小胸筋の解剖学的バリエーション
参考文献
AlHarbi Y. (2023). Anatomical Variations in the Pectoralis Minor Muscle Origin and Insertion: A Systematic Review. Cureus, 15(10): e46329. doi:10.7759/cureus.46329
小胸筋の起始部と挿入部における解剖学的変異: 系統的レビュー
とりあえず内容を知りたい方はここ(論文の要約)
このシステマティックレビューは、小胸筋の起始部と停止部に注目し、解剖学的なバリエーションをまとめたものです。
肩の痛みや可動域制限の原因として、小胸筋(pectoralis minor muscle, PMi)の解剖学的変異が関与している可能性があるという視点から今回の調査が行われています。
結果、小胸筋の起始は第2〜第5肋骨と幅があり、性別でも差があることが判明しました。
さらに停止部も烏口突起(coracoid process)に限定されず、腱板、関節包、あるいは棘上筋腱に及ぶ例もありました。
このような変異が存在することで、肩峰下インピンジメント症候群、腕神経叢や腋窩動脈の圧迫といった臨床症状に繋がる可能性が示唆されています。
ポイントと感想
●小胸筋の起始、停止にはタイプ別の分類がある
本レビューでは、小胸筋の付着様式を以下のように分類しています。
タイプ1:深層部は通常通り烏口突起に付着。表層部がより近位の構造を越えて走行。
タイプ2:大部分の筋線維が烏口突起に付着しつつ、少数がその先まで到達。
タイプ3:筋全体が烏口突起を越えて滑液包を介し分離される。
つまり、「小胸筋は烏口突起に付いている」という教科書的な理解だけでは不十分であり、動作時の筋の滑走性や肩甲骨の位置異常に関与している可能性があります。
●起始部の性差も重要な視点
Hojoら(1987)の報告によると、小胸筋の起始部は男性で第3〜第5肋骨、女性で第2〜第4肋骨に多くみられました。解剖学的差異が性別でも異なるという点は、評価・治療の際の視点として押さえておくべきポイントです。
●中間大胸筋(intermediate pectoralis muscle)という存在
また、面白い情報としてこのレビューでは小胸筋の変異として中間大胸筋(IPM)にも言及されています。
起始は肋骨、停止は烏口突起に加えて腱板や関節包に達する例もあり、肩関節の安定性や可動域制限に関与している可能性が高いです。
ではでは。
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