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五輪コーチの実践から学ぶ〜負荷設定の基準と疲労管理〜


臨床のリアルと迷い

私たちは、「痛み」を持つ方へ施術を行うことが多いです。
これは、いかに元の「痛みのない状態」へ近づけるかです。

スポーツの指導は違ってきます。
これは、元の状態からいかにパフォーマンスを上げていくかです。

もちろん障害予防という観点も重要ですが、このパフォーマンスを上げるかという観点は、非常に難しいイメージです。

日々の臨床でも、痛みがなくなってきた、可動域が戻ってきた、筋力が戻ってきた方に、プラスでパフォーマンスを上げていくことができれば、セラピストとして非常に有能だと思います。

「パワー」や「スピード」といった要素をどう引き出し、どうプログラムを組むかについて、確固たる基準は正直ありません。

今回は、ブラジルのオリンピック短距離・跳躍競技コーチたちが実際に行っているトレーニングのデータから、現場での負荷設定やプログラミングについて考えてみたいと思います。

知見の整理と道標

ブラジルのオリンピックスプリントおよびジャンプ種目のコーチ19名(平均指導歴約26年)を対象とした調査が報告されています。

  • 固定された計画からの脱却
    伝統的で固定されたピリオダイゼーションモデルを使用しているコーチは約31%にとどまり、半数以上のコーチが、選手のその日の身体反応や過密な試合日程に合わせてプログラムを調整する柔軟なアプローチを採用しています。

  • 「速度」という客観的指標の導入
    負荷量の決定において、半数近くのコーチが加速度計などを用いた「挙上速度(Velocity Based Training: VBT)」を基準にしています。

  • 時期に応じたメリハリと疲労管理
    オフシーズンはボリュームを増やして基礎を築き、シーズンは試合に向けた疲労を最小限に抑えるため、ボリュームを大胆に落として高い強度(質)を維持する工夫がなされています。

  • 高度なトレーニング順序の意図
    一般的に疲労のない状態で行うべきとされるプライオメトリクスを、あえてウエイトトレーニングの後に行うコーチが多数存在しました。これは、先行する強い筋収縮の刺激を利用して直後のパフォーマンスを高める「活動後増強(PAP)」を狙った特有の戦略です。

臨床への落とし込みと深掘り

これらの知見を、どう落とし込むべきでしょうか。

第一に、「重さ」や「回数」だけでなく「速度」を評価の基準に加えることです。

ただ、速度を測るのにはなかなか高度な器具が必要かもしれません。
まずは、
前回と同じ重さ・回数で、行うスピードが落ちていないか?
を観察することから始めましょう。
神経系の疲労や出力の低下に気づくことで、疲労感などアスリートの体の異常に気づくことができます。

第二に、プログラムの「柔軟性」です。

上記にも共通しますが、目の前のアスリートの状態を重視し、柔軟に対応してくことが必要です。日々の疲労度、コンディション、対話を重視し、その日の負荷を微調整するプロセスこそが、怪我を防ぎパフォーマンスを高める鍵となりそうです。

第三は「順番とリスク管理」です。

今や、多くの人がSNSなどで、さまざまな高強度のトレーニングを目にする時代です。
「活動後増強(PAP)」は、確固たる筋力基盤と技術を持つエリート選手だからこそ成立する、高度でリスクの伴うアプローチです。
基礎ができていない方がこれを行えば、疲労によるフォームの崩れから怪我へと繋がることもあります。
トレーニングを行う順番、種目をしっかりと考え、時にブレーキをかけることが私たちの役割だと思います。

締め

エクササイズ中のスピードに目を向け、目の前のアスリートの疲労やパフォーマンスを見てください。決められたメニューをこなすことよりも、反応に合わせて負荷を調整する柔軟さを持つことが重要です。
より現場に寄り添った、本質的なリハビリテーションを提供しましょう。

参考文献

Loturco, Irineu, et al. "Strength and Conditioning Practices of Brazilian Olympic Sprint and Jump Coaches." Journal of Human Kinetics 86 (2023): 175-194. doi: 10.5114/jhk/159646.

ブラジルのオリンピックスプリントおよびジャンプコーチのストレングス&コンディショニングの実践

ではでは。
#整形外科 #理学療法士 #リハビリテーション

ご覧いただきありがとうございました。

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