100年の時を越えて、リリヤーンのマクラメバッグを再現するプロジェクト
こんにちは、 owarimao です! 年度替わりの慌ただしさと、花粉症の発症の中で、相変わらずマクラメをやっております。
先週は古い本の中から、リリヤーンを使ったマクラメバッグの写真を見ていただきました。
リリヤーンは大正12年に日本で生まれ、昭和初期のマクラメブームのときに大人気だった素材です。

上の作品を考案された、河野富子氏の文章も読んでみてください。
日本に於て現代程此の(注:手芸の)発達の目覚ましく且つ華かな時はないでせう。マクラメレースの流行も其の中の一つでございます。
斯くて異邦に薫りし技芸の花は今や日本の沃土に咲き誇り、都会より村落へと香気を伝へ、到る處の家庭に店頭に其のしをらしくも美しき姿を見せる様になりました。私は嘗て英国に居た頃此のマクラメレースに注意を惹かれ、適当なる参考書を得て帰朝致し、爾来種々研究工夫を重ねつ々今日に及びましたが、此の度三瀬商店の婦人手芸全集発行の美挙を賛し、不肖私が筆を執って自分の考案に成る数十種のものを幾萬の姉妹方に発表する機会を得ました事を深く喜ぶと同時に、読者諸姉が尚ほ一層の研究を積まれて、最も勝れたる多くの製品を得られんことを切望する次第でこざいます。
なんとも堂々たる名文ですね。ここまで力説されたら、こちらも頑張らないわけにはゆきませぬ。
本の中で推奨されているリリヤーンは、100年たった今でもネットを通じて入手できます。せっかくなので、上の写真のような精巧でノスタルジックな手提げを、ぜひ再現してみたいと思います。
材料はこれですが、現物を見て買うことができないので、色を選ぶのも不安です。

2束でじゅうぶんだった
河野先生の指示では「青磁色と薄橙色」なんですが、どんな色合いかうまくイメージできないです。とりあえず無難にいくことにして、オフホワイトを5束、薄黄色を1束注文しました。

1本ずつ輪にして結んである
さて糸を切りそろえるのも、一筋縄ではいきません。河野先生はまだ尺貫法で書いておられるのです。
同時代の別の本ではメートル法のあとに尺貫法を併記してありますが、河野先生は持ち手用の糸として「八尺」とだけ。
1尺は30,303cm なので、8尺は 242,4cm にもなります。白を12本、黄色を4本切ります。これが持ち手の分。本体の分はまたあとで切ることにします。
作り方には順序があって、まず持ち手の真ん中から作り始めます。
242cmの糸の真ん中をピンで止めて、16本並べます。
そしてこんな模様を作っていくのですが、本の中に図はなくて、言葉による簡単な説明だけです。その説明と写真をかわるがわる見ながら、なんとか正しい結び方にたどりつきました。

上のような模様を全部で6回くり返します。でもある程度作ったところで、重大なことに気づきました。
「手の長さは六寸」
という規定が、文章の中にさりげなく隠れていたのです。
できあがり寸法がぜんぜん書いてないと思っていたら、こんなふうに「ついで」みたいに書いてくださる。昔の本の手ごわいことといったら……。
正方形の模様6回で6寸なら、模様1つの幅は1寸=3,03cm になります。でも私が作っているのは、それよりは明らかに大きい。つまり結びがユルすぎるのです。
(……。)
やっぱりね……こういうことはあると思った。今までのなりゆきからして、一つも失敗せずにスラスラと作れるわけがないのですよ、こんな複雑なものを。
せっかく作ったいくつかの模様を、全部ほどくはめになりました。でもそのおかげで、リリヤーンのすばらしい特性に目覚めました。
マクラメで難しいことの一つは「ほどきにくい」ということです。ちょっとでも間違えると、ほどくのが難しくてうんざりします。レース針の先で根気よくつついてゆるめるのですが、甘撚りの糸だと撚りがほぐれてしまったりします。
しかし!
リリヤーンは、とてもほどきやすい。かなりきつく結んだ糸も、少しつつけばするっとほどけます。しかもほどいたあと、結び癖がほとんどついていません。これはありがたいです。
リリヤーンが1世紀にわたって愛用されてきた理由の一つは、こんなところにあったんですね。私のようなせっかちな者にはぴったりの素材だと思いました。
リリヤーン万歳!
さて方眼罫の紙に寸法どおりの線を引いて、型紙を作りました。斜めの線も引いておくと便利です。マクラメボードに貼り付けて再スタート。



持ち手ができたら、続けて本体を作ります。
あとから持ち手を縫いつけたりするんじゃなくて、同じ糸で、本体と一体化させるんです。
本体の糸は5尺(151,5cm)。これを白36本、黄色12本用意します。切るだけでも時間がかかるよ。芯糸を別に用意し、水平に渡して、そこになるべく間隔をそろえてたくさんの糸を結びつけていきます。

本体は筒状に作っていくのですが、そのためには、筒の中に入るくらいの小さいボードが必要になります。
近所のお店に売っていたのを思い出して買いに行ったら、運悪く品切れでした。
以前タティングレースを飾るときに使った、100均のコルク板の切れ端で間に合わせました。




でも小さくて軽いので、作業中に動いてしまう
裏にテッパンでもついてたらどうかな

また来週!
