手術から帰ってきたら徹夜で看病が大変なことに...
六月五日、金曜日。
朝から空は曇っている。
今にも雨が降りそうなので、今日の散歩はきゅうちゃんには休んでもらうことにした。
「きゅうちゃん、今日は休もか」
そう声を掛けると、ソファーの上で寝ている。
雨だから休みたいだけなのかもしれない。
犬というのは、そういうところがある。
昨日は朝から大変だった。
手術の日だったので、僕は早く出なければならなかった。
ところが、きゅうちゃんがなかなかご飯を食べない。
いつもならすぐに食べるのに、この日に限って妙にゆっくりしている。
一口食べては休み。
また一口食べては休み。
「きゅうちゃん、早く食べてくれよ」
はっちゃんも横で、
「ワン! 早くしろ!」
と怒っている。
それでもきゅうちゃんは、のんびり食べている。
もしかすると、僕が病院へ行くのを知っていて、わざと時間を延ばしていたのかもしれない。
ようやく食べ終わった。
「よし、行こう」
と思ったら、今度はじゅんちゃんと茶太郎が、
「にゃー! にゃー!」
と鳴き始めた。
まるで、
「行くな!」
と言っている。
玄関まで行くと、みんなが見送りに来てくれた。
正直、この時点でかなり帰りたくなった。
手術なんてしたことがない。
怖い。
途中で、
「やっぱり今日はやめます」
と言って帰ろうかと思ったくらいである。
しかし、病院に着いてしまった。
もう逃げられない。
ところが、実際に手術が始まると、思ったほど大したことはなかった。
麻酔が効いているので痛くない。
「え、もう終わったんですか?」
というくらい、あっという間だった。
手術は無事終了。
あとは骨がちゃんとくっついてくれればいい。
そして、急いで家へ帰った。
玄関を開ける。
すると、みんなが待っていた。
しかも、ただ待っているだけではない。
それぞれ何かを持っている。
じゅんちゃんはエビのおもちゃ。
きゅうちゃんは鮭のおもちゃ。
はっちゃんはボール。
茶太郎はお気に入りの鳥のおもちゃ。
四匹がそれぞれ、自分のお気に入りを持ってきている。
「おかえり」
「大丈夫だった?」
「これ、あげる」
そんなことを言っているように見える。
これはちょっと感動した。
病院へ行っている間、ずっと心配してくれていたのだろう。
……たぶん。
そのあと、みんなにおやつをあげた。
すると全員、急に静かになった。
分かりやすい。
そして夜。
僕が寝ようとすると、四匹が僕の周りに集まってきた。
右側には、はっちゃん。
左側には、きゅうちゃん。
お腹の上には、じゅんちゃん。
茶太郎はその周りをウロウロしている。
どうやら今夜は、四匹総出で看病してくれるらしい。
ありがたい。
本当にありがたい。
ただ、夜中に問題が起きた。
「コツン」
頭に何かが当たった。
「コツン」
また当たった。
何だと思って横を見ると、はっちゃんが仰向けで寝ている。
そして後ろ足を、
バタバタ。
その足が僕の頭に当たっている。
「はっちゃん、頭こつくのやめてくれ」
そう言っても、はっちゃんは起きない。
完全に寝ている。
どうやら夢でも見ているらしい。
そこで僕は、きゅうちゃんに頼んだ。
「きゅうちゃん、はっちゃん寝相が悪いから、起こしてくれ」
すると、きゅうちゃんも、
「うーん……」
という感じで寝ている。
君も寝るのか。
仕方がない。
今度はじゅんちゃんに頼む。
「じゅんちゃん、はっちゃん起こしてくれ」
すると、じゅんちゃんは本当に起こしに行った。
はっちゃんのほっぺを引っ張って、
ふみふみ。
ふみふみ。
「おお、これなら起きるだろう」
と思って見ていた。
ところが。
じゅんちゃんも、そのまま寝てしまった。
おい。
結局、誰も起きていない。
僕だけが起きている。
そして朝まで、
コツン。
コツン。
コツン。
はっちゃんの後ろ足が、僕の頭に当たり続けた。
看病してくれるのは、本当にありがたい。
ありがたいのだが、
できれば頭は蹴らないでほしい。
足の痛みより、そっちのほうが気になった一夜だった。
それでも、朝になって目を覚ますと、四人がそばにいる。
手術は怖かった。
足もまだ痛い。
これからしばらくは大変だろう。
でも、家に帰ればみんなが待っていてくれる。
それだけで、まあ何とかなる気がする。

