慢性腰痛(cLBP)と姿勢制御の関係を探る|メタアナリシスの視点
参考文献
Park, J., Nguyen, V.Q., Ho, R.L.M. et al. The effect of chronic low back pain on postural control during quiet standing: A meta-analysis. Sci Rep 13, 7928 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-34692-w
研究概要
腰痛(LBP)は、静止立位時の身体動揺と関連していることが示唆されていますが、そのパターンは一貫していません。今回紹介するメタアナリシスは、慢性腰痛症(cLBP)患者における姿勢動揺の変化を視覚(開眼・閉眼)および支持面(フォーム面・硬い面)の影響を考慮しながら検討しています。
研究デザイン
データ収集:5つの電子データベースを2022年3月27日に検索
対象研究:16件(n=663)
評価指標:姿勢動揺の大きさ(CoPの変位量)
主要結果:
cLBP患者はすべての条件で姿勢動揺が増大(g = 0.77 [0.50, 1.04])
視覚なしの条件(閉眼)では、特に動揺が増加(g ≧ 0.89)
自己申告の疼痛強度が高いほど、動揺が顕著
この結果から、cLBP患者は視覚依存が強く、固有受容覚の変化により姿勢制御が不安定になる可能性が示唆されました。
introductionから既存の知見を読み解く
1. 慢性腰痛患者は静止立位時に不安定になりやすい
cLBP患者は、静止立位時のバランス維持に困難を抱えることが報告されています(Koch & Hänsel, 2019; Nogueira et al., 2020; Meier et al., 2019)。
また、腰痛を軽減するために体幹の動きを制限する傾向がある(Meier et al., 2019)。
2. 姿勢制御の変化|足首主導の戦略へのシフト
通常、姿勢制御には体幹が大きく寄与します。しかし、
腰痛により姿勢制御が腰椎から足首へ移行する(Koch & Hänsel, 2019; Ruhe et al., 2011; Berenshteyn et al., 2019)。
足首による姿勢制御は動揺の増大を引き起こす(Maheri et al., 2013; Brumagne et al., 2008)。
ただし、
視覚フィードバックの有無に関係なく、CoPの動揺が小さいとする研究も存在(da Silva et al., 2018; Lafond et al., 2009)。
cLBPの有無でCoPに差がないとする報告もある(Popa et al., 2007)。
3. 姿勢制御のシフトは問題となるのか?
姿勢制御のシフトが示されているものの、体幹が姿勢維持の主要な役割を果たすことが明らかになっており、足首主導の制御は非効率的である可能性が高い(Shumway-Cook & Woollacott, 2007)。
このため、cLBP患者における姿勢制御の特徴は、 ✅ 体幹の可動性低下 ✅ 固有受容覚の変化による足首主導の姿勢制御 ✅ 視覚への過剰依存 といった要素が関与していると考えられます。
急性腰痛 vs. 慢性腰痛|姿勢動揺の違い
急性腰痛
痛みを回避するために多様な動作戦略を試みる
体幹の硬さが少なく、姿勢動揺が少ない
慢性腰痛
運動のばらつきが減少し、体幹の硬さが増大
結果として姿勢動揺が大きくなる
このことから、腰痛の急性・慢性・再発性の違いを明確に区別することが、姿勢動揺との関係を理解するうえで重要であると考えられます。
個人的なまとめと臨床応用
✔ cLBP患者は姿勢制御の不安定性が増し、特に視覚依存が強い
✔ 体幹の硬さの増大と固有受容覚の変化が、姿勢制御の足首依存を引き起こす可能性
✔ 急性腰痛と慢性腰痛では、姿勢動揺のパターンが異なるため、それぞれに適した介入が必要
腰痛のリハビリテーションにおいては、
視覚情報に頼らず、固有受容感覚を強化するトレーニング
体幹の柔軟性を高め、過剰な剛性を減らすアプローチ が重要な戦略となりそうです。
ではでは。
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