使ったので、デザインと仕様の事を指す)が全く取れておらず、ティッシュケースみたいな印象を受ける。とにかく不調和!!!心が感じる不快のオンパレード!!!
※自分が考える調和とは、デザインと仕様が無理をしない状態(工程分析表を作ったときになるべく早く一本の直線になるような縫う人が作りやすい仕様だったり、素材特性を最大限に生かすデザインと仕様)や色彩や形態などをリズムとして感覚的に捉えて心地よい配置が出来ている事と定義しています。マニアックな話ですが、こちらの記事の事をいっています。良かったら見てみてください。
それらの失敗を生かして次に作ったのがこちら👇


《2代目を作る際に、変更した点はこちら》
●肩紐テープは上側に向くようにした点
●再帰反射テープを止水ファスナーに挟み付けた点
●メッシュをやめて、タックを入れ、
サコッシュの容量とシルエットを変えた点
まだまだ失敗は出てきます。附属との相性が良くないものなどの失敗もしてきましたが、長くなるので割愛します。現状Trunche1で使っている附属の相性が個人的にベストだと思っています!
👇こちらから確認頂けます!(パソコンからでないと正確に開けません泣)
《3代目を作る際に、変更した点はこちら》
●止水ファスナーの見え幅を細くする為に再帰反射を付けましたが、この再帰反射テープが水につけるとかなり保水する事が判明したので、この仕様は無しに!
そして3代目はフラップを付ける仕様に変更した点。
●再帰反射がなくなったので、下側の空間に意匠性を持たせた再帰反射コードを通し、切替を入れています。
※防水素材に切替を入れすぎるとそこから水が入ってくるので相性は良くないです。
ここから若干Trunche1と似たデザインが見えてきます。2代目では、普通に使えるサコッシュは出来ましたが、所々微妙なところがあったので1箇所ずつ、つまみ出して考えていきました。3代目では2代目の失敗を生かして作りましたが、まだ多くの課題が残ります。
そして着用した際の形状が使いやすくないという致命傷がありました。そもそも服のパターンしか作った事がなかったので立体形状を平面に起こす作業の感度(どこにどのくらいの分量を入れれば頭の中でイメージした形が出来るのか)が分からなかったのでここで紙粘土を購入して模型を作りました!
ドレーピングというボディに布を当ててパターン作成をする手法をMYOGに取り入れました。そうする事でより正確なパターン作成ができるのです!





だいぶTrunche1のデザインに近づいてきました。ここからデザインと仕様の整合性をとる為に色々と思考しますが、行き詰まりました。。ファスナーの位置がデザインと相性が良くない為、変えたかったのですが現状の仕様だとどうしても、悩んでしまうのです。
(ここをこうすると?…あ!、でもそれだとあの工程がしんどいよなぁ…みたいな事を頭の中でぐるぐると駆け回っているのです😂)
行き詰まった時には一度フラットな状態にして考える事をやめます!ランニングしたり、海辺で散歩している時などのポケ〜としているとふと思いついたりするのです!(行き詰まった時におすすめ)
そうしているとふとカチッとハマるのでは!とデザインが浮かんだのですぐに日記の切れ端でイラストを描きました。それがこちら👇

そしてそれをすぐに形にしました!夢中に作っていたら気づけば朝に…笑


Trunche1の理想の芽🌱

⑤フィールドテストをしてみる
そしたら早速フィールドテストの為に武甲山へ登りました!⛰高校の登山部の頃によく登っていましたが、社会人になってからは行けていなかったので久しぶりの武甲山でした✨

元気だね!と言われました。
[はい、元気です!!」(埼玉県人しか分からない)

おおよそ使いやすく登れたので使用感は問題なかったです。一部改善点はありましたが、それは作品説明の時に記載します。
⑥量産用の生地と附属とパターンを用意する
ここから本番の生地とパターンを揃えていきます!洋服の量産では、バルクの生地や工業用パターンなどと言ったりします。それらを集めていきます。
パターンはサンプルまではペラペラのパターン用紙(ハトロン紙)で作っていましたが、量産用に厚紙で作ります。


