あの日の約束【3つのお題に空想のひらめきを】
机の抽斗には、小学生の頃よく一緒に遊んで仲の良かった夏希ちゃんとの手紙が、今でも残っている。私が小学五年生のときに転校して以来、もう同じ学校に通うことはなくなった。手紙を一枚一枚読み返していると、当時のことが次第に思い出されてくる。懐かしい気持ちや、少しだけ悲しい気持ち。新しい学校に通いたくない、とも書いていた。
そんな私に、夏希ちゃんはいつも手紙を送ってくれた。返事を出す前に、先に次の手紙が届くこともあった。
『私も、亜希ちゃんが転校してからは学校に行きたくなくなったよ。でもね、ひとかけらの勇気を出して通ってるの。それでなんとか授業についていってるから。それにね、将来は絶対に、亜希ちゃんと同じ学校に進学したいんだ。約束、だよ。』
手紙のやり取りは中学生の頃に終わったが、その後はEメールに変わり、今ではLINEでリアルタイムにやり取りできるようになった。初めて夏希ちゃんにメールを送ったときのことは、今でもデータとして残っている。
『夏希ちゃん、元気?私は風邪をひいちゃった。Eメールって便利だよね。きっとお星様がお手紙を運んでくれるのかな』
『亜希ちゃんだ!お手紙からメールになって、なんだか時代の変化を感じるよね。お星様がお手紙を運んでくれるって、素敵な言い方だね』
高校時代に進路に悩んでいたときも、LINEで相談することができた。距離は離れていても、とても身近に感じられた。
『夏希ちゃん、まだ進路が決まってないんだ。なんだか階段の途中というか、宙ぶらりんというか。』
『私は、亜希ちゃんと将来同じ学校に進学するって約束して、それを信じて勉強してるんだ。でも、私も何がやりたいのかはよくわからない。その気持ちだけで突っ走ってきたから……。』
スマートフォンが普及したおかげで、お互いに進路の資料を送り合ったり、ビデオ通話で顔を見ながら話したりできるようになった。文明の利器に、心から感謝した。そして、二人で志望校を決めた。学部は違ったけれど、同じ大学に合格することができた。
私は抽斗から手紙を取り出し、それらをお菓子の空き缶に詰めて引っ越しの荷物に入れた。
引っ越し先の学生向けアパートの前で、私は夏希ちゃんと再会した。涙があふれた。お互い、夢が叶ったのだと実感した。
まだ片付けの終わっていない部屋に夏希ちゃんを招き入れ、手紙の入った缶を見せた。
「本当に懐かしいね!」
「だよね!これ、小学生のころからだもん」
「当時から『同じ学校に進みたい』って書いてあったんだね。本当に、お互いにうれしいね」
「なんだかさ、この手紙、願い星が運んできてくれたみたいだよね」
「亜希ちゃんって、そういう言い方、昔のままだね」
荷物がそこかしこに散らばっていたけれど、今の二人にとっては、それもまるで夜空に瞬く星のようだった。
#3つのお題に空想のひらめきを
片桐みかん様のお題に参加させて頂きました。素敵な企画ありがとうございます!よろしくお願いします。
