「親なら、子どものことは何でも知っておくべき」というのろい
―「見られている」と感じた子は、やがて何も話さなくなる
この記事はこんな人に向けて書いています: 子どものことを心配して何でも把握しようとしているけれど、それが子どもの目にどう映っているのかが気になる親御さんへ。
『親の「のろい」をとくラジオ』は、不登校や発達障害のお子さんと1,000家族以上向き合ってきたBranch代表の中里と、「雑談の人」として活動するサクちゃんが、「親はこうあるべき」という“べき思考”の呪いを解いていく番組です。
今回のお便りは、小学4年生の一人っ子の男の子を育てる「きなこママ」から。「学校のことも友達のこともゲームのことも、ついつい聞きすぎてしまう」「困っている様子があると全部を把握したくなり、子どもを支配しているような気がする」という、過干渉になってしまう悩みでした。
この記事では視点を変えて、その関わりが「子どもの側からはどう見えているのか」を考えてみます。子どもの内側の景色を知ることが、関わり方を見直すいちばんの手がかりになるからです。
小学4年生は、「自分だけの秘密」を持ちたくなる年ごろ
子どもが何でも話してくれた時期は、ずっと続くわけではありません。中里は、ちょうど今が一つの節目だと言います。
中里:小学4年生ぐらいから、ちょっとずつ「自分だけの秘密」、お母さんやお父さんに知られないで友達だけで共有する秘密みたいなものを、作りたくなる世代なんです。
サクちゃん:うんうん。
中里:思春期に入ってくるタイミングだし、「あんまりお母さんに把握されたくない」っていう自我が、ここから出てくるかもしれない。
サクちゃん:そうかもしれないね。
秘密を持ちたがるのは、反抗でも隠しごとでもなく、健やかな成長のサインです。親に見せない世界が生まれることは、子どもが自分という輪郭を作り始めた証拠でもあります。
サクちゃん自身が「全部隠すようになった」理由
把握したいという気持ちが、子どもにどう伝わるのか。サクちゃんは、自分が子どもだった頃の実感を率直に話します。
サクちゃん:うちの母が、過干渉ではないけど、私の感覚では「全部見られてるな」っていう感覚があって。把握したがるんだよね。「どこにいたの」「誰と遊んでたの」って、すごく把握したがる感じがあって。
中里:うんうん。
サクちゃん:私、それこそ小学4年生ぐらいから、言わなくなったんだよね。知りたがってるのを知ってて、隠すようになって。それがどんどん強くなって、大事なことをあんまり親に言わなくなった。
中里:うん。
サクちゃん:「知られたくない」「見ないで、こっち見ないで」みたいな感じになってたから、あれはあんまり良くなかったんだろうなと。心配が裏目に出る、ってやつだよね。
中里:お子さん側の受け止め方として、「支配されようとしてる」「知られたくないのに入ってこようとしてる」と感じると、ネガティブに働いちゃう。でも逆に、声をかけてくれたり心配してくれることで「安心だ」と子どもが感じてるなら、まだいいわけですよね。
知りたいという親の気持ちは、子どもには驚くほど伝わっています。そして「知られたくない」と感じた瞬間から、子どもは口を閉じ始める。よかれと思った関心が、いちばん知りたいことを遠ざけてしまう——これが過干渉の切ない逆説です。
同じ関わりでも、子どもによって受け取り方は違う
ただし、すべての子が「見られたくない」わけではありません。ここはタイプによって大きく分かれる、と二人は言います。
サクちゃん:子どもによるんじゃない? 聞いてないけど「今日何してこれして」って全部言いたい子もいるじゃん。そしたら、それは全然止めなくていいもんね。
中里:そうだね。中学校ぐらいまで、あれこれ喋ってくれる子は喋ってくれるもんね。
サクちゃん:そうそう、結構タイプによりそう。「親はこうすればいい」っていうよりは、子どもの様子を見て、っていう感じなんだろうね。
中里:「言わせちゃってるな」と感じたら聞かない、みたいな、ちょっとした微調整が必要なのかもね。
大事なのは、決まった正解を当てはめることではなく、目の前の子が今どう感じているかを見ること。話したい子の話はいくらでも聞けばいいし、閉じたそうなら少し引く。子どもの反応こそが、いちばん正確な“距離計”です。
「遠くで見ていてほしい」――子どもが本当に望む距離
では、口数が減っていく子は、親をもう必要としていないのでしょうか。サクちゃんが娘さんから聞いた言葉が、その答えのヒントになります。
サクちゃん:娘がまだ4歳か5歳の頃、社員旅行にみんなで行った時に、私のところに全然いないで、ずっと他の大人と遊んでて。夜寝る時だけ来る、みたいな感じだったの。それで「全然来ないね」って言ったら、「あちゃんね、遠くで見ててほしいんだよね」って。
中里:へえ。
サクちゃん:見ててはほしいけど、ずっと一緒にいるのとは違う。「遠くで見ててほしい」って。
中里:その距離感を、言語化してくれたんだ。
サクちゃん:そうそう。一緒にいて存在は感じたいけど、近くでずっと喋ったり遊んだりしたいわけじゃない。その気持ちを、当時の彼女が教えてくれて。
中里:子どものリアルな意見だね。
子どもは、親を切り離したいわけではありません。「近くで干渉してほしい」のではなく「遠くで見守っていてほしい」。存在は感じていたいけれど、踏み込まれたくはない。この絶妙な距離こそ、過干渉に悩む親が思い出したい感覚です。
のろいを解く鍵:子どもの世界が広がるのは、寂しいけれど「いいこと」
「親なら子どものことは何でも知っておくべき」というのろいは、子どもの成長とともに必ず壁にぶつかります。年齢が上がるほど、親の知らない世界は広がっていく。それは手放しに喜びづらく、時に寂しいものです。
けれどサクちゃんは、娘の世界が広がっていくことを「嬉しかった」と振り返ります。「私の知らないところで、そんなことして、そんな風に思ってるんだ」と分かるたびに、子どもが大人になっていく実感があったからです。子どもから見れば、知らない世界を持てることは、自由で誇らしいこと。それを取り上げないでいてくれる親は、いちばん安心できる存在です。
子どもが何でも話さなくなったとしても、それはあなたが嫌われたからではありません。世界が広がっている証拠です。すべてを知ろうとする手を少しゆるめ、「遠くで見ているよ」という距離に立つこと。それが、子どもの目に映るあなたを“監視”から“味方”へと変えていきます。
この記事の元となった音声(ノーカット版)は、以下からお聴きいただけます。
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