本番用の生地はダイニーマを渋谷のA&Fというアウトドア用品店で事前に購入していましたが、それ以外の生地などを日本橋にあるTRAILS Innovation Garageで実際に実物を見ながら決めました。店員さんも丁寧に色々と教えてくださりとても勉強になりました。そして何より店舗がMYOG好きにはたまらない空間になっていてこういう所に住みたいなと思いました!笑
👇ULハイカーやMYOGに興味ある方におすすめです!



気になる生地や附属を購入しました!
そして、MYOGサコッシュにはあまり使われないリングなどの細かなパーツや生地は新宿のオカダヤや日暮里のトマトなどでも一部購入しました。
ようやく本番の縫製に入ることができます!
ファッション業界では量産前に一度量産用の生地、仕様、パターンで先上げサンプルというものを作ります。いわゆる量産テスト用サンプルです。
ここで可縫性(縫製に於いて、デザイン•仕様•生地の物性等の相性確認のこと)確認をして量産で起こりうる事故や製品がお客さんに届いた後での事故などが起きないように未然に防ぐ工程を入れることが非常に大事なのです!
それに倣って、1度先上げサンプルを作りました。この時にサコッシュの作り方をnoteにも公開し、頭の中で整理した工程分析をアウトプットしました。
サコッシュには中々ない26パーツ・30工程という凝った作品が出来ちゃいました!笑
👇こちらからご覧頂けます。
販売を前提とした考えでは作っていないので、このサコッシュになりましたが、もしも販売をして利益を出すことも視野に入れる場合は、ここから機能性を維持しつつデザインを見直し(見た目は変わらないように)工程をよりシンプルにして、工場に外注するのがベストです!
(工場に外注するにはロット問題をクリアできる規模感が必須ですが)
MYOGでは制約をできるだけ無くして自由にものづくりをする事が醍醐味だと思っています

この先上げサンプルでも良かったのですが、まだ試したいことがあり、もう1点作りたいなと考えに至り再先上げを作ることになります…!その試したいことは背面にウレタンフォームを入れ込むことです。これを入れる事でシルエットが綺麗に出るメリットと高級感を出すことが出来ます。
5代目のサコッシュでは5㎜のウレタンフォームを入れましたが、厚すぎたので3㎜に変更し入れて見ました。その2つを比べてみて良いなと思った方を本番に取り入れてみることにしました。
⑦インスタ用の撮影をする
この先上げサンプルは撮影用サンプルとして使うことにします。






写真はひたすら良いなー!と感じる写真が撮れるまでひたすら撮り続けました。(ハイキングコースで1人でパシャパシャしていたので恥ずかしかったです)
⑧プレゼント企画用に5つ量産
2つの先上げサンプルを作り終えて最終確定したら量産に入ります。ミシンが1つしかないのでここでは出来るだけ糸の交換や押さえがねの交換は少なくなる順番で縫製していきます。ゆっくりと丁寧に縫製しました!
インスタのリール用の素材もここでたくさん撮っていきます。

作品説明をする前に5000文字くらいになってしまったので1度ここで前編とさせて頂きます。次の後編では実際にプレゼント企画で作ったサコッシュのディテール説明や使い方の例などを公開します!お楽しみに下さい!
さいごに
昨年からインスタでアウトドアの情報発信を始めてみました! 学ぶこと、作ること、使うことの3つの軸で色々と有益な情報やプレゼント企画をしていきます🔥
次はMYOGで財布を作ってプレゼントしていきます🎁今まで財布を何回も落としてきた自分が作るもう絶対に落とさない財布というテーマで作っていこうと思います!現在試作品段階中です。随時インスタのストーリーで公開しています!

アウトドアについて体系的に学ぶことができ、アウトドアの遊びがより楽しくなれるような発信をしていくので興味がある方は是非覗いてみてください😊
