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資格は増えている?減っている?7士業の人数推移をデータで見る

近年、「リスキリング」という言葉を耳にする機会が増えました。
AIやDX、働き方の変化を背景に、「この先も使えるスキルとは何か」「学び直すなら何を選ぶべきか」を考える人が増えているように感じます。

その中で、国家資格の士業という分野については、多少なりとも私自身が継続的にウォッチしてきた領域でもあります。
今回はまず、士業の世界において各資格の人数がどのように増減してきたのかを、シンプルに比較していきます。

細かいところまで読まなくても、グラフを眺めるだけで「なんとなくの力関係」や「伸び方の違い」は伝わるはずです。
リスキリングや資格取得を考える際の、判断材料の一つとしてでも、何かの参考になれば幸いです。


なぜ「この7士業」を選んだのか


世の中には"士業"と呼ばれる資格が山ほどありますが、今回あえて対象を絞りました。
理由は下記2つです。
①独占業務(業務独占資格)を持ち
かつ
職務上請求という強い権限に関わる領域に位置する資格という観点で選びました。

「職務上請求」というと一般の方には聞き馴染みがないかとは思いますが、乱暴な伝え方をすると、「他人の戸籍や住民票を取得する権限が与えられている国家資格」というイメージです。もちろん、それぞれの資格でかなり厳密な縛りはあるのですが、イメージのために乱暴な伝え方をしているという点はご理解くださいませ。
その観点では、海事代理士も同じ枠組みに入るのですが、海事代理士については試験難易度の肌感もなく、知り合いもおらず、仕事の実像が掴めていないため、今回は割愛しました。

その結果として扱うのが次の7つです。

  • 弁護士

  • 司法書士

  • 行政書士

  • 社会保険労務士

  • 土地家屋調査士

  • 税理士

  • 弁理士


まず「人数の多さ」で見る:税理士が最大規模


2024年年末時点の数字比較

棒グラフ(直近年の人数)を見ると、最も規模が大きいのは税理士です。
いわゆる「士業」の中でも、人数が圧倒的です。

ここで補足しておきたいのが、「試験で合格している」=「資格登録者数の人数ではない」ということです。

税理士は、税理士試験に合格する以外にも、
公認会計士が登録によって税理士登録するという制度が存在します。
独立開業しているいわゆる会計士事務所は、この公認会計士が税理士登録をしているというのが多いなという印象です。

一方で、制度上は可能であるものの、弁護士も税理士登録できるわけですが、税理士登録をしているというのは、少なくとも私の周囲ではほとんど見かけません。

また、同じ「登録者数」という数字では、行政書士 の方が圧倒的に他士業からの登録だけという人が多いと言えます。
こちらも、弁護士、公認会計士、税理士の方々は登録さえすれば行政書士に登録することができます。
税理士の方で「行政書士にも登録しておく」という方は比較的多く見受けられます。
理由としては、冒頭の独占業務、職務上請求などのつながりがあるためと言えるでしょう。


士業の人数の「推移」

続いて、2000年から2024年までの推移(折れ線)を見ます。

士業の登録者数の推移

※データについて:2000年代は年次の点が比較的多い一方、2010年代以降は代表年の点をつないでおり、一部は線形補間で折れ線化しています。したがって、ここで扱うのは「細かい年差」ではなく「中長期の傾向」です。

弁護士:政策ショック型の増加

弁護士は、人数推移のカーブが他士業と比べて明らかに「別物」です。
この増加は、景気や自然な需要増によるものというより、新司法試験の導入を軸とした制度変更の影響が直接反映された結果だと見るのが妥当です。

言語しの急増

新司法試験は2006年(平成18年)に始まり、当時の政府は「年間3,000人程度の法曹を輩出する」ことを目標としていました。
その結果、2000年代後半から2010年代前半にかけて、弁護士数は急激に増加することになります。

ただし、その後は法科大学院の統廃合や合格者数の調整が進み、現在では年間の合格者数はおおむね1,500人前後に落ち着いています。
弁護士数自体は増え続けているものの、当初想定されていたほどのペースではなくなっている、というのが現在の状況です。

司法書士:制度×マーケットの“バブル型”

