犬のお尻から出ていた「謎のヒモ」を引っ張った結果...
五月十五日、金曜日。
昨日までの快晴に続き、今朝も空は雲ひとつない青空だった。
こんな日は散歩日和である。
ところが、きゅうちゃんはというと、ソファーの上で気持ちよさそうに夢の中だった。
「散歩行くぞ」
何度声をかけても、背中を向けたまま知らん顔。
はっちゃんまで「兄貴、起きる時間ですよ」と何度も誘っていたが、それでも起きない。
完全なるストライキである。
仕方がないので、
「今日は休んどき」
と声をかけ、はっちゃんだけを連れて朝の散歩へ出かけることにした。
歩きながら思い出したのは、昨日のはっちゃんの異変だった。
久しぶりに牛肉を少しだけフードへトッピングしてあげたところ、食べ終わるや否や突然様子がおかしくなったのである。
キッチンをクンクン。
廊下をクンクン。
玄関をクンクン。
庭へ飛び出してクンクン。
また家へ戻ってクンクン。
二階まで駆け上がっては床を嗅ぎ回り、自分のベッドを掘ってはクンクン。
家中を二時間近く走り回りながら、ずっと何かを探している。
その異変に真っ先に気づいたのは、じゅんちゃんと茶太郎だった。
「はっちゃん、どうしたんだ?」
と言わんばかりに後ろをついて歩き、落ち着かない様子を心配そうに見守っている。
ところが本人はまったく止まらない。
ついには我慢の限界だったのか、じゅんちゃんが
「いい加減にしなさい!」

とばかりに本気で怒り始めた。
それでも、はっちゃんは走る、嗅ぐ、また走る。
窓から何かの匂いが入ってきたのか。
それとも牛肉に大興奮してしまったのか。
結局最後まで原因は分からなかったが、二時間ほどすると急に落ち着き、
「ご飯まだ?」

という顔で僕の前へやって来た。
「さっき食べたやろ」
どうやら本人は、食べたことまで忘れてしまっていたらしい。
そんな大騒ぎの裏で、もう一つ事件が起きていた。
朝、きゅうちゃんを抱っこして家の中を見回っていると、じゅんちゃんとはっちゃんが妙にきゅうちゃんのお尻ばかり見ている。
「何かあるのかな?」
そう思って確認してみると、お尻から細いヒモのようなものが少しだけ出ていた。
「えっ、何これ」
最初は本当に驚いた。
きゅうちゃんをそっと押さえ、恐る恐る引っ張ってみると、スルスルっと抜けた。
出てきたのは、本当に一本の細い糸だった。

どこかで食べてしまったものが、そのまま出てきたのだろう。
昔、はっちゃんも同じことがあったので、ひとまず胸をなで下ろした。
ヒモが取れた瞬間、きゅうちゃんは何とも言えないスッキリした顔になり、そのまま僕のところへ歩いてきて、
「ありがとう」
と言うように体を預けてきた。
本人もずっと違和感があったのかもしれない。
昨日は本当に大騒ぎの一日だった。
その後、買い物へ行くと、今度は人間のほうが驚かされることになる。
いつも七百円台で買っていた豚肉が、なんと千円近くまで値上がりしていたのだ。
思わず売り場で立ち止まり、
「ここまで上がるか……」
と心の中でつぶやいてしまった。
少し前なら五千円もあれば十分だった買い物も、今では七千円、八千円は当たり前。
野菜こそ少し安くなってきたものの、それ以外は相変わらず値上げ続きである。
昨日は家中を走り回る犬がいて、お尻からヒモが出てくる犬がいて、心配した猫たちまで右往左往。
相変わらず賑やかな我が家だが、こんなドタバタした毎日こそ、何より幸せなのかもしれない。
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