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昨日フラれたはずなのに、なぜかマドンナとの距離が縮まっているんですが


「おはよう」

聞き慣れない声に振り返ると、そこには村山さんが立っていた。

誰にでも優しくて、笑顔が眩しい学校のマドンナ。

昨日、そんな彼女に告白して、きっぱり振られた相手が俺だ。

「……お、おはよう」

「あれ? 元気ない?」

「いや、そりゃまあ……昨日の今日ですし」

「あっ……」

村山さんは気まずそうに目を逸らした。

「ご、ごめん」

「謝らないでください。断るのは村山さんの自由ですから」

「そうだけど……」

言葉を濁したまま、彼女は俺の隣を歩き始めた。

……なんで?

教室まで一緒に歩き、教室に着くと、じゃあね。と笑って自分の席へ戻っていく。

その日一日、休み時間のたびに。

「ねえ、次の授業って課題あった?」

「そのシャーペン可愛いね」

「お昼もう食べた?」

と、何度も話しかけてくる。

いやいや。

昨日振った相手にこんな距離感ある?

周りの視線も痛い。

「なんで村山さん、あいつと話してるの?」

なんて声まで聞こえてくる。

俺だって聞きたいよ。

次の日も。

そのまた次の日も。

「おはよう」

「また来たんですか」

「別にいーじゃん」

くすくす笑いながら隣に立つ村山さん。

昼休みも。

放課後も。

気づけば毎日、常に話している。

友達からも。「お前ら付き合った?」と言われる始末。

……いや、振られたんだよ。

そして一週間ほど経った昼休み。

人気の少ない中庭のベンチで、村山さんがジュースを飲みながらぽつりと言った。

「ねえ」

「ん?」

「昨日さ」

「○○くんが他の女子と話してるの見ちゃって」

「え?」

「なんかモヤモヤした」

「……は?」

思わず変な声が出た。

「なんでですか」

「分かんない」

「いや、分かんないじゃ困りますよ」

「私も困ってるの」

頬を膨らませる村山さん。

可愛い。

いや、可愛いけど。

「だって俺、振られてますよ?」

「うん」

「なのに嫉妬?」

「……多分」

情報量が多すぎる。

俺の頭が処理落ちしていると、村山さんは膝の上で指をもじもじさせながら、小さく笑った。

「実はね、断っちゃったけどそれから○○くんの事が気になってきたの」

「えぇ……」

「嬉しいですけど……」

驚き過ぎて、心の中の本音がそのまま口から漏れてしまった。

「そんなことあります?」

「あるみたい」

「告白された時はね、恋愛対象として見たことがなかったから断ったの。でも断ってから、○○くんを目で追うようになって」

「他の子と話してると気になるし、楽しそうに笑ってると私も嬉しいし」

そこまで言って、村山さんは照れくさそうに俯いた。

「これ、好きってことなのかなって」

「それ、俺に言います?」

「本人にしか確認できないじゃん」

「確認って」

「だから私、今から頑張るから」

「頑張る?」

「うん。だから仲良くして」

「それはもちろん」

「あと」

村山さんは人差し指を立てる。

「村山さんって呼ぶの禁止」

「え?」

「美羽ちゃんって呼んで」

「……無理ですよ」

「えーなんで?」

「恥ずかしいです」

「私が呼んでほしいんだから」

「いやでも」

「ほら」

期待に満ちた目で見つめられる。

そんな顔をされたら断れるわけがない。

「……み、美羽ちゃん」

「うん!」

ぱあっと花が咲くように笑う。その笑顔は、学校中のみんなが憧れるマドンナの笑顔ではなく、一人の女の子の可愛い笑顔だった。

「ねーねー、もう一回呼んでみてよ」

「調子に乗らないでください」

「えへへ」

照れながら笑う村山さんを見ていると、不思議と昨日振られたことなんてどうでもよくなっていた。






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