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#001【屋内でも“現在地”がわかる】ってどういうこと?〜便利そうで、実はむずかしい屋内測位の話(前編)〜導入する前に知っておきたい3つのこと

はじめに

「屋内の人やモノの位置を把握できたら便利だろうな」

そう思って、屋内測位に興味を持つ企業が増えています。

Wi-Fi、BLE、UWB、画像認識など技術の選択肢も多く、どれが良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。

でも、導入がうまくいかなかった…という声も少なくありません。

今回は、現場での運用や実装支援を通じて感じた「屋内測位でよくある3つのつまずき」をやさしく整理してみました。

導入前にちょっと立ち止まって、考えるヒントになれば嬉しいです。

地図と測位とデータを取る目的

スマホ地図・カーナビとスマホのGNSS測位


屋内測位手法の前に、地図データのと測位データとの関係を整理しておきたいと思います。

近年、自己位置を測定し、マップ上に表示できるサービスが増えてきました。

一般的なカーナビ、インターネットの地図は、2万5千分の1をベースに作成されています。

この2万5千分の1という地図は、地図上で1mmがリアル世界では25mです。

スマホなどで利用されている一般的なGNSSの±10mを利用してもさほど問題なく利用できてきました。

GNSSでもcm級に測位できる方法がある

一方で、ドローン自動航行・トラクター自動運転で実用化されているRTK-GNSSの技術を利用すれば、cm級の精度が安価に提供できるようになっています。

もちろん、GNSS衛星の電波受信環境が十分にあることが条件となりますが、これらの環境では、高精度な地図を利用して、移動先地点を正確に示してあげる必要があり、地図生成システムとセットで利用することが一般的です。

GNSSが利用できない環境ではどうなる?

GNSSの電波受信環境が悪い屋内では、測位に利用する技術によって、どのような基地局やインフラを整備すればよいか?が異なります。

地図は建物図面などを活用して地図を生成することは可能ですので、そのうえで地図精度に合わせた測位手法を選択することが重要です。

先程の例でいうと、カーナビ上の地図の上で、cmレベルの測位を大きな投資をして実施することはあまり意味がないことがわかるかと思います。

詳しい手法の種類は後ほど述べます。

何のために測位するのか?

最も重要なのは、何のために位置を取得するか?という点です。

当然のことながら、目的に応じてデータの取得の要件が変わります。

私がいつも以下4つをどうしますか?というのをお話しします。
 ①測位精度
 ②データ頻度
 ③データ鮮度
 ④付加属性

たとえば、「トラックで東京から大阪へ移動する間のドライバーさんがどこで休憩したかをを把握したい」ということが目的であれば、
 ①測位精度  100m精度
 ②データ頻度 5分間隔
 ③データ鮮度 走行終了後
 ④付加属性  エンジンOFF/ON
の情報があれば十分です。

屋内測位でも同じです。

ただし、①②③④の要求がハイレベルなほど、コストに跳ね返ってくることに注意が必要です。

屋内測位の手法について


「目をつぶって5感を最大限に生かして自分の場所をイメージしてください。」

と言われた時、皆さんはどうやって自分の位置を把握できますか?

手法と呼んでいるのは、五感のうち何を使うか?というのと同じです。 

近年、IoTセンサー、画像認識技術が急激に進化しているため、人間の五感以上の感性を利用できる技術が多くでています。

 代表的なものをお話しします。

★電波式 

電波式は電波強度、位相、進入方向を使って、3点測量をする方法です。選択する機器によって規格が異なり、測定範囲や距離が異なります。
 例)
  Wi-Fi
  UWB
  BLE(ビーコン)
  ※ 近年では、AoA,AoDを活用して精度を上げる製品や、
    デバイス同士の電波強度の関係を数式で解いて、
    デバイス同士の位置関係から位置測位をする製品もあります。

メリット ) 汎用品を活用できるため、基地局数を打てる
       真っ暗な空間でも測位できる。 

デメリット) 電源工事/電池交換のコストが大きく、短期間の利用に向   
       かない。         
       電波が目に見えないため、間違っていても判断がつきに 
       くい。
       電波を遮断したり反射する壁等に弱い。
 

