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どうせ行ってもつまらない

なぜ会社は「出社しろ」と言うのか?

リモートワークは、一時もてはやされた「遠距離通勤」並みか、それ以上の存在感を持つ言葉になりつつありますが、2026年6月15日付のWSJでも取り上げられていました。

“Work From Home Is Here to Stay—Even if Some CEOs Don’t Love It”(「在宅勤務は定着するだろう――たとえ一部のCEOがそれを好まなくても」) と題されたこの記事では、多くの企業が出社回帰を打ち出している一方で、リモートワークはの割合は大きく減ることなく、ひとつの「落ち着いた状態」に入っているようです。

印象的なのは、この記事に寄せられた読者からのコメントです。200近くの書き込みの多くが、リモートワークに肯定的な立場を取っています。働き方の選択肢が広がったというスマートな物言いよりも、「もう以前の状態には戻れない」という切実な心情が吐露されているものが多く見受けられます。

在宅勤務を快く思わない経営層の胸の内

同記事によると、若いCEOの会社や、創業年数の浅い企業ほどリモートワークの比率が高い傾向にあるそうです。ここから見えてくるのは、単なる世代差ではなく、「組織をどう成り立たせるか」という考え方の違いです。成果で評価する前提に立つなら、極論すればどこで働いていても問題はありません。

しかし、従来の組織では「同じ場所にいること」そのものが秩序の一部でした。誰がどこにいて、どんな様子で働いているかを“目にすること”が、安心感につながっていたのです。

メラビアンの法則をご存知でしょうか。

本来は、感情を伝える際に言葉そのものよりも、表情や声のトーンといった非言語情報の影響が大きい、という実験結果を示したものです(55%が視覚、38%が聴覚、7%が言語)。

この法則はしばしば誤解を伴って語られますが、「人は見えているものから強く影響を受ける」という点は示唆的です。オフィスで人が行き交い、会議室で議論が行われている様子が視界に入ると、それだけで「仕事が進んでいる」と感じてしまう、あるいは「管理できている」という納得感が生まれてしまうのではないかと思います。

オフィスという空間は、成果を生み出す場であると同時に、「統治が機能しているように見える」舞台でもあったのかもしれません。

会社が「つまらない場所」になっていないか

リモートワークを支持する声の多さは、「通勤が楽になるから」「子育てに都合がいいから」といった実利だけでは説明しきれません。その根底には、「自分の働き方を自分で選びたい」という意識の変化があります。

一方で、出社を重視する側が訴えるのは、創造性や育成、文化といった、数値化しづらい要素です。そしてその多くは、「同じ場にいること」を前提に語られます。つまりこの議論は、「どこで働くか」ではなく、「そこに行く意味があるのか」という問いでもあるはずです。

ここで思い出したいのが、学校という存在です。

本来は学びの場であったはずの学校の多くが、いつの間にか規律や管理を優先するあまり「つまらない場所」になってしまっています。決められた席、決められた時間、見られていることを前提とした振る舞い。その構造は、どこかオフィスと似ています。

もしリーダーたちが同じ発想で会社を捉えているのだとすれば、会社もまた気づかぬうちに「つまらない場所」になってしまっているのかもしれません。

だとすれば、出社を促す方法はほかにもあるはずです。

ルールや評価で縛るのではなく、「わざわざ行きたくなる場所」にすること。人と会うことに意味があり、議論に価値があり、そこにいる時間が何かを生み出すと実感できる場。そうした環境をつくるための工夫こそ、本来リーダーに求められる創造性です。会社をつまらなくない場所にできたとき、”Return To Office”は命令ではなく、自然な選択として実現していくのではないでしょうか。

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