病院の先生と揉めました...
六月二日、火曜日。
朝から雨が降っている。
台風が近づいているらしく、風も強い。
本日のきゅうちゃんは、当然のように散歩を休んだ。
ソファーの上で寝たふりをしている。
「きゅうちゃん、今日は雨だから休みでいいよ」
そう言うと、少しだけ安心したような顔をした。
昨日、僕は病院へ行っていた。
前日に足の薬指をドア枠の角へ思い切りぶつけ、骨折したのである。
最初は、
「まあ、これくらいなら大丈夫だろう」
と思っていた。
ところが、いつまで経っても痛い。
靴下を脱いで見てみると、指が妙な方向を向いている。
右足と左足を比べてみても、やっぱり曲がっている。
救急外来へ行き、レントゲンを撮ってもらった。
そして先生に、
「完全に折れてますね」
と言われた。
完全に。
そこまで言われるとは思っていなかった。
翌日、整形外科へ行くと、さらに話が大きくなった。
CTまで撮ることになり、先生から、
「手術したほうがいいですね」
と言われた。
僕としては、
「テーピングでもしておけば、そのうち治るでしょう」
くらいに思っていた。
それが手術である。
「先生、足の指なんで、多少曲がっててもいいですよ」
と言ってみた。
先生は、
「いや、まっすぐにしたほうがいいです」
と言う。
僕は曲がっててもいい。
先生はまっすぐにしたい。
ここから、ちょっとした揉め事が始まった。
「先生、手術は勘弁してください」
「いや、まっすぐにしたほうがいいですよ」
「でも、足の指ですよ?」
「いや、まっすぐにしたほうがいいです」
先生はどうしても、僕の足の指をまっすぐにしたいらしい。
僕としては、
「多少曲がってても生活できるでしょう」
という気持ちである。
最終的には先生に押し切られ、手術をすることになった。
しかも松葉杖まで借りることになった。
松葉杖というものを初めて使ったのだが、これが意外と難しい。
普通に歩いたほうが楽なんじゃないかと思うくらい疲れる。
廊下で練習していると、はっちゃんときゅうちゃんがついてくる。
僕が松葉杖で歩く。
その後ろを犬たちが歩く。
まるで、
「おやびん、大丈夫か」

と見守っているようである。
それが妙に嬉しい。
そして昨夜。
僕が寝ていると、犬と猫たちが周りに集まってきた。
じゅんちゃんは枕元。
きゅうちゃんは足元。
はっちゃんは僕の右側。
茶太郎も近くにいる。
どうやら全員で看病してくれているらしい。
ありがたい。
本当にありがたい。
ただ、夜中に問題が起きた。
「コツン」
頭に何かが当たった。
「コツン」
また当たった。
「誰だ」
横を見ると、はっちゃんが仰向けになって寝ている。
そして後ろ足を、
バタバタ。
その足が僕の頭に当たっている。
「はっちゃん、頭こつくのやめてくれ」
言っても本人は完全に寝ている。
仕方がないので、きゅうちゃんに、
「はっちゃんを起こしてくれ」
と頼んだ。
きゅうちゃんも寝た。
役に立たない。
そこで今度は、じゅんちゃんに、
「はっちゃん起こして」
と頼んだ。
すると、じゅんちゃんは本当に起こしに行った。
はっちゃんのほっぺを引っ張って、
ふみふみ。
ふみふみ。
「おお、これで起きるだろう」
と思って見ていたら……
じゅんちゃんも寝た。
結局、朝まで僕の頭は、
コツン。
コツン。
コツン。
と、はっちゃんの後ろ足に蹴られ続けた。
看病してくれるのは本当に嬉しい。
ただ、
できれば頭は蹴らないでほしい。
そんなことを思いながら、今日も松葉杖で病院へ向かう。
足は痛い。
手術も怖い。
でも、家に帰れば犬と猫が待っている。
それだけで、少し頑張れる気がする。
ちなみに今回の骨折については、僕も悪い。
はっちゃんを追いかけて、勝手にドア枠へ突っ込んだのだから。
それでも僕は昨日、こっそりドア枠を叩いて言った。
「お前、もうちょっと引っ込んでろよ」
すると後ろで、はっちゃんとじゅんちゃんと茶太郎がこちらを見ていた。
まるで、
「ドア枠に文句」を
言っているようだった。
……いや。
一番悪いのは僕である。

