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役に立たない百目の対処法

 電車に座って職場に向かっていた時です。スマホに触るのも飽きまして、駅に着くまでぼんやりし始めると、視界に大量の目が入って来たんです。そばの女性が肩掛けしているトートバッグ、それの至るところに目が描かれていたんです。マジで目ばっか。百目がトートバッグに化けているのかと思えるくらいでした。

 なぜそんな前衛的なトートバッグを使っているのかと思ってよく見ると、ただ単に目が描かれているのではなく、猫の顔が描かれていたんです。なるほど、普通の店が販売し、普通の人が購入し、普段使いしても何の違和感もない、可愛らしいトートバッグです。ただ、その猫の色が背景と似た系統だったため、光の加減もあって目だけ見え、私に「うお、百目トートバッグ」という誤解を招かせたんです。

 なるほど、これは思いつきませんでした。百目と言えば全身に目があるという、シンプルな発想で異様な外見となったキャラクターです。うっかり「異様な外見」と格好つけてしまいましたが、早い話、見た目が怖いんです。ただ、そんな怖い百目も、目をふたつずつ猫の輪郭で囲んでしまえばあら不思議、全身猫ちゃん柄の可愛らしい化け物に早変わりするではありませんか。

 ただ、この方法で問題なのは、猫の絵を全身に描き終わるまで百目が悠長に待ってくれているかという問題です。どんなに大人しい生き物だって嫌がってモゾモゾ動くかもしれませんし、凶暴な生き物だったら大暴れするでしょう。爪で引っかいたり牙で齧ったり、全身の目を飛ばして来たりして怪我を負わせられかねない。更に、百目が文字通り100個の目だったら問題ないんですが、もし目が奇数だった場合、ひとつ余ってしまいます。ひとつ目の猫が1匹出来上がってしまうんです。

 無事に描ききったところで、全身猫ちゃんアウトフィットを百目自身が気に入ってくれなければ、何の意味もありません。全身の目から涙を流しながら沼にダイブして、岩に身体を擦りつけながら猫の絵を落とそうとするでしょう。でも、こういう時に限って油性マジックで描いてしまうんです。私はそういう人間なんです。

 百目の怖い見た目をどうにかする。役に立つ場面など永遠に来ない対処法を考えていたら駅を乗り過ごすところでした。もっと油断のない人生を送りたいものです。

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