★IMU,PDR

IMU,PDRは、加速度センサーを利用して、慣性によって位置を測位する方法です。

絶対位置は測定できないため、電波式等と併用して精度を上げることが可能です。

メリット ) 基地局などインフラを必要としない。
       真っ暗な空間でも測位できる。 

デメリット) 移動時の振動や端末操作による振動に弱い。

★画像認識式

画像認識式はSLAMとも呼ばれ、AGVやARの領域でも多く利用されている技術です。

人間でいうと、目で見て景色が変化するのを把握して測位をする方法です。

近年では、事前サーベイ不要な相対位置測位が可能なタイプがあり、以前のように事前サーベイ無しですぐに試せるものがあります。

メリット ) 基地局などインフラを必要としない。
       事前サーベイの工数が少ない。

デメリット) 振動を抑制装置が必要である。
       カメラの起動が必要である。         

        
★地磁気式

地球磁場と建物形状が生み出す、磁場強度を測定し、
この磁場強度の変化を計測することで、測位をするものです。

地球磁場は非常に弱いものですので、電波式と併用して精度を上げることが可能です。

メリット ) 基地局などインフラを必要としない。

デメリット) レイアウト変更の度に、事前サーベイの工数が大きい。

屋内測位で気になる点

屋内測位におけるZ方向とは?

いろんなサイトを調べてみても、あまり触れられていないのですが、意外と難しいのがZ方向です。

GNSSの場合は、NMEAにX,Y,Zのフィールドがあるので、これを利用できると考えた方も多いかもしれませんが、

Zってそもそもどこからの高さなのか?

というと、ジオイド面から距離になりますので、海抜0mからの距離ではありません。

相対位置を計算するのであれば利用できます。

最近では、地面から離れるにしたがって、気圧が下がる原理を利用して、気圧計を活用するケースも多く出てきています。

ただ、建物の中の場合はどうかというと、

地面から10mの地点は、2階なのか3階なのか?

という議論を解決しないといけなくなります。

屋内測位の利用シーンから考えて、一般的にはフロア特定のために、
入口、出口に電波式or紙式Arcoマーカーを配置し、マーカーをトリガーにして、フロア認識するのが一般的な方法になります。

見落としがちな3つのポイント

1. 精度ばかりを気にしてしまう

「精度はどれくらいですか?」という質問は多くの現場で聞かれます。

たしかに精度は重要ですが、「業務上どの程度の誤差が許容されるか?」という視点が抜けてしまっていることも多いです。

たとえば、±30cmの誤差があっても現場オペレーションに支障がないケースもあれば、数cmのずれが致命的になることもあります。

必要なのは、“精度”そのものより、“目的に対して妥当な精度かどうか”という判断です。


2. 測位できること自体を過大評価してしまう

位置が取れるだけで、すぐに業務改善につながるわけではありません。

「位置をどう使うか」「どんな意思決定やアクションにつなげるか」がセットでなければ、単なる“情報があるだけ”の状態になります。

実際に多いのは、「とりあえず位置を取ってみた」あとに、「で、これをどう見ればいいんだっけ?」という声です。

測位はあくまで手段。活用設計とセットで考えることが欠かせません。


3. 技術的にできても、運用が続かない

技術的には実現できることでも、現場での運用が回らないことで使われなくなる例は非常に多いです。

たとえば、

  • タグの充電が面倒

  • 利用者がタグを持ち忘れる

  • 担当者の異動で運用が止まる

など、“現場にとって自然な流れに組み込めるかどうか”が、運用継続の鍵になります。

PoCで動いた=本番でも回る、とは限りません。

むしろ本番運用のハードルの方が高いのが現実です。


おわりに

屋内測位は魅力的な技術であり、使い方によっては大きな価値を生み出すことができます。

ただし、導入の現場では「精度」「活用」「運用」の3つでつまずくことが少なくありません。

と、いろいろ並べてみましたが、本当にいろんな製品があります。

測位サービスを提供しているベンダーは、
ハードウェアメーカーか特定ソフトウェア代理店であることが多くなってきています。その製品には非常に詳しいのが最大のメリットです。

最も重要なのは、冒頭にお話しした通り、目的に応じた手法の選定です。

取得データをどう利用したいか?

という観点で、1つの技術にこだわることなく、ニーズに合った手法の選択をお勧めします。

技術として“できるか”ではなく、“使い続けられるか”を見極めること。 そこが、屋内測位の導入を成功に導く重要な視点だと、私は考えています。


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小濱 裕士|MapDX  物流・モビリティ業界向けのDX推進コンサルタント|防災士 ありがとうございます。励みになります

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