司法書士の登録者数を見るうえでキーポイントとなるのが、2003年(平成15年)の司法書士法改正です。

この改正により、一定の研修と認定を受けた司法書士(認定司法書士)に、*簡易裁判所における訴訟代理権(請求額140万円以下)が付与されました。
これによって、司法書士という名前がより広がったというわけです。

その後、2000年代後半には過払い金返還請求(いわゆる完済訴訟)が社会問題化し、簡裁代理権と市場ニーズが噛み合ったことで、司法書士業務の収益性が一時的に大きく高まりました。

ただし、この過払い金分野は、消滅時効の進行や対象案件の一巡により、現在では落ち着いた局面に入っています。

その一方で、近年は相続登記の義務化(2024年施行)を背景に、相続・不動産分野における司法書士の関与の必要性が、改めて高まっています。


「指数(2000年=100)」で読む:伸び率の勝負に切り替える

人数の実数では見えにくかった違いも、指数(2000年=100)に置き換えることで、各士業の「伸び方の性格」がよりはっきりと見えてきます。


2000年の人数を100として、そこから何%増えたかだけを見る

こうすると、「人数が多いかどうか」ではなく、“伸び方”の比較ができます。

弁理士:人数は小さいのに、伸び率が目立つ

弁理士は、実数ベースでは税理士などに比べて人数が少なく、単純な人数比較だけだとグラフ上でも目立ちにくくなってしまいます。
しかし、指数で見ると、伸び率は7士業の中では大きい部類に入ります。

指数にすると「どの資格が相対的に拡大してきたか」が分かりやすくなる好例だと言えそうです。

社会保険労務士:派手さはないが、安定した上昇

社労士は、指数で見ても急激な上昇は見られません。
その一方で、長期にわたって着実に指数が上昇し続けているのが特徴です。

短期間で跳ねる資格ではありませんが、
指数のカーブを見る限り、大きく落ち込む局面がほとんどないことが分かります。

指数という「伸び率の物差し」で見たとき、
社労士は、派手さよりも安定性が際立つ資格として位置づけられます。

土地家屋調査士:指数でも下向きが確認できる

土地家屋調査士は、実数の推移でも減少傾向が見え、指数で見ても、長期的に下向きの圧力が続いていることが確認できます。

一時的な増減ではなく、基準年(2000年)から見て相対的に縮小している点が、指数ではより明確になっています。

指数グラフからは、土地家屋調査士が他士業とは異なる方向の力学の中に置かれている資格であることが、視覚的にも読み取れます。
個人的にはもっともAIで代替するのが困難であるところがある資格であると感じているのですがね。。。


まとめ:まずは「人数」という事実から全体像を見る

今回は、リスキリングや資格取得を考える際の前提情報として、
7士業の「登録者数」という数字だけに注目して整理してきました。

試験の難易度や合格率、実務の中身といった話題はひとまず横に置き、
まずは、

  • どの資格が、どれくらいの人数規模なのか

  • その人数が、長期で見て増えているのか、落ち着いているのか、減っているのか

という、極めてシンプルな事実を確認することを目的としています。

その際、

  • 実数(市場規模)

  • 推移(増え方・減り方の癖)

  • 指数(2000年=100で見た伸び率)

という3つの見方を並べることで、
同じ「登録者数」という数字でも、資格ごとに意味合いが大きく異なることが見えてきました。

人数が多いからといって安定しているとは限らず、
人数が少なくても、相対的には大きく拡大してきた資格もあります。
また、同じ増加でも、政策主導なのか、市場ニーズなのか、社会構造なのかによって、
その「増え方の質」はまったく違う、という点もグラフから読み取れるように思います。

今回はあくまで人数という入口だけを扱いましたが、

  • 試験の難易度

  • 合格率の推移

  • 資格取得にかかる時間やコスト

といった要素も含めて、
「リスキリングとして資格をどう捉えるべきか」を、もう少し立体的に整理していく予定です。


追伸(注釈)

本記事で使用しているグラフは、各士業団体が公表している統計に基づく代表的な年次データを用いて作成しています。
2000年代は年次データが比較的揃っている一方、2010年代以降は代表年の数値をつないでおり、一部は線形補間を用いて折れ線化しています。

そのため、ここで示しているのは厳密な年ごとの差分ではなく、
中長期的な傾向を把握するための可視化である点をご理解ください。
正確な数値や個別年度の動きについては、各団体の公式統計をご参照いただくのが確実です。

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