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星屑のティアラ【3つのお題に空想のひらめきを】

 星屑のティアラは、引き出しのいちばん奥にしまわれていた。黒い布に包まれて、触れると微かに冷たい。子どもの頃、母が「月の光を集めてできているのよ」と言って、私の頭にそっと載せてくれたものだ。信じていたわけじゃない。ただ、その言い方が好きだった。

 夜更け、私はそれを取り出して、台所の明かりの下に置いた。窓の外では、紅の羽を持つ時鳥が鳴いている。春でも夏でもないのに、季節を間違えたみたいな声だった。鳴くたびに、時間が一歩戻る気がする。戻ったところで、何も変わらないのに。

 火にかけたやかんが小さく鳴る。私は棚から、こぼれ月の魔法瓶を出した。蓋に小さな欠けがあって、そこから白い塗装が剥げている。月がこぼれた跡だと、勝手に思っている。中身はただのお湯だ。それでも注ぐとき、私は必ず願いを一つだけ考える。叶わなくていい願いを。

 湯気が立ち上り、星屑のティアラに触れて、すぐ消えた。時鳥の声が一段高くなる。紅の羽が闇を切るところを、私は想像する。あの鳥は、どこにも留まらない。留まれないのかもしれない。私も同じだ。ここに立っているのに、心だけが遅れてくる。

 カップを持って窓辺に近づく。夜は深く、月は薄い。魔法瓶の中で、こぼれた月がまだ温かい気がした。飲み干しても、何も起きない。ただ、喉を通る温度だけが確かだ。

 星屑のティアラを引き出しに戻す。時鳥の声が遠ざかる。私は灯りを落とし、椅子に腰を下ろした。今日も何も変わらなかった。でも、月はこぼれ、鳥は鳴いた。それで十分だと思える夜が、たまにある。


こちらの企画に参加させて頂きます。よろしくお願いします。

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